「微笑ましい下ネタでありたい」好き
好きロンちゃんを徹底解剖、アイドル
デビューの経緯と1stフルアルバムに
込めた想いを語るロングインタビュー

2020年11月11日 (麺の日)、突然のアイドルデビュー宣言から局所で話題を呼んだ、RONZI(BRAHMANOAU)扮する・好き好きロンちゃん(設定ではあくまでも別人)。デビューから1年立たずしてTBS系『マツコの知らない世界』で大好きなラーメンについて語ったり、ミニアルバム『好き好きロンちゃん』でCDデビューを果たして、さらに世間からの注目を集めてきた。とはいえ、名前をネットで検索すると、今もなお後続する検索ワードは「正体」「なぜ」。ヒゲとロン毛のフリフリ衣装という強烈なルックスと、下ネタ満載の中毒性の高い音楽にまだまだ理解が追いついていない人も多いはず……。そこで今回SPICEでは、好き好きロンちゃんを徹底解剖すべく、デビューのキッカケまで振り返りながら、7月26日(水)にリリースされたばかりの1stフルアルバム『ロンちゃんのなつやすみ』についてロングインタビューを実施。好き好きロンちゃんはなぜアイドルとなり、今、なにを想っているのだろうか。そしてニューアルバムで感じることができる、進化した歌詞(下ネタ)とクセになるポップなメロディーの真髄に迫る。
アイドルデビューのキッカケと音楽的ルーツについて
ーーSPICEでは単独インタビュー初登場ということで、好き好きロンちゃん誕生のキッカケから教えてもらってもいいですか?
コロナ禍でバンドが全然動けなくなったじゃない? それで僕は暇になったけど、周りにいた弾き語りができる人たちはけっこう動けてたのよ。それを見て「ずりぃ~。僕もやりたいな~」と思ったのがキッカケで、そこからですね。
ーーそこからなんでこうなるんですか。
ねぇ~!
ーーあはは!
でも、「好き好きロンちゃん」という楽曲自体は元々あって、それを人前でやる機会もあったんだよね。だから、弾き語りを始めようとするとやっぱりその延長線上になるんだろうなと。で、BRAHMANのディレクターとかにいろいろ相談してるうちに、なんかこうなった。アーティスト名を決めてくれたのも、そのディレクターさんだしね。「よし、じゃあ、お前は今日から好き好きロンちゃんだー!」と言われて、「え、ええ~っ!」って。
ーーおもろい。
でも、たしかに方向性が決まってると色々やりやすいんだよね。アーティスト名を決められたことによって、曲の内容の方向付けもちょっとできるじゃないですか。それがあったから今に至ってると思うんだよ。
ーーじゃあ、アーティスト名が決まったことをキッカケに衣装の方向性も決まったんですか。
いや、衣装は全然前からあったの。これはもう、7、8年前からある。元々、局所で演奏する機会はあったから。そういうことで衣装はすでにあるから「これでいくぞ!」みたいな感じで、そこからは和気あいあいとキャラ設定を始めてね、「わっはっは!」とか言いながら年とか出身地を決めて。で、今度は曲を増やしていかなきゃいけないということで今の方向性が固まっていったんだよね。
ーーなんで下ネタになったんですか。
そもそも「好き好きロンちゃん」が下ネタじゃない? でも、最初に弾き語りをやってたときは下ネタの曲もあったしそうじゃない曲もあったの。そうしたらある日、TOSHI-LOWがそれを見て言うわけ。「お前、なんか普通の曲歌ってるけど、みんなが求めてるのそこじゃねえからな」と。
ーーうんうん(笑)。
そこで「だよな!」と思って。別にさ、僕は声がいいわけでもないし、歌が上手に歌えるわけでもないから、じゃあどうやって勝負していこうか考えた末に、「下ネタで勝負しよう!」と思ったの。
ーーでも、下ネタの歌って実はハードル高くないですか?
まあさ、ほら、 局所でやってけばいいと思ってたから……あ、局所ってそういう意味じゃないよ?
ーー言われなくてもわかります(笑)。
そうじゃなくて、限られた場所でやっていけたらいいからさ、内輪ノリみたいな感じで。
ーーじゃあ、新曲づくりも特に気負った感じで始めたわけじゃないんですね。
あ、全然気負ってないよ。気負ってないし、なんか出てきちゃうし。方向性が決まってると出てくるよね。
ーー歌詞もひねり出して書くというよりも、溢れてくるものをそのまま書き留めていくっていう。
そうそうそう、全然ひねり出してないもん。自然とね、できちゃう。
ーーそれでも、さっきも言いましたけど、面白い下ネタの曲をつくるのは相当難しいと思います。
いや、そんなことないよ。下ネタで面白いのは簡単。でも、下ネタじゃなくて面白い曲をつくるのは本当に難しいと思う。僕はそういう曲はつくれないもん。四星球とか花団とかSHIMAとか、そういう人たちはみんなそんなに下ネタはやってないんですよ。そういう人たちのことはすごく尊敬してる。
ーーロンちゃんのコミックソング的な側面でのルーツって何かありますか。
なんだろう……つボイノリオは聴いていたり、堺すすむとか牧伸二も聴いてたし、あとは嘉門達夫も。ドリフも観てたしね。あと、最近でいうとどぶろっくとかだよね。
ーーでも、それを熱心に聴いてたっていうわけでもないですよね。
うん、いっぱい聴きいてたわけではないかな。コミックソングってネタだから、一回聴いて終わりになることも多いよね。それはなんでかというと、ネタの面白さに比べると楽曲はそこまで秀逸じゃなかったりするから。だから僕は、自分の中ではなるべく秀逸な曲に下ネタを乗せようとしてはいるんだけどね。ま、目標ですけどね。まだまだ拙いから。
ーーあ、本当ですか? でも、先日の『ACO CHiLL CAMP 2023』でのライブは親子連れがたくさん観に来てたし、「こんな人たちがロンちゃんを見て大丈夫なんだろうか」と不安に思ってたら、ライブ中に立ち去ったのは1組しかいなかったですよ。
あ、本当に? でも、やっぱり立ち去る人はいるわけで、それは当たり前だと思うのね。同じものでもいろんな捉え方や聴き方があるように、家族といってもいろんな家族がいるからね。たとえば、テレビを観ててエッチなシーンが流れたときに普通に見続けられたり笑える家族もあれば、無言になったり消しちゃう家族もあるじゃない? だから、大事なのは押し付けちゃいけないなっていうことで。
ーーうんうん。
だからライブの最初に確認するのよ。「大丈夫ですか?」って。で、「大丈夫ですか?」と聞かれてもお客さんとしてはまだわかんないから、「何曲かやってみるから様子を見てください。嫌だったらすぐ避難してください!」つって。一応、そういうことは言うよね。無理やり聴かせるのはハラスメントになっちゃうんで。そういうところはちゃんと事前に確認して、「途中でいなくなっても全然大丈夫なんで」と伝える。いなくなるのはもちろん寂しいけど、もし僕が子供のときに親と一緒に聴いてる曲にちょっと恥ずかしいなと思うようなワードがいっぱい入ってたら戸惑っちゃうしね。だからそこは思いやりをもって見てはいるんです。
ーー思いやり(笑)。活動が続くに連れて曲が増えて、ライブの本数もけっこう多くなってますよね。そんな中で気づくことってありますか。たとえば、意外と子供が喜ぶとか。
あー、それは意外ではなくて、どっちかと言うと子供が喜ぶレベルの下ネタなんですよ。あんまり大人の感じじゃない。下ネタといっても「うんち」とか「ちんちん」とか色々あるんだけど、グロくなりすぎないようには気を付けてて。だから子供が聴いても喜べるんじゃないかな。その子と一緒にいる親は「やめなさい!」と言うかもしれないけど。
ーーその点でいうと、前回のミニアルバムと今作を比べると歌詞の雰囲気がけっこう違うと思ってて。今作はエグみが削られていて、小学生にも比較的理解できるような言葉がチョイスされてると思いました。
<インポ>までいっちゃうと子供は意味わかんないと思うけど、それは大人がクスクスしてればいいかな、とか。でも本当にそうだよね、子供が「わはは!」って笑えるような内容ではあるはず。
ーーそう、ロンちゃんは子供の前で演奏する機会がけっこうあるから、そういうことも曲づくりに影響を与えてるのかなって思ったんです。
子供を意識してるわけではないんだけど、微笑ましい下ネタでありたいなとは思っているかな。そこを気にしたことで結果的に子供にも聴きやすいものになったのかもしれないですね。
ただ笑わせるだけじゃなくて、そこに意味を持たせたい
ーー最初は内輪だけで盛り上がっていたロンちゃんは、徐々に外の世界へ出て行きましたよね。笑い飯と対バンしたり『マツコの知らない世界』に出たり。今や、「ロンちゃんってBRAHMANの人なんだ!」と驚かれるパターンもあるんじゃないですか?
そうそう、けっこうある。中には「え、なんでそんなことやってるの!?」なんて言われることもあるけど。
ーーそれはそうですよね。
バンドの人に怒られたりとかもする。「あんた、BRAHMANだよ!?」と怒られて、「ごめんなさい……」って(笑)。まあ、人それぞれにイメージがあるからね。でも、「BRAHMANを見てすごくカッコいいと思ってたのになんか嫌だな」と思う人には申し訳ないけど、僕はこんな人なんでね、「ほんとごめんなさい」って平謝りですよ。
ーー当のBRAHMANは怒ってないわけですもんね。
そう、みんなね、本当によくしてくれる。今回のレコーディングもすごく手伝ってもらったし。MAKOTO(BRAHMAN/OAU)なんて全曲ベース弾いてくれてるからね。前回もそうだったんだけど、今回の制作も時間がなくて。まあ、そもそも予算なんてそんなあるわけないじゃん? ドラム全曲録るのに1日もかかってないからね。それに加えてアコギも6曲録って、ボーカルも4曲撮ったからね、初日に。
ーーえ、初日に!?
そう。さすがにベースは2日かけたんだけど、MAKOTOはすごく忙しい時期だったから半分泣きそうになりながらやってくれて。でも、アレンジもすごくちゃんとしてくれてね。「最悪、全部ルート弾きだけでいいからね!」って言ってたんだけど、ちゃんとやってくれたからありがたいですよ。
ーーベースは本当にカッコいいですよね。
あとは、KOHKI(BRAHMAN/OAU)にもギターを1曲弾いてもらったんだけど、すごく楽しんでやってくれて、それは嬉しいなと。
ーー前作と比べるとクオリティが格段に上がってますよね。
あ、前回はBRAHMANとOAUのレコーディングの余った時間を使って、「ちょっと今録れます……?」ってエンジニアの人に頼みながら積み重ねていったのね。しかも、前回は弾き語りをやるのがメインの目的だったから、アコギしか使わないとかいろいろ自分の中で制約を設けていたんだけど、今回は決まった日程の中でできる限りやりたい放題しようと思ったの。だから今回は音源としてちゃんと聴けるようにしたいなと、好きな楽器を入れたり、弾き語りでは再現できないようなコーラスワークとかをやったのね。だから前よりもちゃんと聴けるものになってる。
ーーとはいえ、前回のレコーディングからライブを重ねてるだけあって、歌の上手さが段違いですよ。
本当? 歌も今回はすごくちゃんと録ったからね。しかも、今っていろいろ修正できるけど、前回はできるだけ修正しないでやろうって決めてて。そういう意味でも「弾き語り音源」に仕上げようとしてたんだよね。だから今回のレコーディングでは何回も歌ったし、つくり方の方向性も前回とは違ってるんだよ。
ーーライブで今のロンちゃんの歌を聴いてるから今作を聴いても違和感はなかったけど、今回インタビューするにあたって久しぶりに前作を聴き直してみたら「こんな歌だったのか!」と。
あはは! そう、しょぼいでしょう? あれはもう、背伸びしてもしょうがないっていうつくり方をしてたの。
ーーなるほど。あの作品を出して以降、意識の変化はありましたか。
コロナが落ち着いてきて、コールアンドレスポンスもできるようになってきたでしょう? そうなるとやっぱり弾き語りよりバンドのほうが伝わりやすいんじゃないかって思うようになったのね。だから、前は弾き語りがやりたくてアルバムをつくったけど、これからはバンドセットでやってもいいんじゃないかなっていうことも考えてやってみたんですよ。
ーーちなみに、曲をつくるときは詞と曲のどっちが先にできるんですか。
一緒。同時じゃなきゃできない。
ーーえー! どんな感じで浮かぶんですか?
だいたい寝てるときにふっと思いつくのね、詞となんとなくのメロディが。まあ、詞といっても全部じゃないんだけど、 重要なワードが降りてきてそこにメロディがついてるから、そこから急いでアコギを取りに行ってその場で鳴らしてつくっていく。だから無理やりとってつけたようなものではなくて、けっこう自然だと思うの。「曲をつくろう!」と思ってギターを持って鳴らしてメロディを浮かべて、とかでは全然ないです。
ーーだからこそ生まれるキャッチーさなんですね。
キャッチーですか?
ーーうん。だって、「パイオツBABY」なんて一度聴いたらすぐ歌える曲じゃないですか。
えー、ありがとう。 そう、あの曲も寝てるときに<パイオツBABY ポコチンDARLING>ってワードが2つ浮かんできたんだよね。そこからなんとなくのイメージでギターを弾いて、その後のBメロとかはちょっと考えたけど、大体のイメージはもう頭の中にあったからすぐできた。
ーーほかの曲もそういう感じで、印象的なワードとメロディが最初に浮かんでくるんですか。
うん、そう。
ーーでも、すべての曲に明確なコンセプトとキャラがありますよね。
あります? バラエティに富むのはいいよね。たとえば、「パイオツBABY」をつくる前、「ロックっぽい曲つくりたいな」というのが頭にあって、そういう気持ちで生活してると寝てるときにふっと降りてくる。
ーー面白い。
まあ、「そよ風そよそよ」なんかは言葉遊びですけどね。<ちんちん ぶらぶら>がまず頭にあったから、そこからはもう繰り返す言葉を羅列するだけ。でもたしか、この曲をつくったのは大瀧詠一が亡くなったあとだったのかな。それで、「大瀧詠一、素晴らしかったよな……」と思ったときに、僕の好きな大瀧詠一の曲はどれも浮遊感があることに気づいたんだよね。それで「それってなんなんだろう?」とコードをなぞってみたりしてどういう音程を使ってるのか理解したときに、ふっとメロディが出てきた。
ーーへー!
もちろん、あんなに素晴らしいものにはなってないんだけど、そういう雰囲気から影響を受けてつくり始めたんですよ。
ーー大瀧詠一は全然気づかなかったんですけど、ボーカルにビジュアル系の匂いを感じました。
あー、最近出てきちゃうんだよね、いろんなとこに河村隆一さんがちょっとずつ。
ーーそうそうそう(笑)。「ごめんね両親」なんてまさにそうで。
あれはもう本当に頭の中に河村隆一さんがいたの。曲の最後に「わ~、ふぁ~!」って叫んでるんだけど、河村隆一さんの鳴き声といえば「わ~、ふぁ~!」じゃないですか。
ーー鳴き声(笑)。
それが普通に出てきたんですよ。で、「今、なんで僕、わ~ふぁ~って言ったんだろう……」と考えたら、「あ、これ、河村隆一さんの鳴き声だ」と気づいて。
ーーあれは爆笑しましたけど、笑わせようと思ってやったものじゃないんですね。
うん、普通に出てきた。気がついたらそうやって歌ってたんだもん。だから、多分どっかにLUNA SEAが入ってんだろうね。
最初は嫌がってた人がいつか「よかったよ」と言ってくれたら
ーーということは、ロンちゃんの音楽は、笑わせることに全振りしてないから笑えるんですかね。
いやでも、笑ってほしいのは大前提ですよ。だけど、ただ笑わせるだけじゃなくてそこに意味を持たせたいとは思っていて。
ーーじゃあ、笑わせるために「こっちのほうが面白いかな?」みたいに悩んだりもするんですか。
そういう悩み方はするかも。たとえば、「みんなオンリーワン ~輝く未来へ~」は最初、「下品になりすぎてもいいかな」と思って、<出発ペニス>で歌詞が終わってたんですよ。でも、ペニスはやっぱりダメだなと思って。「でも、じゃあどうすればいいんだろう……?」とすごく悩んで、最終的に<出発おちんちん>に落ち着いたんですよ。意味わかんないよね(笑)。でも、そこに僕の中では差があって、もちろんどっちもくだらないんだけど、くだらないの方向が言葉の選び方でちょっと変わるんですよ。聴く人によっては<ペニス>のほうが面白いかもしれないけど、<出発ペニス>と<出発おちんちん>だったらどっちのほうが笑ってくれる人が多いんだろうって考えたときに、もしかしたら<おちんちん>のほうが裾野が広いんじゃないかなって思ったんです。
ーー裾野(笑)。でも、どっちが面白いかをしっかり選択した上でこの歌詞が出てきたとなると、すごさがより際立ちますね。
本当ですか(笑)。
ーーだって、人を笑わせるのって難しいじゃないですか。
そうなんですよね。でも、基本は苦笑いでいいと思ってて。で、たまに<うんち>とか<ちんちん>の響きだけで笑えるような人が大笑いしてくれたらいいなと思ってるんです
ーー「みんなオンリーワン ~輝く未来へ~」には、みーちゃんとGEN子ちゃんがセリフでゲスト参加していますよね。これ、細⚪︎さんとG⚪︎Nくんの完全なる無駄遣いですよ。
そう、本当にそうだと思う。怒ってないかちょっと心配だもん。
ーー決め打ちでお願いしたんですか。
セリフの後半パートはGEN子ちゃんで、前半は自分で言おうかと思ってたんだけど、「いや、ここでみーちゃんとGEN子ちゃんを共演させたら枚数伸びるんじゃね?」と思って。
ーーあはは!
こんな共演、普段はなかなかないからね。
ーーたしかにそうですけど、歌ではなくセリフという。
そう、歌とか歌わせるの申し訳なくてさ。本当はこのセリフも女の子に喋ってもらえたらいいのかなって考えてたんだけど、これまでずっと男だけでやってきたから女の子は入れないほうがいいのかなと思って。それに、なんかちょっとセクハラっぽいじゃない? 乳首の話をさせてさ、「無理やり言わされたんです!」とか訴訟になってもいけないから。
ーーあはは!
で、「男でかわいい声の人といえば誰だろう」と考えたときにGEN子ちゃんが浮かんだんだよね。そうしたら、そのアイデアが浮かんだ直後に『ARABAKI』でGEN子ちゃんと一緒の日にBRAHMANが出ることに気づいて、当日会場に到着してすぐGEN子ちゃんのとこに行って事情を説明して、その場でスマホに声を入れてもらったの。
ーースピード感がすごいですね。先ほど、セクハラで訴訟という話が出ましたけど、今はいろいろとうるさい時代じゃないですか。自分なりの下ネタの境界線はどこにあるんですか。
うるさいといってもそれは放送上のことだったりするじゃない? だから、ライブでは無理やり聞かせることさえなければそこまで言われることもないのかなと思ってるし、そこは好き放題やっています。でも、いろんな人が見られるような状態の場所でライブをやったときに苦情がきたことはある。
ーーそうなんだ!
地元(長野)のテレビ局でやってる夕方の情報番組のお天気コーナーで、好き好きロンちゃんの曲を1週間流してくれるって話があったんだよね。
ーーそれ、大丈夫なんですか?
でしょ? だから「え! 大丈夫なんですか……?」と聞いても、「いや、大丈夫ですよ~」って言うのよ。だけど放送当日になって「やっぱり、ちょっとダメで……」と言われて。
ーーそりゃそうですよね。
そりゃそうだよね! でも、こっちから何度も確認したんだよ? 
ーーほかにもそういうエピソードはたくさんありそうですね。
あるよ。福島の飯坂温泉でサーキットイベントみたいなのがあって、僕はお寺でライブする予定だったんですよ。そのときも「え、大丈夫?」と確認したら「大丈夫です~」と言われて、なのにあとになって「あの……すみません。その日はお釈迦様の誕生日なんでやめてください……」と。
ーーあはは!
「あ、お釈迦様のお誕生日か。だったらしょうがないか……いや、そんなわけあるか!」つって。でも当日、そのお寺でたまの知久さんのライブを観たんだけど、「ここではやっちゃダメだな」と自分でも思った。 あとは、とあるフリーイベントに去年出たことがあって、盆踊りのやぐらみたいなところで弾き語りをやったら人がいっぱい来てくれてものすごく盛り上がったの。だけど、運営のほうに「なんか、<ちん毛>という声が聞こえるんですけど……」って苦情が来たみたいで、今年は呼んでもらえないことになっています。
ーー「チン毛の一等兵」は初披露のときに子供たちが大喜びで歌ってたっていうエピソードがありますよね。
そう。みんなが「ちん毛いいね!」って。「どういう日本語だ?」と思うけど。ちなみにあの曲は、ちん毛を擬人化して愉快っぽく歌ってはいるんだけど、実はあれ、反戦歌だから。
ーーそうですよね。
子供はそこまで気づくわけはないし、ワードが楽しいから喜んでくれてると思うのね。でも、大人はもうちょっと感づいてくれてもいいんじゃないかなって思ったりもする。まあ、<ちん毛の一等兵>というワードが強すぎて他の内容が頭に入ってこないんだろうね。
ーー最初に頭に入ってくるのがど下ネタですから、そのもう1歩先にはなかなか行かないですよね。
うん、僕もそうかなって思ってるんだ。
ーーこの曲に限らず、一見わかりやすそうでありながら一度聴いただけではわからないような表現になってる曲が多いですよね。これまでは<戦後レジーム>みたいなワードでわかるようになってたけど、今回は言葉選びが凝ってて。
そうかも。ちょっとさ、文学的になっちゃってるよね。
ーーふふふ。
なんで笑うんだよ! うん、僕、文学的になっちゃったなって。
ーー……。
なんだよ!
ーーいや、いいと思いますよ!
あ、いいですか。本当ですか。ハラスメントになってませんか。
ーー話題を変えますけど、ジャケ写も強烈ですよね。これは一体どういうことなんですか。
使ってる写真は前回のアー写なんだけど、それを中世の絵画風にできるアプリにとおしてみたらどうなるんだろうと。
ーーああ、悪ふざけだったんですね。
そう、このジャケのデザインをした宇治とカメラマンのツカサが部屋飲みでベロンベロンになってるときにそのアプリでケラケラ笑いながら遊んでたみたいで、この写真を翌日の朝に「これどうですか」と見せられて、「うん、いいんじゃん?」つって。
ーーえ、この写真をジャケにどうですか?ということで見せてきたんですか?
デザインはもともと宇治に頼んであって、なんとなくのイメージは伝えてあったの。タイトルが『ロンちゃんの夏休み』だから、夏っぽい感じで青空があって、とか。 最初はひまわりがあったり、海があったりしたんだけど、いろいろやった結果、この形がよかったのね。
ーーなるほど。
でも、よく見ると太陽に隠れてUFOがいるのね。宇治から「これ、UFOがいるんですよ」と言われて、「何それ!?」って言ったら、「いや、昔のキリスト教とかの宗教画には、実は後ろにUFOが描かれてたりするんすよ」「マジで! 絶対入れよう!」と。多分、「ムー」とかが好きな人がこれを見たらゾクゾクってくるはず。
ーーあはは! さて、アルバムリリース後にはレコ発があります。ツアーという形は初めてですよね?
前回は東京だけだったけど、今回は東名阪でやります。東京はバンドセットで、あとの2本はアコギとカラオケでやろうと思ってます。初の試みだからどうなるかわかんないんだけど。
ーーメンバーは誰なんですか?
んと、ドラムがOVER ARM THROWのエイジ。
ーーえっ!
で、ベースがMAKOTOで、ギターが元TOTALFATのKUBOTY。
ーーええっ!
エイジもKUBOTYもロンちゃんのことをすごく好きでいてくれてるからすごくありがたいし、一緒にやりたいなと思って。弾き語りに比べてバンドでやるとノレると思うんですよ。だから、みんな一緒に体を動かしてもらえたら嬉しいですね。
ーーさっき、怒るバンドマンがいると言ってましたけど、やっぱり喜んでるバンドマンもいるわけですよね。
そう、「面白かったよ」と言ってくれる人もいる。ま、全員が喜んでくれるものではないけど。
ーーそれはどんな音楽でもそうですよね。
でも、最初は嫌がってた人がいつか「よかったよ」と言ってくれたらいいなっていう気持ちはちょっとある。それがひとつの目標。ちゃんと気持ちが乗っかってる音楽ではあるから、それを理解してもらえるようになったらいいなと思ってます!
取材・文=阿刀"DA"大志 撮影=大橋祐希

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