中井貴一が藤原丈一郎(なにわ男子)
にツッコミを要求! PARCO劇場開場
50周年シリーズ『月とシネマ2023』初
日前会見&ゲネプロレポート

PARCO劇場開場50周年シリーズ『月とシネマ2023』が、2023年11月6日(月)~28日(火)に東京・PARCO劇場、12月3日(日)~10日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。
本作は2021年4月に上演を予定していたがコロナ禍で中止となった作品で、今回はバージョンアップした『月とシネマ2023』として上演される。
初日に先立ち行われた会見と公開ゲネプロの様子をお伝えする。
初日前会見
会見には、出演者の中井貴一、藤原丈一郎(なにわ男子)、永作博美、村杉蝉之介、清水くるみ、木下政治、金子岳憲、奥田一平、たかお鷹、今井朋彦、作・演出のG2が登壇した。
まず登壇者全員に初日を迎えるにあたっての意気込みを尋ねると、G2は「前回(2021年の『月とシネマ』)がコロナで中止になって、今回は新しい血も混じって、違う形として練り上げた作品。いよいよお客さんに見せられるという実感がまだ自分にはわいてこない。ご覧のようにとても優秀な、世界に誇れる俳優が集まったカンパニーだと思うので、僕自身初日を楽しみに待っている」と述べた。
奥田一平
金子岳憲
木下政治
奥田は「この作品に参加できることに喜びを感じている。責任持って最後まで演じさせていただく」、金子は「前回からの皆さんの意思を引き継いでやっていきたい」、木下は「風通しのいい稽古場で、それぞれが通称で呼び合うということから始まり、とてもいい現場だった」とそれぞれ思いを述べた。
清水くるみ

村杉蝉之介
清水は「笑いあり涙ありのコメディで、稽古場でも笑いが絶えなかった。コメディ作品はお客さんが入って初めて完成するものだと思うので、(初日を)楽しみにしている。個人的には藤原くんの衣装がすごくお似合いのところがあって(笑)、シリアスなシーンだけど楽しい感じになったので、どういう反応が来るのか気になる」と、回想シーンで藤原が演じるある役の衣装について言及して登壇者たちの笑いを誘い、村杉は「僕は前回も参加していたが、皆さんご存じの通り“アレ”で“アレ”になってしまい(笑)、全公演できなくなった。今回初めてお客さんの前でできることがとても嬉しい。諸事情で僕が出演できないかもしれなかったが、結果的に前回と同じ役でまた呼んでいただいて、本当にGちゃん(G2)と貴一さん、丈くん(藤原)もありがとうございます。スケジュールの関係で皆さんより稽古日数が少なくてとても不安だが、今作を客席で見たら悔し泣きをしていたと思うので、(出演できて)本当に嬉しい」と感謝の言葉を述べた。
たかお鷹
今井朋彦
たかおは「映写技師のロクさん役で前回も出ていた。もう充分稽古したので、ただ淡々とやるだけ。それで伝わると思う」と稽古の手ごたえを感じている様子で話し、今井は「榊 哲哉という映画監督役。途中で敵役のように見えるかもしれないが、最終的にはG2さんの描くハートフルコメディの中に無事着地できるのではないかと思っている。一日中笑いが絶えないような楽しい稽古場だったので、その雰囲気をそのまま舞台に乗せられたら成功間違いなしだと思う」と稽古場の様子も交えて話した。
永作博美
永作は高山万智子役での出演だが「村上万智子です」と役名を言い間違え、登壇者から総ツッコミを受けて「課長(木下が演じる村上課長)の名前を言っちゃった」と照れ笑い。「今回から参加できて嬉しく思っている。G2さんの演出の下、それぞれが個人個人、そして全体で作っていく感じがあって、気持ちいい稽古場だなと思っていた。見終えた後、気分が軽くなって、うっすら顔が笑っちゃうような感じで帰れるような作品になっているので、楽しみにしてもらいたい」と笑顔で述べた。
藤原丈一郎(なにわ男子)
藤原は「僕の演じる小暮涼太は映画会社の宣伝部の若手社員で、要所要所でかき回すアクセントになっている役だと思う。中井貴一さんとの掛け合いも見どころなので楽しみにしていただきたい。2021年の『月とシネマ』以来、こうしてPARCO劇場で初日を迎えられるということが、本当に嬉しい。昨日は関西がすごく“アレ”で盛り上がっているので(笑)、“アレ”に負けないように、今日から11月・12月は『月とシネマ2023』を盛り上げられたらと思う」と、前日行われたプロ野球日本シリーズに言及して会場を沸かせた。
中井貴一
中井は開口一番「なにわ男子の中井貴一です」と会場の爆笑をさらい、藤原が「違います、っていうのもちょっと言いづらいんですけど(笑)」と中井に言うと、中井は「言うてくれなあかんやん、言うてほしい」とツッコミを要求。これには藤原も「そうですね(笑)」と大笑い。和やかな雰囲気の中、中井は「皆さん(2021年の『月とシネマ』のことを)「前回」と言うが、お客さんは誰も見ていないので、今回がほぼ初ということになると思う。2年前、僕たちの直前に上演予定だった作品がコロナで中止になって、ここの場所(PARCO劇場)で1か月稽古をして、舞台上にセットが立って、いざ本番というときに緊急事態宣言で中止になってしまった。そのときに、芝居に一番大切なのはお客さんなんだ、ということがわかった。お客さんがいてくださることによって芝居というのは成熟し進歩をしていくので、今日初めてお客様と相対することになって、どんな反応になるのかちょっと心配だが、全員で最後までケガのないように、お客様に夢を配れるように頑張っていきたいと思う」と今作にかける思いを語った。
G2
今作が、2021年に上演予定だった『月とシネマ』ではなく、バージョンアップした『月とシネマ2023』として上演されることについてG2は「中井さんから、『月とシネマ』は誰にも見せていないがもう稽古をやり切ったので、何か違う新しいチャレンジをしたい、というお話しをいただいた。登場人物を増やして練る中でキャスティングが決まり、本当にユニークかつ優秀な、自分の世界を持っている人が集まってくださったので、いい意味で稽古中にどんどん役が僕の手元から離れて、その人のものになっていった。(観客が)笑ったけどなんで笑ったかわからない、感動したけど何で感動したのかわからない、みたいな感想を抱いてくれたら嬉しいなと思っている」と思いを述べた。
どのような気持ちで稽古に臨んだのかを尋ねられると藤原は「やっぱり(2年前の)悔しさもあったが、その悔しさをバネに今作は無事に完走できたら、という思いが今は強い。今作の本読みで中井貴一さんに挨拶に行ったとき、「おお、久しぶり!」と言われるかと思ったら「初めまして中井貴一です」と言われて、ちょっと待ってくださいよ、あれだけ2年前一緒にやったじゃないですか、と(笑)」と稽古初日のエピソードを披露。すると中井も「(藤原を示して)ガラガラ声で来たんですよ。ひとりだけ声が出てないという最悪な稽古初日を迎え、そこから徐々に回復をし、やっと本日に至った」と応酬。藤原は「ちょうどライブツアー中で、そこで声を枯らしてしまった」と苦笑いを浮かべた。
中井は「2年前は藤原くんがデビュー前で、「丈のためにも、もういっぺんやるか」という話になった後でこんなに有名になると思わなかった」とこの2年間の藤原の活躍ぶりに言及。「(2年間で)一番状況が変わったのは藤原丈一郎くん。彼が役者としてこの後やっていくベースみたいなものが作れたらいいなと思いながら(稽古を)やってきた」と、藤原への思いを述べた。
最後にメッセージを求められると中井は「この企画は2年前、コロナ禍でみんなの心がふさいでいるときに、どういうものを見たら心が和やかになるんだろうということを中心に考えた。今コロナが落ち着いて、お客様がどのように感じるのか非常に不安な状態でいるが、嫌なことを忘れられる時間を過ごしてもらえたらいいなと思っている」と述べ、最後に「藤原くんの成長ぶりというんでしょうか、本人も自分で「成長したよ」と言っている」と再び藤原に言及すると、藤原は恥ずかしそうに中井の肩にもたれかかりながら笑い、中井が「そこも楽しみにお客様に来ていただきたいね」と藤原に語りかけると、藤原は「はい!」と元気よく答えた。
公開ゲネプロ
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『月とシネマ2023』舞台写真
とある映画館「ムーンシネマ」は館長が亡くなって閉館の危機。館長の息子で映画プロデューサーの並木憲次(中井)は父と絶縁状態だった。映画館を売ろうとする並木に、映画会社宣伝部社員の小暮涼太(藤原)、市役所の職員で映画館のボランティアスタッフの朝倉瑞帆(清水くるみ)、映写技師で「ロクさん」と呼ばれている黒川庄三(たかお鷹)は猛反対。そこに並木の元妻でフリーライターの高山万智子(永作博美)が現れて……。
今作は2021年に『月とシネマ』の企画がスタートしたときから、“観た人に温かい気持ちになってほしい”という想いが込められていたという。個性的なキャラクターと、テンポよく進むストーリー運びからもその思いがうかがえる。映画館「ムーンシネマ」は閉館の危機を乗り越えられるのか、というストーリーを軸に、過去に並木と父親が絶縁した理由、並木と映画監督の榊 哲哉(今井)が仲違いをした理由、並木と妻が別れた理由などが次々に明らかになっていき、すべての出来事が「ムーンシネマ」に集約されていく。
G2が会見で、稽古を重ねるにつれ「役がどんどん僕の手元から離れていった」と述べていたように、登場人物とそれを演じる俳優の個性が交じり合って唯一無二のキャラクターが生まれている。屈折した思いを抱えて頑固だが愛情深さをのぞかせる並木、一見頼りなさそうだが自分の思いにまっすぐな小暮、飄々としてつかみどころがなさそうだが強い信念を持つ万智子、と人物像が豊かに舞台上に立ち上がり、物語をよりカラフルに彩っている。
並木をはじめとする「ムーンシネマ」に引き寄せられる人々は、共通して映画への愛を持っている。彼らは映画愛で繋がっていくのだが、その姿が現実とオーバーラップして見えた。今作のキャスト・スタッフはこの作品への愛、演劇への愛でここPARCO劇場に集まった人たちだ。映画館の閉館を食い止めようとする登場人物は、公演中止を乗り越えてもう一度この作品を立ち上げたカンパニーの人々を映しているように思えた。コロナ禍で演劇などの舞台芸術は公演が行えない状況を何度も経験した。それでも「また舞台を上演したい」という「愛」は消えることなく、人々を繋げてこうして劇場に集約され、今作が上演された。
そうしたテーマやメッセージを声高に掲げている作品では決してない。目の前に繰り広げられているコメディをただ心のままに楽しむうちに、観客一人ひとりの心の中には、きっとそれぞれの思いが去来するのではないだろうか。ここにあるのは、何かへの「愛」を抱いた人たちの想いの結晶だ。
取材・文・撮影=久田絢子

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