紙博へ初めてのおでかけレポート 『
紙博 東京vol.8』で、紙ものとイラス
トにまみれてきました

行ってきました、『紙博』!
2024年3月15日(金)、16(土)、17日(日)の3日間にわたり、東京都立産業貿易センター 台東館にて開催された『紙博 in 東京 vol.8』のイベントレポートをお届けします。『紙博』初参戦の取材班が、会場をたっぷりと泳ぎ回ってきました。ぜひ、次回以降のお出かけの参考にしてみてください。
『紙博』とは、“紙ものとイラストレーションの祭典”。さあ足を踏み入れた瞬間、一体どんな紙ものたちが目に飛び込んでくるのでしょうか……。
会場風景 16日(土)11時ごろ
ひ、人しか見えない!
従来の2日間の開催から、今回は1日延ばして初の3日間開催になったという『紙博』。それでも会場はアイテムを吟味する来場者たちでご覧のとおりの大盛況です。建物の4階、5階、6階それぞれにブースが展開されていて、予習なしだと各フロアをぐるっと見て回るのに大体1時間ずつかかりました(これが平均的なのかは不明ですが……)。
ちなみに、フロア間の移動にはほとんどの人が階段を利用していて、「結構きついね」なんて笑いあいながら戦利品を抱えて行ったり来たり。ちょっと学校風の内階段も相まって、文化祭のような雰囲気にほっこりです。
記念すべき第一トキメキは、切り紙でした
「maki」さんのブース
回遊をはじめて数分後。来ました、記念すべき最初のトキメキです。「maki」さんのブースで見つけた切り紙絵のステッカーを見てください。右上の帽子を被った女の子なんて、まるでヴァロットンじゃないですか! 興奮を抑えきれず、さっそく財布が開幕。
にゃー!
同じ作品に見えても、切り紙は1枚ずつ微妙にニュアンスが違います。ブースに並ぶ作品1枚ずつ、手で切り抜いているのだそうです。なんでそんな苦行みたいな凄いことを……と驚きの眼差しで見つめると、照れたように笑う作家さん。言葉にはせずとも、「好きなので」と答えてもらったような気がしました。
紙ものは物語を抱いて
「totoganashi」さんのブース
出展者さんごとに、ブースのデザインもおしゃれに工夫されています。例えば水彩の植物イラストが可愛い「totoganashi」さんのブースでは、アイテムだけでなく、インテリアショップのような空気づくりにも感動。出会いから購入のストーリーは、品物の背景にずっと残るものだからこそ、お店の雰囲気が素敵だと「ここで買いたい!」という気持ちが加速します。
「ハチマクラ」さんのブース
物語がある紙ものといえば、アンティークは欠かせません。アンティーク・ヴィンテージ品を扱う「ハチマクラ」さんで見つけた小さなカードは、1900年代初頭のアメリカの“淑女の名刺”と呼ばれるもので、女性がパーティーなどで気になる相手に連絡先をそっと伝えるためのアイテムなのだとか。二重になった花の部分をめくったところに連絡先を記すのだそうです。店主さんから教えてもらい、ロマンに身悶えして、買いました。
耳もお口もうれしいです
と、不意に聞こえてくる楽器の音。音を頼りに近づいていくと、そこには思いがけない出会いがありました。
「ペパニカ」さんのブース
紙で作るアコーディオン「ペパニカ」さんです。なんと作家さんは本職のアコーディオンの修理・調律師さんとのこと。デザインに携わっていた経験を活かし、「何か面白いことできないかな?」と紙の楽器を考案したのだそう。シンプルな造りなのに音色は本格的で、つい何度もパフパフ鳴らしたくなってしまいます。
「ペパニカ」さんのブース
「ここを、会場内で迷子になった時の目印にされる方も結構いらっしゃいますね(笑)」と作家さん。子供から大人まで、音に惹かれてやってきた人がみんな笑顔になって見本(サンプル)を鳴らしている姿が印象的でした。
「週末百貨店」さんのブース
嬉しいことに、『紙博』ではおやつの販売もあります。缶やボックスなど、こだわりのイラストをまとった可愛いパッケージのお菓子は、お土産にぴったりです。レモンケーキに目がない筆者は「週末百貨店」さんの「週末シトロン」をお土産用&自分用に購入。ふーっと染み入る美味しさでした。
紙ってアートだ
「平岡瞳」さんのブース
『紙博』には巨大な文房具店のような側面もあれば、アートフェスティバルのような側面もあります。「平岡瞳」さんのブースには、心がしんと静かになるような美しい版画作品や、絵本が並んでいました。
「WHOSMiNG」さんのブース
これで4回目の参戦という、台湾のイラストレーター「WHOSMiNG」さん。絶妙に力の抜けた猫やコーヒーのイラストに惹かれて、似顔絵をお願いしてみることに。作家さんと直接交流できるチャンスに溢れているのも、フェスティバルならではの醍醐味です。取材で来たと話すと、カメラを持った姿でゆるく可愛く描いてくれました。
「手紙舎 雑貨店」の包装紙バイキング
さすが『紙博』、紙そのものの販売も盛んです。例えばこちらは目眩く「包装紙バイキング」。
「アワガミファクトリー」さんのブース
一方こちらは、様々な伝統和紙を販売する「アワガミファクトリー」さんのブース。店主さん曰く、凝ったデザインの和紙は自作の本の表紙にしたり、アイテム撮影のための背景として購入される方が多いのだそう。独特の陰影を持つ手漉き和紙は、抽象画にもよく似ています。それ自体をアートとして、額に入れて飾るのも大いにアリだな、としみじみ思うのでした。
みんな寄っといで! お楽しみ企画盛りだくさん
さてここから、『紙博』を盛り上げるお楽しみ企画についてご紹介していきます。結構たくさんあって、どれも「来てよかった」と思わせてくれる心憎い企画ばかり。運営さん、ありがとうございます。
「紙ものお裾分けっこ」のコーナー
その1【紙ものお裾分けっこ】
持参した自分の紙ものと、誰かの持ってきた紙ものを交換できるコーナー。交換用ラックに並ぶ包みはどれも丁寧にラッピングしてあり、持参者からの手書きメッセージが添えられていました。「私の好きな〇〇や△△を詰めました」「気に入っていただけたら嬉しいです」などなど。ここはモノの交換ではなく、物語の交換をする場所なのかもしれません。溢れる情趣に、不意をつかれて涙目です。次回来るときには、私も絶対に交換用の紙ものを持ってこよう! と心に決めました。
「はんこ押し放題スポット」
その2【はんこ押し放題スポット】
いつ見ても大賑わいだった「はんこ」の押し放題スポット、熱気がすごいです。手帳やノートを広げたはんこファンたちが、ぽんぽん軽やかにはんこを押しまくる姿は壮観。用意されたはんこは会場で売っているものや、これまでのイベントで使われてきたものだそう。こちらも、次こそはノート持参で私も押しまくろう、と心に決めました。
やっぱり「お手紙」って最強にエモーショナル
「cotori cotori」さんのラブレターポスト
その3【ラブレターポスト】
出展者のうち半数近くのブースには、ラブレター受付用の個性豊かなポストが設置されています。中の様子がちょっとわかる「cotori cotori」さんのポストを見て、想像以上にたくさんの手紙が入っていることに衝撃を受けました。もちろん作家さんの人気あってのことですが、やっぱりさすが『紙博』。想いを手紙で伝えることが好きな人が集まっているのだな、と実感です。今回素敵な作家さんたちと出会えたことだし、私も次は(以下略)
「紙博郵便局」のコーナー
その4【紙博郵便局】
会場内に、浅草郵便局の臨時出張所が登場。紙博オリジナルの消印で郵便を出すことができるスポットです。誰かの顔を思い浮かべて選んだポストカードを、その勢いのままに送れるって素敵です。しかも、消印のデザインは3日それぞれで違うのだとか。
「タイムカプセル郵便」に投函!
その5【タイムカプセル郵便】
こちらは投函したハガキがおよそ1年後(2025年3月15日ごろ)に届く、時をかける郵便ポストです。紙っていいな、想いを伝えるっていいな。『紙博』を通じてそんな気分が盛り上がったので、取材を終えた帰り際、専用ハガキを買ってこっそり未来の自分へ手紙を出しました。こういうのって、大人になるほど胸に染みるのはなぜなんでしょうね……。
「紙もの大賞」のコーナー
会場各フロアにいるスタンプさん
ほか、部門ごとにキラリと輝く一作を選んで投票する【紙もの大賞】や、会場各フロアにいるスタンプさん(はんこの被り物をしたスタッフさん)を見つけてはんこを押してもらうスタンプラリーなども。実に、来場した人をあの手この手でもてなそうとしてくれる祭典でした。せっかく訪れたなら、乗らねば損! ですよ。
古典インク作りに挑戦
「CRAFT INK LAB | 草木でつくる古典インク 」
さて、フェスティバルといったら体験も欠かせない楽しみです。数あるワークショップの中から、取材班は「TAG STATIONERY」さんのブースにて開催されていた「CRAFT INK LAB | 草木でつくる古典インク 」に挑戦してみました。天然の植物から抽出した染料をブレンドし、鉄イオンを加えてオリジナルのインクを作成します。
体験中!
用意されている天然素材は、柿渋(かきしぶ:講師さんの「要は腐った柿ジュースです」の言葉に軽く動揺する受講者たち)、五倍子(ごばいし:ウルシ科のヌルデの木にできた虫こぶ。「中は虫です」の言葉に再び動揺が走る)、ログウッド(木)の3種類。それぞれから抽出された染料は、微妙に色の方向性が違います。
天然染料に鉄を加えて色を出すのは“黒豆を煮るときに釘を入れる”“ナスの漬物にミョウバンを使う”なども同じ原理だそう。随分昔からある技術なんですね……と口にすると、「メソポタミア文明の頃から、楔形文字でこのレシピが残されています」と講師の先生。え……? 想定外のスケールに、つい絶句です。人の文明の始まりの頃から、紙とインクは情報を伝達するためのツールとして研究が重ねられてきたのかもしれません。
天然素材のインクは、蓋を開けると漢方薬のようなめんつゆのような、不思議な香り。
そして試筆を重ね、自分だけのベスト配合を追求。鉄イオンを加えれば、赤みと青みを兼ね備えた、プルーン汁のようなmyインクが完成です! そこでハタと気付きました。
あ、そういえば万年筆持ってない……
次回は万年筆やガラスペンを求める旅路になりそうです。
「紙博って楽しいー!!」
「カラフルな気球を飛ばそう!」のコーナー
5階会場内にあった「カラフルな気球を飛ばそう!」のコーナーでは、インク壺をモチーフにした気球のイラストに色を塗り、切り抜いて飾り付けにする、というプチイベントが。
「カラフルな気球を飛ばそう!」のコーナー
天井から下がった色とりどりの気球には、パッと見るだけでも「楽しい!」のメッセージが溢れていました。いや、その気持ちわかります。滞在およそ5時間、本当にあっという間でした。『紙博』は、何かを記し、伝えること。そしてそのためのツールをこよなく愛する人たちのお祭りでした。満たされたこの気持ちは、また次の言葉を紡ぐ原動力になります。
次回の『紙博』は京都にて、2024年8月10日(土)から12日(月)の開催。東京では9月6日(金)から8日(日)の予定です。きっと癖になる、紙博!

文・写真=小杉 美香

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