山崎育三郎率いるカンパニーが一丸と
なって届ける、笑いに満ちたハッピー
なミュージカル『トッツィー』会見&
ゲネプロレポート

1982年、ダスティン・ホフマン主演で公開された映画『トッツィー』。物語の舞台を現代のブロードウェイに置き換えたミュージカルコメディは2019年のトニー賞においてミュージカル部門最優秀脚本賞、主演男優賞をはじめとする11部門にノミネートされて高い評価を得た。一流の作家とクリエイターが作り上げた本作がついに日本初上陸を果たし、2024年1月の日生劇場を皮切りに約3ヶ月にわたって各地で上演される。
初日を前に、山崎育三郎、愛希れいか、昆夏美、金井勇太、岡田亮輔/おばたのお兄さん(Wキャスト)、エハラマサヒロ、羽場裕一、キムラ緑子による会見が行われた。
――まずは初日に向けた意気込みをお願いします。
山崎:今回はコメディ。稽古場で本読みをした時、演出のデイヴが、あまりみんなが笑っていないことにびっくりして「これは大丈夫か」と不安がるところからスタートしました。でも稽古場で「この作品はいける。絶対楽しんでもらえる」という確信を持って進んできました。お客様が入ってようやく完成する舞台なので、僕らが作ってきたものを皆様がどう受け止めてくださるのか楽しみです。
愛希:本当にみんなで意見を出し合いながらお稽古してきたので、私もお客様の反応が楽しみです。私自身は丁寧にやっていきたいなと思っています。
昆:稽古場でずっと笑っている作品は中々ありません。通し稽古を何回もやったんですが、何回見ても笑ってしまうくらい面白くて。面白いと思ったら反応していただけるとより楽しい、ある意味で参加型ミュージカルになっていると思いますので、ぜひ参加してください。
金井:とても楽しくて華やかなお話なので、早く皆さんに披露したいです。ここにいるプリンシパルも、ここにいないアンサンブルのみんなもとっても素敵なので、そこも楽しみにしていただけたら嬉しいです。
岡田:初日の幕が開くことにとてもワクワクしています。お客様も僕らと一緒に『トッツィー』を楽しんでいただけたら嬉しいです。
おばた:とにかく見てほしいと心の底から思う作品です。例えば小さい子や中高生が見た時に「こんな舞台に立ちたい」と憧れるような舞台だと思います。
エハラ:気合いが入りまくっております。皆さんにも声を出して笑って楽しんでほしい舞台です。
羽場:若い頃、ニューヨークのブロードウェイでミュージカルを見た時のスピード感や切れ味がこの舞台に満ち溢れていて、参加できるのがすごく嬉しいです。
キムラ:私も気合いが入っております。今年1本目のお芝居がこの作品で良かったと心から思っています。私自身、稽古でこのお芝居を見ていると本当に元気になる。この作品をご覧になった方々を元気に、幸せにできると思います。たくさんの方に見ていただきたいです。
――日本初演の作品ですが、初演の大変さはどこにありますか?
山崎:直訳だと伝わりづらい表現もたくさんあります。みんなで何回も話し合って、数えきれないほど台本も変わりました。ここに日本を代表する芸人もいますから……。
おばた・エハラ:いやいや、ミュージカル俳優です!
一同:(笑)。
山崎:お笑いはこう作っていくという講義もしていただいたので、滑ったらこの2人の責任です。
エハラ:違う違う! 台本は山崎育三郎監修です! 育三郎さんもお笑いがすごく好きなので、面白い部分のプロデュースもやってくれました。そのうちルミネに立ってるかもしれません。
おばた:育三郎さんがコメディ上手すぎて僕ら引いてます。本当に上手いので必見です。
――海外作品だと、中々セリフなどを変えられない印象があります。
山崎:そうなんです。でも、演出のデイヴも含めて何度もディスカッションをして、劇団のように一つひとつ組み立てました。
エハラ:すごくよかったのが、演出家さんが「これはどう思う? 面白い?」と聞いてくださって、僕らの意見をどんどん入れてくださること。
山崎:ニューヨークという設定は守りつつ、何も否定せず受け止めてくれました。
――女装姿についてはいかがでしょう。
山崎:どうですか?
一同:きれいです。
愛希:ドロシーと接する時間が長かったので、女友達のような感覚でした。
山崎:自然と距離が近くなりますよね。あとはガニ股でいられなかったり、手のしぐさも女性的になったり。気付かないうちにドロシーになっている瞬間があります。
岡田:普段よりさらに柔らかい雰囲気になってる気がする。
金井:男声と女声の使い分けで喉をすごく酷使するそうなので、どうでもいいことで話しかけないように気を付けました。仲良い役だからこそ気を遣って。
一同:優しい!
エハラ:僕はテンション上がっていつも以上に話しかけちゃった(笑)。
山崎:あと、早替えがとにかく多い。舞台裏を皆さんに見てほしいくらいです。スタッフさんがみんなでメイクやネイル、アクセサリーまで全部やってくださって。
――愛希さんや昆さんは普段なかなかない役柄ではないでしょうか。
愛希:いつもよりハジけた昆ちゃんが見られると思います。とってもキュートだしぶっ飛んでいて、「うわーっ」となっている姿にグッとくる瞬間があるんです。泣くような場面じゃないけど、サンディの必死さにうるっとくるような。
一同:わかる!
愛希:マックスもそうだけど、必死さがすごく素敵だなと思っています。
山崎:ここまで一人ひとりのキャラが立っている作品はなかなかない。みんながちゃんと魅力的です。
――敏腕プロデュー役のキムラさんがこのカンパニーを一言で表すならなんでしょう。
キムラ:愛に溢れたカンパニーです。キャラクターそれぞれが強烈に何か・誰かを愛していたり、一生懸命もがいていたり。エネルギーに満ち溢れています。
――最後に、山崎さんから皆さんへのメッセージをお願いします。
山崎:2024年の震災で被災された皆さんに、1日も早く心穏やかに過ごせる日々が来るよう祈っています。こういうことがあると、僕たちが初日を迎えることが当たり前ではないのを実感します。1回1回、本当にやり切ったと思えるよう演じます。『トッツィー』カンパニーとして日生劇場に募金箱を置かせていただき、少しでも寄り添えたらと思っています。この岡山県の大千穐楽までみんなで走り抜け、たくさんの愛とハッピーと笑いを皆さんに届けます。ぜひ最後まで応援してください。
>(NEXT)ゲネプロレポート&舞台写真
※以下、ゲネプロの写真とレポートあり。
冒頭から、オーケストラピットにいる指揮者が拍手を煽り、飛び跳ねながら指揮をして会場の空気をあたためる。これから始まるハッピーでポップな作品に対する期待がグッと高まったところで幕が開いた。
物語は俳優のマイケル・ドーシー(山崎育三郎)が大御所演出家のロン(エハラマサヒロ)と揉める場面からスタート。台本に書かれていない役の背景や設定まで作り込み、演出家やエージェントのスタン(羽場裕一)にも食ってかかる強気な俳優を、山崎はリアリティを持って演じる。性格に難ありな彼だが、女装して“ドロシー・マイケルズ”になると、そのハッキリした物言い、芝居へのこだわりが周囲にウケて人望を得てしまうのが面白い。
また、同居している親友で劇作家のジェフ(金井勇太)との息のあったやり取り、テンポの良い会話も楽しさ抜群だ。言いづらいこともきちんと伝え、あれこれアドバイスや忠告をするジェフの友情にグッとくる。ここにサンディ(昆夏美)が加わり、腐れ縁めいたやり取りを繰り広げるシーンもユーモラス。昆の暴れっぷりが素晴らしく、ネガティブな未来を想像しては嘆くサンディの突き抜けた面倒くささもチャーミングに感じた。
ドロシーと一緒に芝居を作るメンバーも魅力にあふれている。個性が際立つ“彼女”を抜擢した敏腕プロデューサー・リタ(キムラ緑子)は、パワフルな言動によって男社会でのし上がってきた女性の勢いと熱量を見せる。
愛希演じるジュリーは芯のある魅力的なヒロインだ。大御所演出家のアプローチにもなびかず、ドロシーとの友情を深める様子が微笑ましい。勝気な印象がピュアさを引き立てており、夢に向かって突き進む彼女を自然と応援したくなった。
ゲネプロで、ビジュアルと筋肉が強みで芝居は未熟な俳優・マックスを演じたのは岡田亮輔。登場からおバカな部分を遺憾なく発揮して笑わせつつ、ドロシーをまっすぐに慕う年下の愛らしさも見せる。
ドロシーと演出家・ロンのバトルも楽しい。ロンは横暴で嫌味な大御所だが、自らアンサンブルに振り付けを指導するなどユーモラスなシーンも。女性陣(ドロシー含む)に負かされる場面も多く、憎めない存在だ。
ドロシーとしての山崎はたおやかな所作や柔らかい歌声や表情が魅力的で、見ていてうっとりしてしまう。マックスが惚れ込むのも、ジュリーが友情を深めたくなるのも納得の個性ある素敵な女性だ。だが、マイケルがジュリーに惹かれ始めたことで、男性としての一面が覗くようになっていく。二人の距離の変化に対するドキドキと、いつ正体がバレるかというハラハラのバランスが絶妙で、ストーリーにのめりこむことができた。
また、さまざまなキャラクターを演じ、次々に移り変わるセット転換を担うアンサンブルキャストと、生演奏で作品を盛り上げるオーケストラの活躍にも注目したい。アンサンブルは街の人々、マイケルが女性になりきってオーディションを受けるシーンで登場するクリエイターや音楽家、カンパニーのメンバーなど、多くの役を通して作品に彩りを添えている。オーケストラによる1幕・2幕冒頭の演奏では聴きごたえ抜群のカッコいいソロもあり、テンションをグッと高めてくれる。ポップなデザインの美術や数多くの衣装も魅力的で、冒頭からラストまで見応え十分だった。
笑えるシーンと魅力的な楽曲がたっぷりありつつ、人と人との繋がりやジェンダーやに対するメッセージ性も感じられ、胸を打つ展開もある本作。1月10日(水)~1月30日(火)に東京・日生劇場で上演された後は、大阪・名古屋・福岡・岡山でも公演が行われる。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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