sasakure.UK「トゥイーボックスの人形劇場」歌詞の意味を考察!戦争と平和を歌うポップソング?

sasakure.UK「トゥイーボックスの人形劇場」歌詞の意味を考察!戦争と平和を歌うポップソング?

sasakure.UK「トゥイーボックスの人
形劇場」歌詞の意味を考察!戦争と平
和を歌うポップソング?

多くの考察が飛び交う「戦争」の歌?

『*ハロー、プラネット。』や『トンデモワンダーズ』など、ミリオン級のボカロ曲を数多く世に送り出しているボカロP・sasakure.UK
ストーリー性とメッセージ性を兼ね備えた寓話のような歌詞、精密かつポップな心地よいサウンドが魅力の大人気音楽クリエイターです。
今回考察する『トゥイーボックスの人形劇場 feat. 初音ミク』は、そんな sasakure.UK が2013年5月にリリースした1曲。
ドット絵で展開されるゲーム画面のようなMVも人気で、その再生回数は450万回を突破しています(10月10日現在)。
▲sasakure.UK-トゥイーボックスの人形劇場 feat. 初音ミク【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
また、この楽曲には「戦争」を想起させる単語が散りばめられ、MVのコメント欄などには多くの考察が飛び交っているようです。
10年前の曲ではありますが、戦争や侵攻が大きく報道されるたびにこの曲を思い出すリスナーも多いのかもしれません。
そんなポップながら神妙な雰囲気を漂わせる『トゥイーボックスの人形劇場』。
その歌詞には、果たしてどのような意味が見出せるのでしょうか。
人形で遊ぶ子供たちの空想劇
まずは1番の歌詞から見ていきましょう。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
おもちゃが並ぶここの歌詞は、幼い子供が人形で遊んでいる様子だと解釈できそうです。
「ミセカケ未満」は、積み木や人形で構成される、はたから見るとリアリティーのない人形劇の舞台のことだと考えられます。
しかしその世界は子供にとっては「ホンモノ以上」。
豊かな想像力によって自分にしか見えない克明な世界が広がっているわけです。
「発条(ぜんまい)止めて 邪魔しないで!」は、想像力を働かせない空っぽの頭で遊びの邪魔をしないで!という大人へのメッセージのようにも読めますね。
そんな純粋無垢な人形劇場。
ビーズが鳴るおもちゃの音を合図に、はじまりはじまりです。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
「ShootingStar」は流星という意味ですが、あるジェット戦闘機の愛称としても知られています。
後者の意味で考えると、たくさん詰めた物は弾丸やミサイルなのかもしれません。
また「ヒツジの角」は排気管の形を表す比喩としても知られており、「ヒツジの角を回せ」はエンジンの回転が上がっていく飛行機をあおっている様子だと推測できます。
そんな殺伐としたシーンをキャッチーに言い換え、子供の想像力のたくましさを表しているのでしょうか。
次の歌詞も見てみましょう。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
「Let me see」は「えっと…」のように自分自身で物事を考えるときの言葉ですね。
そして「名前を付けて たからばこ あけて」は、物や人形に名前を与えた「自分だけの世界(=たからばこ)」を周りの子供たちに開放するようなイメージができます。
自分自身で考えた「LetMeSee」な世界を共有するのは、続くサビの「Let’s 〜 (一緒に〜しよう)」につながる大切な一歩だといえそうです。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
以後、何度も繰り返される「Let’s pop Twee pop go-merry-go-round」。
pop Twee pop を「気取ったポップ(すまし顔で遊んでいるような人)をひっぱたく」、go-merry-go-round を「回転遊具で遊ぶ」のように解釈すると、このフレーズは「気取った感じはやめて一緒に遊ぼうよ」といった意訳ができそうです。
そして「タイガー」は戦車の名前でもあるので、「わたあみタイガー」は “あみぐるみ” のトラに戦車を投影しているのかもしれません。
また「ガラスのうさぎ」からは綺麗なうさぎの置き物やフィギュアがイメージできますが、この言葉は空襲で家族を失った戦争体験を描くノンフィクション文学(高木敏子著)のタイトルです。
「動物」と「戦争」のリンクが色濃く読み取れる1番。
「タイガー」も「うさぎ」も尻尾を垂らすというのは、攻撃した側も被害を受けた側も互いに警戒を解くという読み方ができそうです。
そうすることで世界中の誰もが「踊れば良い」、そして「笑えば良い」。
平和への強い願いが伝わってきます。
大人が求める“meta”、忘れ去られた「POP」
続いて、2番の歌詞を見ていきましょう。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
「パーティを開く 秘密の言葉」は、おそらく例の「Let’s pop Twee pop…」の英語部分のことでしょう。
子供時代は誰にでもあるものです。
しかし大人になるにつれ、そのときは当たり前だった思いやりや共有の精神が薄れていってしまう。
そんな成長のマイナス面は、誰しも理解できる部分があるのではないでしょうか。
昔は「お菓子な(sweet=優しい)顔して」同じ空間で遊べていたはずなのに…そんな嘆きが読み取れる歌詞ですね。
続きも見ていきましょう。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
大人になると求め過ぎるようになる「“meta”」。
「meta」は「高次の」のように訳され、一歩引いて物事を見るようなイメージの言葉です。
よってここでの「meta」は、人形劇の外側にある “リアル” を見ること(=現実主義)を表していると考察できます。
冷めた態度で傍観するより、ポップに関わり合い、笑い合う。
そんな純粋で不可侵な「POP」を忘れた大人は、子供たちからするとゼンマイが止まった人形のように見えるのかもしれません。
「おとな」たちが忘れた「“meta”の無いこの言葉」は、きっと次のサビでも繰り返される例のフレーズのことなのでしょう。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
澄ました空気を破って一緒に遊ぶ精神があれば、身分や階級による差別もなくなりそうです。
「ひねくれ王子も ワガママプリンセスも」からは、ルイ16世とマリー・アントワネットのような革命や暴動のイメージがある高貴な人物が連想されます。
また身分や階級は、使用する言葉にも表れるものです。
市民にとっては難しい言葉で、上流と見なされた者が世界を動かす。
「鋭い牙を向けないで頂戴」からは、尻尾を立てて威嚇し合うことへの拒絶感や、被害を受けるのはいつも罪のない大衆であるという悲しい実状などを感じ取ることができます。
人形で遊ぶ無邪気な子供たちのように、ただただ笑い合える平和なひととき。
いつまでもそのような時間が続けば、こんなに幸せなことはありません。
平和への願いか「ゼンマイ」の停止か
ここからは終盤のサビを考察していきます。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
前半部分は、歴史上の偉人たちのあやまちに関する描写でしょうか。
人間味のある「お菓子な顔」ではない「オモチャみたいな顔」というフレーズからは、量産型で無機質な印象を受けますね。
固まった表情で目の前の現実を「人形劇」のように扱い、その “劇” を動かすので精一杯で自身を客観視できなかった人々。
そうして戦争や暴動に油を注いだ彼らは、ただ「“meta”」的な視点を持てずに「遊んでただけ」なのかもしれません。
少しゾッとする言い分ですが、歌詞はまた「笑えば良いじゃないか いつまでも」へと帰結します。
考え方やルーツが違っても、互いを認め合い、笑い合えばいい。
それはきっと、遊びに夢中になって頭をごっつんこした子供たちが「えへへ」と笑って仲直りするような爽やかな理想なのでしょう。
続く最後の歌詞はこちらです。
トゥイー・ボックスの人形劇場 歌詞 「sasakure.UK feat. 初音ミク」
https://utaten.com/lyric/iz16082449
紀元前のトロイア戦争で使われたとされる「トロイの木馬」は、敵地に侵入するための馬形の巨大装置のこと。
そして「キズネコトム」は、傷だらけになった「トムキャット(戦闘機の名前)」を表していると推測できます。
「タイガー」や「うさぎ」と同様、これらの “動物” も「踊れば良いじゃないか」。
せっかくの技術なら、戦争や悲劇の象徴としてではなく平和で愉快な暮らしのために生かせばいいといったニュアンスでしょうか。
続く「ミサイルなんて向けないで頂戴」には、戦争反対の意がかなり直接的に表されていますね。
最後の最後で比喩がなくなって同じ言葉が繰り返されているのは、それだけストレートに「平和を求めている」と伝えたいからだと推察できます。
あるいは、曲中の「人形劇」に没頭した主人公の「ゼンマイ」もまた止まり始めたのかもしれません。
そう考えると風刺的なラストですね。
互いに認め合い、笑い合える世界
今回は、sasakure.UK『トゥイーボックスの人形劇場 feat. 初音ミク』の歌詞の意味を考察しました。
キャッチーなメロディーとは裏腹に、心がざわつくような言葉遊びや比喩表現がふんだんに盛り込まれた歌詞でしたね。
戦争をイメージさせるフレーズも多く、どれだけ考えてもまだ深い意味がありそうで不思議な感覚になります。
頭の「ゼンマイ」を回し続けて、現実主義におぼれないこと。
気取らずフランクに互いを認め合い、笑い合える世界を目指すこと。
sasakure.UKの「人形劇」から学びを得ようとする試みは、これらの大きな目標を達成するための第一歩にもなりそうですね。

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