【SHERBETS インタビュー】
今まで以上にベンジーを感じ取れる
アルバムになっていると思う
誰かのモノマネをするのは
生きている意味がない
続いて、レゲェが香る「セダンとクーペ」にいきましょう。
それはこの曲を聴いて感じました。ですが、「セダンとクーペ」はもろにレゲェではないというのがいいと思います。
浅井
そう。スカっぽくもあるしね。そのへんは外村公敏くんとか、仲田憲市先輩のセンスもすごくかかわってくるというのがあって。そもそもこの曲は全然レゲエじゃなかったんだわ。それがなんでか知らないけど、こうなっちゃった(笑)。似たような感じの曲が10年くらい前にあって、それと同じ感じになるからレゲェ調はやめようという話になったし、一度は違う方向で進めたけど、“やっぱりレゲェじゃない”となということになってさ。改めて思ったけど、レゲェは面白いね。
福士
私もこの曲、好きです。一時エンジニアのファーストミックスがものすごくぶっ飛んだ感じで私的にはとても気に入っていたんですけど、結局少し抑える方向になって…でも、不思議な世界にスコン!と連れて行ってくれるいい曲になりましたね。
「セダンとクーペ」はディレイのかかったピアノが淡々と鳴っていることがオリジナリティを生むと同時に世界観を深めています。
福士
私はルールとか関係ない人間だから。良ければ何でもいい的な思考なので、レゲェが好きでもレゲェにはならないかもしれない。ただ自分なりの感覚でやっているだけです。誰かのモノマネをするのは生きている意味がないと思う派だから、自分たち流のやり方で新しいものというか、気持ち良い世界が作れるといいと思っています。
それがいい方向に作用しています。それに、福士さんは少ない音数やシンプルなメロディーなどで世界を作るのが抜群にうまいですね。
福士
本当ですか? 私は音色好きで、メロディー好きなんですよ。それで、昔はいっぱい詰め込んでいた時期もあって。アレンジしているうちにどんどん思いつきすぎちゃって、それを全部入れたくなったりして。だけど、いいメロディーばかりいっぱいあっても、いろんなものが入りすぎている丼モノみたいになって何が美味しいのか分からなくなるんですよね。そこは気をつけなきゃと思ってから引き算をするようになるんですけど、引き算もなかなか難しいじゃないですか。だから、それを自分の課題にして、最近はなるべく1個の音でどこまでやれるかということをまずは意識して、“ここにこの音があったら絶対にこういう世界にいけるな”というものを選ぶようにしています。もっと減らせないかなぁと思ったりもしているので、まだまだ修行中ですけど、まぁまぁ合っていると思いますね(笑)。
“まぁまぁ”ではないです(笑)。どの曲でも重要な役割を果たしていて、センスの鋭さを感じます。浅井さんのギターも埋めるのではなく空間を活かすタイプですので、相性の良さを感じますし。
浅井
そうだね、俺は空間を活かすほうだと思う。何も考えていないけど(笑)。
そうおっしゃると思いました…感覚ということでしょうか?
浅井さんのギターアプローチは本当に面白いです。楽曲によって鳴っている本数や定位などが違っていますし、ギターが1本だけの曲もあれば、サブリミナル的な音を入れている曲もあったりしますよね。
浅井
そういうのも全部が感覚。“SHERBETSのギターはこうじゃないといけない”というようなことは一切ないんだ。時間がかかるのは大変だから、“シンプルなのが良いわ”というのはあるけど。
とはいえ、それぞれの曲に合わせてギターの音を細やかに変えている印象を受けますが。
浅井
メインのギターは全部同じなんだよ。昔から使っているグレッチとマーシャルの組み合わせで、ベーシックをみんなで一斉に録る時はその音。ダビングのギターはいろいろ変えるけどね。
ということはベーシックパートに関しては機材ではなくて、弾き方でニュアンスを変えているんですね?
浅井
そう。エフェクターでちょっと音は変わるけど、それよりも弾き方のほうが大きいよね。歪み感とかもアンプをいじるんじゃなくて、ピッキングのアタックでコントロールしたりするし。
さすがです。ダビングするギターを選ぶ時は直感でいくタイプでしょうか? それとも、あれこれ試してみるタイプ?
浅井
“こういう感じだろうな”というのは漠然とあって、“そこに向かっていくにはこのギターか、あのギターだろうな”という中からチョイスする感じ。
イメージ以上にシンプルな機材で多彩な音を出されているのは、ちょっと驚きです。話を「セダンとクーペ」に戻しますが、“世の中には違いが分からないものが多い、でも分かるものもある”と歌っている歌詞も楽しめました。
浅井
ババロアとプリンの違いが分からないとか、カピバラとウォンバットの違いは分かるとかね(笑)。
福士
これを読んで、“こういう人っているよな”と思った(笑)。
挙げている例が絶妙です(笑)。しかも、最後に《自分が何言ってんだかわからねぇ》と言っていて…。
浅井
自分でも本当にわけが分からないと思ったからね(笑)。
そう言っていることで酩酊感のある歌詞になっていて、それがレゲェにすごく合っていると思います。
浅井
狂っとる感じ?(笑) そう感じてもらえるなら良かったけど、これも偶然なんだ。そういうことが起きるのがSHERBETSのすごさなんだよね。仲田先輩とかは作っている最中は歌詞のことなんか、もうまったく頭にないんだよ。自分のプレイのことしか考えていないから。そして、出来上がったあとに、“「知らない道」の歌詞のここいいね”とか言うわけ。だから、作っている時は周りがあまり見えてない。だけど、出来上がるとちゃんと良いものになるから不思議なんだよね。