【THE CHERRY COKE$ インタビュー】
断言しよう!
“日本No.1アイリッシュパンク
バンド”の称号は彼らのものだ
自身の音楽性や出自を今一度高く掲げ、それをさらに強靭にし、間口も広く新要素も同居させたニューアルバム『THE ANSWER』。男気あふれるキャッチーさも各曲耳を惹き、初見も一聴も即一緒に声をあげ、一体感や一丸性を与えてくれる、極めてライヴで本領を発揮する楽曲が並んだ一枚だ。
今作からは今一度“アイリッシュパンクロック”に立ち戻った感と、分かりやすさや伝わりやすさの同居を感じました。
MASAYA
まさにおっしゃる通りです。今回は『THE LIVE ツアー』というライヴで先に新曲を披露し、直後にそれを配信限定で公開してきた曲たちが半分ぐらいで。他はCDのリリースが決まってから作った曲たちなんです。中でも『THE LIVE』ツアーの新曲たちはライヴ向けの分かりやすい曲たちが中心で。すぐにともに声をあげられたり、ノれたりできる、そんなライヴの即戦力でパンキッシュな曲ばかりだったんです。でも、そこに若干の物足りなさを感じて、今一度自分たちの出自であるアイリッシュ性を前面に押し出した曲を作ろうと。それらが同居したのが今作なんです。
初見の方でもすごく入りやすく、即一緒に盛り上がれる楽曲揃いですもんね。
KAT$UO
自分たちの武器や特徴を前面に出し、今一度改めて“俺たちが日本代表のアイリッシュパンクバンドだ!”との決意をズバッと提示できた作品になったかなと。
MASAYA
やはり、今回一番大きいのはキャッチーさとポップさの違いを表せたところでしょう。これまで徐々にポップな方面に向かって行ってはいましたが、ポップとキャッチーは違うとKAT$UOさんから指摘され、気付かされたり。
KAT$UO
いくら耳馴染みが良くても、明確なキャッチーさがないと物足りなくて。MASAYAに“こんな曲が欲しい”と伝えると、器用なのでそれに沿った曲が作れるんですが、そのポップなものをどうキャッチーに昇華していくかはメンバー間で結構話し合いましたね。そのキャッチーさにしても、自分たちの雰囲気や見た目、イメージを裏切っちゃダメだったし。
MASAYA
僕がそのキャッチーさで理想としたのは、The J. Geils Bandの「堕ちた天使」だったんです。一発で覚え、口ずさんだり一緒に歌え、かつ男気があるキャッチーさを持っている曲。あの曲ってメロディーだけ聴くと、決してポップじゃないんですよ。でも、あれだけでビールが飲めちゃうという(笑)。
今作もみんなで声を合わせられるガヤ系のアンセムが目白押しですもんね。
MASAYA
それこそ“どれだけ無駄を削ぎ落とせるか?”への挑戦でもありました。今まではどうしても妙なエゴがあったんで。今回はそれらを捨て、即、拳を握りながら肩を組んで一緒に歌えるものを目指したんです。
LF
おかげさまでよりストレートになりましたよ。大木一本でズドンと突かれているような。あとは、『THE LIVEツアー』を経た、お客さんの光景。“ここでこうすればフロアーはこうなる”とイメージが浮かびやすかったのも大きかったですね。
曲の展開に合わせフロアーでの盛り上がりも変化していきますもんね。
KAT$UO
その辺りは今作を作る前にカリブ海でのライヴツアーに出演できたことも大きくて。向こうでは当然、僕たちのことをほぼ知らないわけで。でも、そんな人も一回で惹き込み、楽しませ、盛り上がらせなくちゃいけない。となると、分かってるからノれる、知ってるから楽しいじゃなく、知らなくても楽しい…そこまで持って行かなくちゃならなかったから。以降は、そこを目指しての制作でもありました。
で、その先に違った要素が用意されているのも今作のポイントかなと。
MASAYA
いろいろと考えて、その末に迷子になって(笑)、メンバーのアドバイスや機転の結果、新しいアプローチの「A-Yo」ができましたからね。
KAT$UO
「A-Yo」はタイムカプセルに埋めた手紙を今読み返し、自分がどう感じるか、小さい時に思い描いていた自分に成れているのかが題材ですが、それもこの曲の間奏で時間の経過や風景が足早に流れていく情景が頭に浮かび、そこから生まれた曲でした。
「Lilac」は6/8拍子のロッカバラードですが、このような艶やかさやアダルトさも従来にはなかったですよね?
MASAYA
アレンジはまったく違いますが、この曲は前作の頃からあって。で、自分たち主催のアコースティックライヴの際に、アコーディオンでピアノのイントロ風のアレンジをして演ったんです。それがきっかけでした。
LF
自分でもこういう曲を弾いていることが信じられないです(笑)。弾いている時は顔で弾かせてもらいました(笑)。
KAT$UO
俺も成り切って浸りながら歌いました。思ったより大人っぽく歌えたなって。
suzuyo
この曲ではサックスを吹いてますが、ようやくサックスにベストマッチする楽曲に出会えたなって。
今作はもっとsuzuyoさんの歌声の比重が増える予想でしたが、逆に前作より減ったのも意外でした。
MASAYA
その辺りは意識的でした。女性の歌声が入るとキャッチーにはなるけど、どうしてもそこに耳が奪われちゃう。でも、今回はどうしてもKAT$UOの男臭さを軸にしたくて。あえてメリハリやコントラスト的にしか入れませんでした。
あとは、より楽器類の一丸性が増したかなと。
MASAYA
そのユニゾン(各楽器が重なり同じフレーズをプレイすること)がより増えたのも、今回のアイリッシュ色が強くなった印象付けにひと役買ってますね。やはりアイリッシュの強い印象のひとつでもありますからね、各楽器が一丸となって重なるさまは。
LF
その場その場でのもっとも大切な音、そのために周りの楽器がそれを引き立てるプレイをする。その辺りがより強く出たかなと。
suzuyo
今作ではサックスの割合も減り、逆にアイリッシュの代名詞的とも言えるティンホイッスルが復活しましたからね。
諸々を踏まえて、ようやく“これが俺たちだ!”と自称できる作品となったのでは?
MASAYA
それは強くあります。紆余曲折ありましたが、ここからまた新しく自分たちを掲げていける。そんな作品になりました。
KAT$UO
さらにもう一歩進める作品ができ、バンドの状況もすごく良いので、ここから先の自分たちの新たなる一歩も楽しみです。今後堂々と掲げていきたいんですよね、“日本代表アイリッシュパンクバンドはTHE CHERRY COKE$だ!”って。今作やライヴを通し、その辺り今一度、獲りに行きますから!
取材:池田スカオ和宏