斉藤和義

斉藤和義

【斉藤和義 インタビュー】
今回はアコギのロックアルバムに
したいと思っていた

何でも弾ける人、
ギターがうまい人ではこうはならない

斉藤和義

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まず配信してきた楽曲があって、それを全部アルバムに入れるとすると残りはどうするかとか考えて曲作りしたようなところはあったんですか?

あまりそれもなくて。何となく作業場で録ってたりしてた頃、ちょうど『ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート』が公開になったんですね。あれは原点回帰な感じで、4人だけの演奏でダビングも少なめだから、改めて“あの質感はいいな”と思ったりして。The Beatlesで言うと『Beatles for Sale』のアコギがメインで鳴っていて、エレキなんかはたまにペラペラな音でオブリガードが入るくらいで、すごくシンプルな感じ…『Rubber Soul』以降の別々に録ってる感もなく、せーので録ったシンプルな感じが“やっぱりこのアルバム、すごくいいな”と思って聴いていて、その影響もあって今回はアコギのロックアルバムみたいなものにしたいと思い出して。アコギメインというか、音数が少なめのシンプルなサウンドにしたいということを昨年くらいから思っていましたね。

6曲目「君のうしろ姿」はエレキギターの圧力で攻めることもできそうだけどそうはなってないと思って聴いました。

たぶん別の時期にアレンジしてたらもっと壮大にもできただろうし、それこそQueenみたいなアレンジにもできただろうけど、これはあえてエレキは入れたくないと思ったんですよ。その代わりにマンドリンでやろうと。

アルバムラストの「俺たちのサーカス」もそんな感じですか? 2022年5月の配信でしたが、これもアコースティックな印象が強いと思います。

これもそうでしたね。この辺から始まっていたのかもしれないです。あと、昨年は弾き語りのツアーをやっていて、その同時期に録っていたので、それもあってアコギモードだったのかもしれないですね。

確かにエレキギターががっつり入っているのは「朝焼け」くらいですね。

ですね。まぁ、バンドのみんなとせーので録った「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ」もエレキギターが入ってますけど、どうしてもエレキが入るとエレキの音が強いからアコギは後ろに隠れちゃうことが多いんですけど、エレキが入ってもアコースティックな音がメインでいるようなアレンジなりミックスにはしたいとは思っていて。エレキは入っていますが、サイドで小っちゃくやってるくらいとか、隠し味にした曲のほうが多いかもしれないですね。

1曲目「BUN BUN DAN DAN」、2曲目「問わず語りの子守唄」も勢いがあってサウンドもエッジーではあるんですけど、パンクやメタルのようなエレキギターは入っていないですからね。

うんうん。「BUN BUN DAN DAN」はエレキを入れなかったし、「問わず語りの子守唄」はサビにちょっとだけ入れましたけど、ほとんどアコギですね。シンプルにしたいっていうのは何かありましたね。

そこに注目して聴くとアルバムの印象が変わるでしょうね。確かに3曲目のタイトルチューン「Pineapple (I’m always on your side) feat. 藤原さくら」も完全にアコースティックですから。

カントリーですね。とにかく“フォークソングを作りたい”というモードでした。結構最初の頃にできていた曲で、デモではひとりでコーラスを重ねてやっていたんですが、やっぱり同じ人間がいくら重ねてもなかなか広がらないんですよ。そういうのをいっぱい入れる面白さもありますけど、誰か違う人の声が入るだけで急に開けたりもするし。これもいろんなアイデアがあったんですが、時間的にいろんな人を呼ぶは無理だったので、“だったら、女性と歌うのがいいかな?”と思って。さくらちゃんには過去にも参加してもらったことがあって…あと、歌詞を書いたら英語になっちゃったんで、彼女は英語もイケるから、それで来てもらった感じですね。

そうでしたか。藤原さくらさんの話をしましたので、その他の客演に関してもうかがっておきたいと思います。8曲目「朝焼け」に野性爆弾のくっきー!さんがエレキギターとコーラスで参加されています。これは2021年に公開された映画『リクはよわくない』の主題歌で、原作は坂上 忍さんの絵本、そして、その挿絵をくっきー!さんが描かれたものだそうですね。その方にギター&コーラスで参加してもらうというのは面白いアイディアだと思いました。

くっきー!とは面識はあったんですけど、その映画の曲を作ることになった時、くっきー!が自分でバンドをやっていて、ギターを弾けるのも知ってたし、こういう曲で、さっきのコーラスの話じゃないけど、エレキギターでも同じことをユニゾンでやりたいと思った時に、自分ひとりでやるとギターを変えたところで手癖は一緒だからあまり広がらないんですよね。くっきー!はパンク好きでこういうギターもうまいはずだから、ちょうどいいかもと思ったんですよ。コーラスなんかもきっといいだろうと。それで“ギター、弾かない?”って話になったんです。そうしたら案の定ばっちりで、テイクも一回だけでOKだし、“さすがです!”って感じでしたね。

タイアップの映画の関係者で、しかもちゃんと演奏者のカラーが出ているっていうところがいいですよね。

そうですね。何でも弾ける人、ギターがうまい人ではこうはならない。“バンドをやっていて、もともとパンク好きだから、こういうのは絶対に向いてるはずだ”っていう人のギターて感じですよね。

もうおひとり、1曲目「BUN BUN DAN DAN」には俳優の大森南朋さんがコーラスで参加されていますが、こちらの経緯も藤原さん、くっきー!さんと同様ですか?

ある映画の音楽をやらせてもらった時に、南朋くんはそれに出ていて、そこからもう十数年の知り合いなんですね。バンドもやってるし、ギターも好きだし…で、よく一緒に呑んだりもするので、この曲ができた時に…これもさっき言った話と一緒で、ひとりで♪BUN BUN DAN DAN〜って言っても広がらないし、誰かと叫びたいと思った時、真っ先に南朋くんだなって。以前にも一回参加してもらったことがあるんで、“こういうのは得意だろうな”と思って。役者さんでバンドもやっているし、めちゃめちゃ勘が良いいし、レコーディングスタジオに来てもらって一回聴かせて“こういう曲で、こんな感じの内容なんだけど”って伝えたら、“分かりました”って言ってブース入って、もう1、2回やってOKでした。“さすがです!”って感じでしたね。南朋くんはThe Street Slidersとか大好きだったみたいで、そういうバンドもやってたみたいなんですよ。

ロックな人なんですね。

そうなんです。自分でやってるバンドもそういう系の曲が多いし、ここの辺りはすぐに分かってくれると思ったので、やってもらいました。

OKMusic編集部

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