TOWA TEI

TOWA TEI

【TOWA TEI インタビュー】
“まだ聴いたことがない
音を聴きたい”という
欲が非常に強い

難解なものよりも
ポップなものが好き

あと、『TOUCH』のラスト「CREPSUCULE」に《マルガリータください》という台詞が入っていますよね。これは誉め言葉として受け取っていただきたいのですが、ああいうのを入れる感覚が本当に分からないです(笑)。まったく予想もできない感じで、びっくりです。

その瞬間の自分の気持ちというか、“マルガリータ飲みたいな”ってだけです(笑)。制作作業を始めたのが夕方で、マルガリータを飲みたいと思ったからコンピューターで“マルガリータください”って女の人の声で作って。そしたら、“この人はイタリア人かな? あんまり英語は得意じゃない。じゃあ、“マルガリータ?”って訊き返す人も入れよう”と。で、それもコンピューターで作って(笑)。だから、バーチャルですよね。“ネカマ”です(笑)。

本当に思うがままに展開させていったんですね。

そうなんです。ただ、それをどうまとめるかが大事で。コロムビアさんにも悪いんで、やっぱり社会性を持たなきゃいけないと思うんです(笑)。

おっしゃられたとおり、思うままに音楽を作っていても、決してそれが誰にも分からないマニアックなものにはなっていなんですよね。そのことについて私はこんなふうに考えました。ミニマルミュージックであっても、その短いメロディーが非常に大衆的だからかなと。『TOUCH』では「EAR CANDY」で原田郁子さん、「RADIO (DJ)」で高橋幸宏さんがヴォーカルを取っていますが、いずれもとてもいいメロディーです。そもそもテイさんに大衆感が備わっているのではないかと思います。

なるほど。もともと根暗だし、アンダーグラウンドのものとかも好き…というよりは、それしかできないと思っていて。アンダーグラウンドには誰でもなれるわけで(笑)、もはやプラットフォームも揃ってるし、誰でもこっそりやることができる。…だから、長く続けていることと関係あるのかもしれないですね。僕、もともとポップアートとか好きだし、難解なものよりもポップなものが好きっていうのがまずあって。で、自分が作業していても自分にとってキャッチーじゃないものは流れていっちゃうっていうか、仕上げられない。あと、すごい飽きっぽいっていうのも大事で、飽きっぽいから飽きっぽい自分が繰り返して“今日もこの曲を作ろう”と思える曲しか続かないんですよね。そこは根暗で、根が真面目だからかな? 自分で言うのも何だけど(笑)。

前回の取材でテイさんは“自分にとってキャッチーなものって、自分の気分が良い時じゃないと出てこない。なので、自分の気分が良くなるように、温泉に浸かったり、水風呂は入ったり、そういうことを日々やっている”とおっしゃっていました。『TOUCH』と『ZOUNDTRACKS』にキャッチーでポップなメロディーがあるのは、この3年間、テイさん自身が充実した日々を送られてきた結果でもあるのかなと。

そうですね。『SUPER CROOKS(SOUNDTRACK FROM THE NETFLIX SERIES)』(2021年11月発表のサウンドトラック)もやっていて、3年間で自分のアルバムを3枚も作ったことは過去にないんで、本当に自分の時間が楽しかったし、充実していたと言えますよね。サウナくらいは行っていたんですけど、人混みに行かないようにしていて、やっぱり人恋しいところもあったし。そこは今年に入ってから戻ってきていますけどね。でも、人生は変化なので、いろいろと変わっていくことが面白いのかもしれないし。最近作っている曲が、またちょっと『TOUCH』とは違う感じのタッチになってきていて、それも面白いと思いますね。

充実した楽曲作りというのは音源を聴いてめちゃめちゃ伝わってくるところですが、そもそも今回の楽曲はタイトルからして多幸感があると思うんです。明らかに不穏なタイトルは『ZOUNDTRACKS』の「2BAD」くらいじゃないですかね。

あははは。「2BAD」はね、本当にありがちな悪人を書いてやろうと。それこそ政治家と教祖でもいいと思ったんですけど(笑)。

振りきった感じですかね。

そうです。そういうドラマとか多いでしょ? 政治家の汚職とかカルト教とか麻薬犯罪王とかのドラマって多いじゃないですか。だから、Netflixとかで鳴ってるような曲を作ろうと思ったんですよ(笑)。で、いざ作ってみたら“あっ、全然作れるわ”と。

「2BAD」はサウンドも不穏な感じですけど、それ以外は「TIPSY」とか「TOURIST RESORT」とかタイトルからして楽しげですから。

そうですね。本当に音効さんにはいつもお世話になっていて、僕の楽曲をいろんなところで使ってくれているんで、今回はちょっとハードルを上げて“こんなの使えるかよ!?”っていうものを作ったんです(笑)。まぁ、でもスキルの高い人に使ってほしいとは思います。迂闊にカフェとかでかけてほしくないですね。曲が突然切れたりしますし、急に「2BAD」が入ってきますから、かけたら気まずい感じになりそうだし。そういう意味では変なアルバムですよ(笑)。

取材:帆苅智之

アルバム『TOUCH』2023年9月6日発売 BETTER DAYS/日本コロムビア
    • 【CD】
    • COCB-54360
    • ¥3,520(税込)  
    • 【LP】
    • COJA-9480
    • ¥4,400(税込)
アルバム『ZOUNDTRACKS』2023年9月6日発売 MACHBEAT
    • MBCD-2311
    • ¥3,520(税込)
TOWA TEI プロフィール

テイ・トウワ:1990年に Deee-Lite のメンバーとして、アルバム『World Clique』で全米デビュー。現在、10枚のソロアルバム、3枚の Sweet Robots Against the Machine 名義、METAFIVE のファースト・アルバム等がある。その他に、2013年9月から現在に到るまで、東京・青山にある INTERSECT BY LEXUS -TOKYO の店内音楽監修。NHK ドキュメンタリー番組「草間彌生 わが永遠の魂」の音楽を担当。18年、YMO結成40周年アルバム「ノイエ・タンツ」企画監修デザインなど。19年、細野晴臣氏50周年記念ドキュメンタリー映画『NO SMOKING』及び21年『SAYONARA AMERICA』のキービジュアルを五木田智央氏と担当。高橋幸宏氏ベストアルバム『GRAND ESPOIR』のアートディレクションも共に担当した。Netflix制作アニメ「Super Crooks」劇伴を担当し、このアニメのサウンド・トラック盤『SUPER CROOKS (SOUND TRACK FROM THE NETFLIX SERIES)』が21年11月にリリース。21年は10枚目の『LP』海外リリースに続き『EP』で締め括る。22年はtofubeatsリミックス集『REFLECTION REMIXES』にてアルバムリードトラック「REFLECTION (feat. 中村佳穂) [TOWA TEI REMIX]」を担当。23年9月には初の全編インストソロアルバム『ZOUNDTRACKS』と前作『LP』続編の『TOUCH』を2枚同時発売。TOWA TEI オフィシャルHP

「EAR CANDY」MV

OKMusic編集部

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