バウンダリー、Chevon、パーカーズ、
cherie、からあげ弁当が会場を揺らし
た熱き夜ーー『MUSIC DIVE #1 suppo
rted by SPICE』大阪編ライブレポー

『MUSIC DIVE #1 supported by SPICE』2023.11.09(THU)大阪・心斎橋Pangea
11月9日(木)、大阪・心斎橋Pangeaにて『MUSIC DIVE #1 supported by SPICE』が行われた。本公演は、コンサートを始めとしたイベント企画・制作を行う808株式会社が手がける新しいイベントツアー。11月6日(月)の仙台を皮切りに、8日(水)の名古屋、9日(木)の大阪を経て、16日(木)の東京編まで、全4都市で行われる。イベントを彩るのは、早耳のリスナーにはお馴染みのバンドから、新進気鋭のニューカマー、独自の音楽スタイルで成長し続けるライブバンドなど、実に多彩な顔ぶれ。「バンドとリスナー」「バンドとバンド」「リスナーとリスナー」を繋ぎ、まさに「MUSIC」に「DIVE」するイベントを目指しているという。大阪編の出演はChevon、パーカーズ、からあげ弁当、cherie、バウンダリーの5組。2021年前後に結成された同期バンドが多く、個性豊かでフレッシュな空間を作り上げてくれた。今回SPICEでは大阪編の模様をレポートしよう。
本イベントツアーには学割チケットが用意されていたため、会場の心斎橋Pangeaには、学校帰りのキッズたちも多く来場していた。会場BGMには若手インディーズバンドをはじめ、andymoriの「1984」、mol-74の「忘れたくない」などのロックチューンが流れ、口ずさみながら体を揺らす人の姿も見られた。ステージには『MUSIC DIVE』のバックドロップが飾られ、1組目のバンドの楽器が鎮座する。既に満員となったPangeaには、開演前から熱気がむんむんと立ち込めていた。
からあげ弁当
トップバッターは、2021年末結成、滋賀発の3ピースバンド・からあげ弁当。SEが流れると、リラックスしつつも気合いの入った表情で焼きそば(Vo.Gt)、春貴(Ba)、こーたろー(Dr)が登場。1曲目は焼きそばの弾き語りから始まる「ちくしょう」。少し粗さも感じるダイナミックなビートと、熱く叙情的なボーカルがエモーショナルな雰囲気を作り出す。挨拶代わりの1曲を終えると、焼きそばは笑顔を見せて「トップバッター、バチっとやります! からあげ弁当です、よろしくお願いします!」と元気に「美々」を投下。
しかし途中で焼きそばのギターにトラブルが発生。最初は困った表情を見せていたが、やがてニカッと笑い、潔くマイクスタンドを掴んで歌に全集中。リズム隊の演奏をバックに、叫ぶように1曲を歌い上げた。トラブル修復で焼きそばが不在の間は、春貴とこーたろーがセッションで場を繋ぐナイスチームプレーで絆を見せる。ステージに戻った焼きそばは「ばり悔しいー! 3ピースって1つ音が減るだけで完全にギターの音が止まっちゃうんすよ。それも生ライブならではやし、3ピースならではやと思うんで、この空間を楽しんでください」と、悔しさもエネルギーにして「チキン野郎」を爆発させる。
さらに先日バンド初のMVが公開された「街を走る」、ミドルテンポの「again」をエモーショナルに聴かせ、「大阪でしかない1本を大事に、最後までやり切ります」と、ライブハウス仕様にアレンジされた「乾杯をしよう」、歌に愛を込めた「Your song!!」、本日2度目の「チキン野郎」でラストスパート。トラブルも見事乗り越えて、全身全霊のステージを見せてくれた。12月6日には初のフルアルバム『I am hungry』を発売、来年1月からは東名阪で「満腹になれツアー」を開催。ますます勢いを増すからあげ弁当から目が離せない。
cherie
2番手は2021年10月に結成された名古屋のロックバンド・cherie。オアシスの「Champagne Supernova」をSEに1人ずつステージに現れ、柊平(Dr)の前に集まって気合いを入れる。「降り注げよ、ロマン!」のイントロがゆらり鳴り響くと、おざき れん(Gt.Vo)が「楽しむ準備はできてますか?」と声を掛ける。
歌声はハイトーンボイスながら、喋り声は低音。そのギャップに驚いているとサウンドが軽快に変化し、「いけんのー?ちょっと声出ししてもいいですか?」とシンガロングの練習をしたり「もっと上!」とクラップに高さを求めたり、積極的にコミュニケーションをとって距離を近づける。綺麗に頭上まで手が上がった様子を見たタクミ(Ba)は「気持ちいい!」と感動していた。1曲目からフロアを巻き込み、続く「繰言」では疾走感たっぷりに駆け抜ける。MCでおざきは「今日いつもより緊張してたんですけど、その分いつもより楽しいかもしれないです。盛り上がってくれてありがとう」と感謝を述べる。
さらに「僕は幸せです。もうちょい幸せになりたくて。皆で幸せ空間にして楽しくいきたいんですけど、幸せ空間作れんの!?」との煽りにフロアは全力で応え、「幸せ空間」の曲名通り多幸感でいっぱいに。かと思えば「幸せと災難」では雰囲気が一転、囁くようなおざきのハイトーンボーカルにセンチメンタルなりゅうた(Gt)のギターが絡みつく。cherieの楽曲は1曲の中に展開がふんだんに盛り込まれている。「恋はジレンマ」ではリズムパターンがどんどん変化。ラストチューン「貴方依存症」ではストップモーションやキメの連続が耳を喜ばせる。エアロスミスの「Walk This Way」のギターリフを入れ込んでいたのも遊び心があって面白かった。渾身の演奏を終えると、最後は全員で大きくジャンプ! 実に様々な表情を見せてくれた、充実の30分だった。
パーカーズ
折り返し地点で登場したのは2021年3月結成、東京発のパーカーズ。豊田賢一郎(Gt.Vo)、ねたろ(Gt.Cho)、ナオキ(Gt)、フカツ(Dr)からなるギター3本+ドラムという珍しい編成。サポートベースを迎えてステージに登場、ビートが放たれると同時に豊田が「POPS日本代表パーカーズです! 楽しむ準備はできてますかー! 超超超グッドな曲をお届けします!」と元気に叫び、「君が好き」を披露。ねたろとナオキの2人が前に飛び出し、賑やかな雰囲気で会場を飲み込んでいく。
続く「ハッピーをちょうだい」では軽快なサウンドに体を揺らしつつ、モニターの上に乗って後方のオーディエンスに手を振ったり、終盤は全員でコーラスをしたりと全員野球のように盛り上げる。MCでは豊田が来場者に感謝を述べ、「『MUSIC DIVE』誘ってくれてありがとうございます!」と改めて挨拶するが、フカツに「君、昨日ミュージック「デイブ」と言ってたよ」と暴露される。その流れで好きな英単語を披露することになったナオキは「Appleー!」と叫んでフロアを湧かせ、新曲の「お願い神様」へ。キャッチーなメロと歌詞で会場を満たし、間髪入れず「運命の人」を披露。3本のギターのアンサンブルはもちろん、フレーズを追いかけたりユニゾンしたりする、ねたろとナオキの手元を見ているだけでも楽しい。
そして最後は「中華で満腹」。高速ビートが叩き込まれ、一斉にフロアにタオルの花が咲く。中華料理を注文するパート(コール&レスポンス)では、「ずっとやりたいと言ってる子がいて」との紹介で、からあげ弁当の焼きそばが上半身裸で登場。「カレーライス! サーモン! アジのフライ!」と注文し、全員で「MUSIC DIVE」のコール&レスポンスをバッチリ決め、最高潮の盛り上がりでライブを終了した。なお、彼らは12月20日に2nd EP『心の中なら何度も言えるのにな』をリリース、来年1月5日(金)には『勇気と愛で世界を救うツアー』 で梅田Shangri-Laにカムバックする。
Chevon
前日の名古屋編に次いで、本ツアー2本目の登場となったのは、札幌を拠点に活動中のChevon。サウンドチェック後、サポートドラムが板付の状態でSEが流れ、Ktjm(Gt)、オオノタツヤ(Ba)、谷絹茉優(Vo)が順にステージに現れると大歓声が湧き熱量がぐんと上昇。谷絹はその熱に応えるように、いきなりフェイクを響かせて「No.4」でライブスタート。「北海道札幌から来ました!」と一言挨拶して歌い始めるや否や、見開いた目力の強さと一挙一動に潜むパワーに圧倒される。すさまじいカリスマ性だ。谷絹のパワフルな歌唱と色気、少しの闇を感じるステージングで、フロアはあっという間に釘付けに。
イントロから歓声が上がった「Banquet」では、スクリームも用いて気迫のステージを見せつける。歌い手としての活動歴がある谷絹。エフェクトをかけたような歌声を地でやっているのもすごいし、ハイとローを瞬時に切り替えるテクニックにも舌を巻いた。ほんの3曲で、ほぼ全員の手が上がっているのではと思うほどのハンズアップとシンガロングで、フロアを完全に掌握した。また、ここまで両手を大きく広げ歌っていた谷絹だが、「薄明光線」では体を小さく見せるような仕草で歌詞の孤独感を表現する。そして「久しぶりにやりますこの曲。大阪では初めてかも!」と沿えられた「只者」では、初見にも関わらず<オーオーオー>でフロアが大合唱。その様子を見た谷絹は笑顔を見せる。
早口ボーカルとKtjmのギターソロが炸裂した「antlion」を経て、最後は「光ってろ正義」。「大阪そんなもんじゃないでしょ! 最後声出せますか! かかってこいや大阪ー!!」と谷絹の煽りに床が揺れるほどのジャンプが発生、オオノとKtjmのプレイも熱を帯びる。MCなしで全7曲を駆け抜けたChevon。谷絹はステージ上でライブを見守っていたヤギのぬいぐるみを手に、投げキスをして去っていったが、鳴り止まぬ拍手とラブコールの多さで、その人気ぶりを実感させられた。今後の活躍が楽しみでならない。
バウンダリー
トリを飾るのは大阪の3人組ロックバンド・バウンダリー。2013年結成でこの日の出演者の中では最もキャリアが長いが、新進気鋭の関西を担う若手バンドだ。7月に1stフルアルバム『あしあと』をリリースし、10月末まで続く全国リリースツアーを終えたばかりの彼女たち。中道ゆき(Vo.Gt)は満面の笑みで「Chevonでアゲアゲのアゲアゲだと思うけど、ラストもっと加速させるつもりで来ました!」と高らかに叫び、勢いよく「ゆきさき」を投下。さくら(Dr.Cho)のパワフルな一打とアオキ(Ba.Cho)のグルーヴィなベースが体をビリビリと震わせる。3ピースとは思えぬ音圧だが、どこまでも抜ける中道のクリアな歌声が気持ち良い。中道は目尻を下げて「この空間幸せすぎるなあ。私たちも幸せの曲やろう」とcherieの楽曲をリファレンスに出して「でたらめ」を披露。
MCでは、学割チケットで来場しているヤングな子たちについて触れ「cherieの時に2人組の女の子が片手にドリンク持ちながら、2人片手を合わせて手拍子をしてたのよ。キュンキュンしちゃいました」と嬉しそうに破顔した。続けて「音楽に飛び込んで身を任せて、後はもう楽しむだけだと思います。ギターが鳴らなくなったって、その時に聴こえた歌にグッときたりして。ライブって、生きてるからこそハラハラもするし、心揺さぶられる。それがたまらなく好きだなと思います」と、からあげ弁当と同じ3ピースだからこそ感じられるライブの魅力を語り、「最初歌だけで届けてみたくなっちゃって。やってみてもいい?」と、メンバー全員のハーモニーから「足跡」を演奏。突然の提案にワクワクしたように笑顔を見せるさくら。3人は心底ライブが好きで楽しんでいるんだろうな、という瞬間が30分の間に何度もあり、その眩しさに思わず目を細めてしまった。
いよいよラスト2曲。中道はツアーでたくさんの愛をもらったと述べ、「愛をくれるからこうやって強くなれるし、ステージも立てちゃうんですよね。出会えて良かったと思ってもらえるように、ラブソングを」と「気まぐれ」を披露、ラストは「暗闇」で本編を締め括った。全力でかき鳴らすパワープレイの中にある繊細さが素敵だった。
やがてアンコールを求めるクラップに応え、先にさくらがカムバック。「アンコールしていいんですか!?ありがとうぜー!」と独特の言い回しで感謝を述べる。中道は「ミュージック「デイブ」ではなく『MUSIC DIVE』ですね。皆のおかげで最高な夜になったと思うんですけど、どうですか?」と、この日の出演者のエピソードに触れて繋がりを示しながら、最新アルバムから「あの言葉」を披露して爽やかにステージを後にした。『MUSIC DIVE』のコンセプトを体現したような、フレッシュなライブで魅了したバウンダリーだった。
こうして『MUSIC DIVE #1 supported by SPICE』大阪公演は大団円で終了した。ファイナル公演は11月16日(木)、東京・新代田 LIVE HOUSE FEVERで開催。出演者はパーカーズ、からあげ弁当、Laughing Hick、ガラクタの4組。ぜひこちらも足を運んで、新進気鋭の若手バンドたちに出会ってほしい。
取材・文=久保田瑛理 撮影=桃子

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