「僕を恋の奴隷にしてください」と秦
基博に囁かれます

僕を恋の奴隷にして下さい
本当の愛なんてきっと 都合のいい幻想だろうから
僕は恋の奴隷になります
・・・・・・・
ああ僕を、恋の奴隷にしてください。秦さんの良い声でそう歌われるサビの部分は、聞いていると脳みそがとろけそうになる。
秦基博の「恋の奴隷」は、恋をした男性の薄暗い感情、もっといえば暗黒面を表現した曲。
恋愛の都合のいい幻想を歌った曲が氾濫するなかで、恋愛の苦しみから湧き出てくる、エロティックなエレジーを、秦さんの柔らかい声で表現した、世界観のある曲になっている。
・・・・・・・
まともな恋はできそうにない つまりは欠陥品なのです
気付かぬふりはもう止めました 誰も知らない心根に
・・・・・・・
誰にも気づかれず、自分自身でも気づかないふりをしていたくらい、底の底にある感情。本当の自分は、まともな恋ができない欠陥品。だから、恋愛に淡い期待なんて抱いていない。この曲を聴いていると、そんな憐れな男性像が浮かび上がってくる。そんな男が落ちてしまった恋だから、僕は恋の奴隷になります、と、文字通りに身も心も捧げ、相手の足元にひざまずくようにすがる姿が想像される。
・・・・・・・
落ちる様は滑稽で 喜劇のような 悲劇のような
お願いします 笑うのをやめて
せめて眺めるだけにして
・・・・・・・
相手の言動に一喜一憂して、天にも昇るくらい嬉しかったり、それとは真逆で、胸をかきむしるほど苦しくなったり。恋に「落ちる」男は、傍からみると、ずいぶんと滑稽なものに映るだろう。けれど、恋している本人はどうしようもなく真剣なのだから、笑うのはやめてやってほしい。
その後の、「せめて眺めるだけにして」というところに少しのエロティシズムがある。秦さんのやさしげな声音で、ある意味マゾヒスティックともとれる歌詞を歌っているのだから、ずるい。
恋の奴隷。そこには、淡い幻想は存在しない。甘く咲き誇る花々は摘まれ、流れ星には決して祈らない。ただ相手にひざまずき、快楽に身を任せるだけ。この曲にはエロティックな歌詞が多く登場するが、「やわらかで卑猥なあなた」と歌っていても、卑猥な感じはしてこない。それは、沼のような恋に落ちてしまった男の、どうしようもない哀しみを強く曲から感じ取れるからだろう。
「恋の奴隷」は「エンドロール」というEP盤にしか収録されていない、かなりレアな曲。秦基博が、セルフプロデュースをした楽曲でもある。大人の男が恋を前にして、もがき苦しむ曲。秦さんも、こんな恋愛をしたのだろうか?
TEXT:緑の瞳( http://www.hitomimidori.com/ )

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