【村上ユカ インタビュー】
地球的から宇宙的へ。
変化するマインドセット
生きていて感じたことを
今作で全部出しちゃった(笑)
先行配信された「銀河エレベーター」もですが、この曲と「僕の心で」の2曲はティーンエイジャーのシンガーが歌っても全然違和感がないと感じました。
ちょっとアイドルっぽい感じも入れつつみたいな。振り付けも一応あって。
ボカロPの歌い手とかアイドルにも似合いそう。
うん。カバーしてほしい(笑)。
村上さんはご自身のメロディーラインについて特徴的だと思うことはありますか?
“和風”と言われたりもするんですけど、全然その認識がなくて。自分が歌いやすいかどうかですね。歌詞も含めて発音しにくい単語とかもあるんですよ。なので、それを使わないようにして、自分があくまでも歌いやすい音とか音の並びとかを選ぶようにしています。
話を「銀河エレベーター」に戻すんですが、このポップさの理由って?
この頃すごい暗かったんですよ、自分が(笑)。なので、明るくしたいってのがあったんです。
宇宙へのエレベーターってSFにも登場しますよね。
たぶん“軌道エレベーター”かなんかで、いちいちロケットを打ち上げずにエレベーターを作っちゃえばいいみたいな、そういう発想ですよね。宇宙的なものは好きで、学研の宇宙図鑑も愛読書だったし、プラネタリウムもすごい好きなんです。星の知識は全然ないんですけど、見ているのが好きみたいな。宇宙飛行士になりたいと思っても体力がないし、どう考えても文系の人間にはなれないと思ったけど、その意識の面だけでも宇宙に行きたい気持ちがあるからこういう曲を作っているのかもしれないですね。
「がんばりました」には《あれから20年》という歌詞がありますが、その20年というのは?
デビュー20周年の時に作った曲なんですよ。で、ライヴで初めてやったんだったかな?
じゃあ、具体的な20年なわけですね。
そうですね。今はそれから5年経っちゃったんですけど(笑)。でも、とりあえず25年だと、ちょっと語呂が悪かったから20年にして収録しました。
前向きな、前に進む以外ないっていう感じ。
そう(笑)。生きていくしかないっていう。
20年を一緒に見てきた人だったり、見てくれた人に対して“なんかすごく頑張りました”と?
私を見てきてくれた人に対してもそうだし、たぶん私の音楽を聴いている人って同じぐらいの年代で40~50代だと思うんですよ。20年前を振り返ってみると、同じことを続けていたりとか頑張ってきたことが何かしらあると思うんですね。なので、その20年っていう数字は今のところ自分にとって一番実感のある数字だったりして、きっと聴いている人もそうだろうなと。ちょっと自分を励ましてもらいたいってとこもあったりします。
「がんばりました」と「夕暮れ列車」はわりと日常的というか、働いている大人が普通にふと感じたりする場面じゃないですか。
そうですよね。私も電車で通勤していたことがあるので、そこで見た景色ってのも今見ているものとは違うんですけど、それも曲に入れたいなと。そこで感じたこともすごく大事だったし。
本当にいろんな感情のグラデーションが多彩に入っているんですね。
そうですね、全部入ってる(笑)。
「青き調べ」はまた全然違う世界だし。
はい。あれはもう地球がなくなっちゃったあととか、誰もいなくなっちゃったあとみたいな。宇宙の大きな流れの中に自分がいるだけっていう感じで、かなり客観視をしていると思う。ただ存在してるだけっていう、それだけの曲なんですけど。
今回集まった楽曲の歌詞ってどういう傾向だと思われますか?
“もう全部出しちゃったかな?”という感じがしていて(笑)。どういう傾向かというより、9年間どころか、ずっと生きてきて感じていたことをほとんど出しちゃった感じがしています。“次は何をやったらいいんだろう?”ってなっているんですけど(笑)。
そこまで出したと(笑)。では、最後に初めて村上さんの作品に触れる方に対してメッセージがあればお願いします。
先入観なく聴いてもらえれば嬉しいですね。
取材:石角友香