L→R MINATO(Dr)、MORRIE(Vo)、“CRAZY”COOL-JOE(Ba)、YOU(Gu) Photo by Hidekazu Maiyama

L→R MINATO(Dr)、MORRIE(Vo)、“CRAZY”COOL-JOE(Ba)、YOU(Gu) Photo by Hidekazu Maiyama

【DEAD END インタビュー】
4枚を聴いて思うのは
“カッコ良いバンドだったと思う”
ということ

テクニカルなことをしていなくても
あのソロから何かが立ち上がってくる

1988年に『shámbara』がリリースされましたが、岡野ハジメさんがプロデュースした最初の作品でしたね。

MORRIE
はい。『GHOST OF ROMANCE』の時にMegadethとかをやっていたエンジニアのランディ・バーンズにミックスしてもらうことになってLAに行ったんです。ところが彼が初日で“俺はもうやらない!”って言い出したんですよ。それはなぜかと言うと、メンバーが好き勝手に言うから。簡単に言うと“俺の音を上げろ”って感じだったので(笑)。だから、2日目からはディレクターが間に入って意見をまとめることになったんです。その体制で『GHOST OF ROMANCE』はなんとか終わりました。
“CRAZY”COOL-JOE
当時はLAメタルが流行ってる頃で、エンジニアの人が生音を全部加工してまとめようとしていたのを覚えていますね。“こんなもん、俺の音じゃねえ!”ってMINATOがすごく怒ってた(笑)。

(笑)。そういう出来事を経て、全体をまとめるプロデューサーが必要だということになったんですね。

MORRIE
はい。“次のアルバムからはプロデューサーをつけよう”っていうことになって、岡野さんにお願いすることになったんです。当時、岡野さんはTHE WILLARDとかのプロデュースをしていたと思いますけど、僕的にはPINKのベーシストとしての認識のほうが大きかったです。紹介していただいたら面白い方で、メンバー全員とも話が合って。当時はThe MissionとかUKの音楽が流行っている時で、岡野さんはウェイン・ハッセイみたいなファッションで、僕もそういう音楽が好きだったんです。

JOEさんと岡野さんは特撮の話でも盛り上がったんじゃないですか?

“CRAZY”COOL-JOE
そうやね(笑)。『ZERO』の時はロンドンでレコーディングをしたんやけど、俺とMINATOは先にリズムを録って終わったら、あとは暇な時間が多かったんで、フリーマーケットとかいろんなところに行って買い物をしていて。で、朝一番からやっている地域のフリーマーケットとかに岡野さんと一緒に行って、『スター・ウォーズ』や『エイリアン』とかのフィギュアを買った覚えがある(笑)。
MORRIE
岡野さんは『Ballad D』(2022年9月発表のMORRIEのアルバム)で10年振りくらいにプロデュースをお願いしましたけど、相変わらず面白い人でしたね。だいぶやさしくなりましたけど。

厳しかったんですか?

MORRIE
なんて言うんだろう? 厳しいんですけど、その厳しさには岡野さんの中で音楽的なきっちりとした裏づけがあるんですよ。音楽に対してものすごく真摯な方なので、鍛えていただきましたね。それこそ『shámbara』の時、“今から来てくれない?”と言われて、歌詞に関することで呼び出されたことがありましたね。家が近所だったんですよ。“《燃える胎児》って、これは何なの?”って単刀直入に訊かれて、意味を答えたら“そうなの? これじゃあ売れないねえ”って(笑)。プロデューサーとしては売り上げの責任もありますからね。岡野さんとメンバーとのちょっとした戦いとかもあった気がしますけど、悪い思い出はまったくないです。
“CRAZY”COOL-JOE
岡野さんはニューウェイブやパンク、イギリスの音楽だったり、ファッションとかが結構好きで、そういうのも良かったんだと思う。いろんな曲を知ってはるから、うちらが“こういうのをやろうと思うねんけど”ってスタジオとかでやった時に、“だったらこういうのはどう?”ってちょっとしたアイディアをくれることが結構あって。そういうのでうまくまとまっていったっていうのはあるんじゃないかな?

『shámbara』は素晴らしいアルバムだと思います。

MORRIE
よくできていますね。
“CRAZY”COOL-JOE
音的にも内容的にも、俺もこのアルバムは好きだね。

「Psychomania」は聴くたびに痺れます。

MORRIE
カッコ良いですよね? あれは新しいと思いました。「Blood Music」も新しさがありましたね。

「Blood Music」はダンスミュージック的なサウンドなのが印象的です。

“CRAZY”COOL-JOE
そうやね。この曲、結構好きなんだよな。イギリスのニューウェイブとかそういうのを、この時期は俺も含め、みんな好んで聴いていたんじゃないかな? やっぱりDEAD ENDには、アメリカの音楽の要素はそんなにはない気がする。

JOEさんが作曲した「Night Song」にも、そういう部分が表れていると思います。

“CRAZY”COOL-JOE
うん。どっちかと言うとニューウェイブっぽいよね。YOUちゃんのギターもイギリスっぽさが他の曲に関してもあるんだと思う。例えば、The Policeのアンディ・サマーズみたいなアプローチもあるし、その辺がDEAD ENDをちょっと変わったロックバンドにしていたのかもしれない。YOUちゃんはエフェクターオタクでもあったからね。いろんなのを研究していたから。ディレイとかもこだわってやっていた記憶があるなぁ。なんせ新しいエフェクターが出たら“とりあえず試させて”って、いろんなことやっていた。
MORRIE
「Blood Music」はYOUちゃんの作曲が開花した感じがありましたね。『shámbara』は変則的に3カ月連続で3曲ずつくらい録っていきました。「Psychomania」や「Blood Music」を出してきた時は、“カッコ良い!”と思いました。この次のアルバム『ZERO』の代わりにこういう方向をもうちょっと突き詰めていったら、また違っていたかもしれない。まぁ、今からそんなことを言っても仕方ないんですけど。

このアルバム辺りからニューウェイブの香りが強くなってきた印象がするのですが。

MORRIE
あぁ、なるほど。でも、“こんな曲作ろう”って話し合ったことはないんですよ。YOUちゃんから出てくるものをかたちにしているだけなので。もちろんボツになった曲もあるんですけど。当時、彼の中でどういう考えがあったのかは分かりませんね。

その時に好きで聴いていた音楽のエッセンスが、自ずと反映されていたんですかね?

MORRIE
分からないです。本人曰く、あんまり他の人の曲を聴かないみたいだったので。ラジオに出演した時にかける曲はバッハかウルリッヒ・ロート(ウリ・ジョン・ロート)か、アル・ディ・メオラの「スペイン高速悪魔との死闘」とかくらいでしたから。あと、一時パコ・デ・ルシアにハマっていたのは覚えています。“パコ、パコ”って言っていましたから(笑)。

お好きな音楽はありつつも創作の源が何なのかなかなかよく分からないソングライターだったということでしょうか?

MORRIE
そうなんですよ。出どころが分からないというか。そこが不思議というか、YOUちゃんならではのところでしたね。

ギタリストとしては、やはりマイケル・シェンカーとかがルーツなんですかね?

MORRIE
やっぱりシェンカー、ウルリッヒ辺りでしょうね。中学生時代から完コピをしたらしくて、影響はもちろん受けていると思います。でも、やっぱり独自のものがあるギタリストですよ。リズム感もすごいですから。
“CRAZY”COOL-JOE
YOUちゃんのギターって変わってるんだよな。音に関してはすごくこだわる奴やったんやけど、それ以外だとリズム感がすごく良くて、間のとり方に独特なものがあって。全曲に言えると思うねんけども、ギターの入りがジャストじゃなくて、頭に空(カラ)が入って、そこからリフになったりするから。そういうのがコピーしようとする人からするとややこしいみたい。

DEAD ENDのトリビュートアルバムが出た頃、「I Can Hear The Rain」でギターを弾いたNIGHTMAREの咲人さんとお話をする機会があったんですが、ものすごく難しかったとおっしゃっていたのが印象に残っています。

MORRIE
「I Can Hear The Rain」はシンプルかつドラマチックで、すごくいいですよね。ギターソロから立ち上がってくる何かは、今聴いても感じます。YOUちゃんにしてはテクニカルなことをしているわけではないんですけどね。フレーズもそんなにすごいものではないけど、あのソロから何かが立ち上がってくるんですよ。

「Heaven」のサイケデリックで民族音楽的なエッセンスが香るサウンドも、とても引き込まれるものがあります。

“CRAZY”COOL-JOE
浮遊感があるこの感じって、当時はやっている人がそんなにいなかったのかな? こういうのは岡野さんが好きだったものの部類に入るのかもしれない。
MORRIE
あの仕上げの全体感は岡野さんならではのものですね。メロトロンやスリットドラムを使ったりとか。他の曲もエフェクト処理とかも含めて、端から端まであのアルバムで岡野さんにかかわっていただきました。

メンバーのみなさん各々から出てくるアイディアを的確にまとめてくださるという点でも、岡野さんは頼りになったんじゃないですか?

MORRIE
そうですね。メンバーはみんなそれぞれ自分のことしかやらないので(笑)。『shámbara』みたいな世界観が一貫しているものは、岡野さんがいないとできなかったと思います。

OKMusic編集部

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