豪華コラボも実現、くるり、サウシー
、sumika、坂本真綾、角野隼斗、Tig
ran Hamasyan、秦 基博が共演『京都
音楽博覧会2023』2日目オフィシャル
レポート

『京都音楽博覧会2023』2023.10.08(SUN)梅小路公園 芝生広場
くるり主催の音楽イベント『京都音楽博覧会2023 in 梅小路公園』の初日公演が、本日10月8日(日)・9日(月祝)に京都・梅小路公園 芝生広場で開催された。
『京都音楽博覧会』は、京都市の中心部に位置する梅小路公園を舞台に、2007年より毎年開催しているくるり主催のイベント。国内外問わず数多くのアーティストを招致し、良質な音楽をお届けするのはもちろんのこと、“環境・文化・音楽”をコンセプトに、くるりのメンバーが厳選した京都のお店を紹介する“音博マーケット”が出店されたり、昨年は梅小路公園にコンポストを設置し、フードエリアで出る食材の使い残しや食べ残しを堆肥に変える取り組みとして“資源がくるりプロジェクト”が実施されたりと、秋の風情を感じつつ、様々な文化の発信・交流点となる一大イベントとして定着している。
そんな歴史を辿る京都音博が、17回目となる今年、初の2daysで開催。その2日目のオフィシャルレポートが到着した。
開会宣言
曇天ながら、雨に降られることなく迎えた2日目。開場を待ち構える人・人・人の前にやってきたのはFM COCOLO DJの野村雅夫だ。「昨日は雨の一日でしたが、今日は降ってません!」の声に湧く。本日のラインナップを紹介すると、ステージに呼び込んだのはくるりの岸田繁(Vo.G)と佐藤征史(B.Vo)だ。「今日出てもらうみなさんは音博初出演です。みなさんと一緒に楽しみたいです(岸田)」、「2日目のカレーぐらいコクのある1日にできたらいいなと思います(佐藤)」とくるりらしすぎるやりとりを見せ、いよいよ初めての『音博』2日目がスタートとなった。
秦 基博
2日目のトップを飾ったのは、秦 基博。1曲目となったのは、キーボードで奏でられた前奏に会場からため息が漏れた「鱗(うろこ)」だ。柔らかなアコースティックギターの音、澄み切った伸びやかな高音。いい風が吹いてきた。「2日目トップバッターということで元気ハツラツにいきたいと思ってます」と披露したのは、関西が舞台となったNHKの朝ドラ『おちょやん』の主題歌の「泣き笑いのエピソード」。日本の朝に元気を届けた歌から、老若男女みんなが口ずさめる「ひまわりの約束」へ国民的ソングが続く。
秦 基博
ゆったりとしたテンポでひとつひとつ噛み締めるように言葉を放つと、梅小路公園を優しい空気が包み込み気持ち良い時間が流れていく。そこからは秦流のポップネスが溢れる「Life is Art !」、「二十歳の頃くるりの『図鑑』をめちゃめちゃ聞いていた。」とのエピソードを挟み、アコースティックからバンドサウンドへとグラデーションを描いて曲が厚みを増した「メトロ・フィルム」、壮大なサウンドに歌声が乗り、空へと広がっていったラストソング「イカロス」まで全6曲。トップバッターと呼ぶにふさわしい、どこまでも柔らかなステージだった。
秦 基博
Saucy Dog
日本のポップスにおける永遠のお題にSaucy Dogが挑んだ「東京」。くるりにも言わずと知れた最高峰のそれがあるが、切々と積み重なる感情をしたためたそんな一曲からゆっくりと幕を開け、一転、爆発力のあるイントロから流れ込んだ「メトロノウム」も、今まさに充実期を迎えているバンドのみずみずしさが満開だ。「『京都音博』初めまして! 出演できて本当にうれしいです。鳴らせ~!」と石原慎也(Vo.Gt)がコールすると、秋澤和貴(Ba.Cho)のベースがうなりを上げ「雷に打たれて」に突入。せと ゆいか(Dr,cho)のドラミングもろとも躍動感たっぷりに魅せていく。
Saucy Dog
「現在を生きるのだ。」でも、梅小路公園に広がるシンガロングが何とも感動的に響く。「四季を、日本を強く感じられる京都がとても好きです。最高の気持ちでここに立ってます」と石原。クライマックスは、一筋の希望のメッセージを託した「怪物たちよ」、抑制されたビートに美しいコーラスワークが溶け合う「優しさに溢れた世界で」。若手バンド随一の存在感&親近感で魅了した、Saucy Dogの記念すべき『音博』初舞台となった。
Saucy Dog
Saucy Dog
sumika
「僕には目標がありました。いつかくるりに呼ばれてみたい。今日は全身全霊でやります」。
これまでもくるり愛を公言してきた片岡健太(Vo.Gt)の夢がうsumikaの舞台が、ファイティングポーズをとり続けるバンドの姿勢を歌った「祝祭」で始まった。勇ましい表情で演奏する姿は常に挑み続け、ここまで辿り着いた気合いの表れだ。一転ハッピーチューン「Lovers」へと切り替わり、ようやく片岡にも笑顔が表れる。
sumika
そして小川貴之(Key.Cho)が「京都音博、お手を拝借!」とハンドクラップを促すと、荒井智之(Dr.Cho)の軽快なドラミングも気持ちよさを加速させる「1.2.3..4.5.6」、さらにアップテンポな「ふっかつのじゅもん」で会場の温度をググッと上げるまで、文字通り“怒涛”の4曲。そしていつよりも今日、最高にかっこいいライブをして帰りたいと宣言した彼らのネクストソングとなったのは、夢へと突き進む力を歌った「センス・オブ・ワンダー」。
sumika
この曲を歌い切ると大きな拍手が起こったことは記しておきたい。その後アイリッシュ音楽を取り入れ小気味よく踊る人が続出した「Lamp」、会場中から彼らへと歌声が届けられた「Starting Over」まで、グッと力のこもったsumikaの夢のステージだった。
sumika
坂本真綾
歌手、声優、女優など多方面で活動し、その透明感のある歌声で日本のみならず世界中のファンから支持される坂本真綾が、『京都音博』に初出演。初っぱなのジャジーな「宇宙の記憶」から軽快なリズム上に舞うボーカルが最高に心地良く、「もし歌っているときにパラパラきたら全部私のせいです(笑)」と空模様をうかがうMCでも場を沸かせる。
坂本真綾
その後も、川谷絵音が作詞作曲を手掛けたきらめく「ユーランゴブレット」や、不穏なメロディがジェットコースターのように突き進む「逆光」と、名うてのミュージシャンを従え攻めのセットリストを披露したかと思えば、「SAVED.」「Remedy」とはかなくも優しい極上のミドルバラードを連発。人気アニメ『カードキャプターさくら』のオープニングテーマとして時代を彩った「プラチナ」では、満場のクラップが巻き起こる。
坂本真綾、岸田繁
ラストは、くるりの岸田繁が作・編曲を担当した「菫(すみれ)」を。「まさか同じステージに立てる日が来るとは夢にも思わなかった」と感無量の彼女と岸田の共演は、今年の『音博』の紛れもないハイライトとなった。
坂本真綾、岸田繁
Tigran Hamasyan “StandArt”
Tigran Hamasyan “StandArt”
これぞ音楽の博覧会――。くるりが熱烈なファンだと公言し出演を果たしたのは、ジャズピアニスト/作曲家のティグラン・ハマシアン。ステージに現れてティグランの紹介を行った佐藤も「1人『音博』みたいな人ですよね。念願叶って彼の出演が実現しました」と誇らしげだ。関西では初のトリオ公演となった音博ステージは、その独創的な解釈も話題を呼んだアメリカン・スタンダードのカヴァー曲集『StandArt』を中心にした構成だ。
Tigran Hamasyan “StandArt”
1曲目となったのは、1944年にデイヴィッド・ラクシンが発表したジャズのスタンダード「Laura」。グランドピアノから繊細な音が流れ出した途端、周囲の空気がピシリと研ぎ澄まされた。頭を軽く揺らし鍵盤と対峙するティグランに対し、見守るオーディエンスは演奏に釘付けとなっている。そして1939年に公開されたミュージカルのための楽曲「I Didn't Know What Time It Was」が奏でられる頃には夜の帳が下り始める。披露されたのは4曲。グランドピアノの音色が先導し、トリオが生み出すうねりのような上質なグルーヴに身を委ねる、恐ろしく貴重な時間となった。
Tigran Hamasyan “StandArt”
角野隼斗
角野隼斗
初出演ぞろいの2日目の『京都音博』、トリ前はCateen(かてぃん)名義のYouTubeでも話題のピアニスト、角野隼斗だ。昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL’ 22』でも観客をくぎ付けにしたショパンの「英雄ポロネーズ」をあいさつ代わりに奏で、「このステージに立てることをうれしく思っています。きっと正解なんてないので、踊るもよし、リラックスするもよし、自由に楽しんでください」と告げ、自らのオリジナル曲のゾーンへ。
角野隼斗
愛猫のために書いたという「大猫のワルツ」、きめ細やかかつダイナミックに鍵盤上を走る「胎動」と変幻自在に聴かせ、たゆたう調べに心奪われる「追憶」からの即興~バッハの大胆なリアレンジなど、いつ何が飛び出すか分からないパフォーマンスには一時も目が離せない。
角野隼斗
最後は角野が「大尊敬するミュージシャン、岸田繁さん!」と呼び込み、岸田も「お客さんぐらい楽しんでます(笑)。『音博』やってて良かった!」とほほ笑む。角野の好きな曲であるくるりの「JUBILEE」では豪華コラボが実現し、気品と情感溢れる旋律が『京都音博』にかつてない刺激と興奮をもたらした。
角野隼斗、岸田繁
岸田繁、角野隼斗
くるり
くるり
時刻は18時をまわり、初めての2デイズ開催となった『音博』2日目はついにトリを飾る、くるりへとバトンが渡された。岸田繁(Vo.G)と佐藤征史(B.Vo)、そして石若駿(Dr)、松本大樹(Gt)、野崎泰弘(Key)、加藤哉子(Cho)により、「琥珀色の街、上海蟹の朝」でラストステージは始まった。
くるり
くるり
そしてそこにいた人々全員の、次は何の曲かという高まる期待に応えるかのように演奏されたのは「ブレーメン」。2006年にウィーンにてオーケストラを導入してレコーディングされた、アルバム「ワルツを踊れ」の代表曲が、この日はバンドのみのアレンジによりグッとソリッドな雰囲気を持って響いてくる。
それに続いた「潮風のアリア」では、旅の情感を約7分にも及ぶ壮大なメロディとリズムで魅せるなど、くるりにしか奏でることのできない音の凄みをまざまざと感じさせてくれる。

くるり
くるり

「ここでもっくんこと、森信行(Dr)をお迎えしたいと思います!」と岸田の呼び込みと共に、くるりオリジナルメンバーである森信行が登場。3人で制作が行われたニューアルバム『感覚は道標』から「In Your Life」、「California coconuts」、そしてツインドラムとなる7人編成で「世界はこのまま変わらない」を披露。ステージを眺めながら、くるりがどこまでも格好良く、見惚れるしかないと驚かされる。バンジョーの音が響き、演奏されたのは名曲「リバー」。曲のリズムに合わせて、周りから溢れる手拍子が、会場の隅から隅まで響き渡る幸福な景色を作り出していた。
くるり
くるり
「初めて2日間やりましたが、音博っぽくなったのではないでしょうか(佐藤)」、「初の2日間で供給過剰なのか、胸がいっぱいです(岸田)」と笑った後のアンコール曲はもちろん全ての人が心待ちにしていたであろう「宿はなし」。2日間の壮大な音楽の博覧会は、あなたに何を残しただろうか。また来年もこの梅小路公園で、新しい音楽に出会えることを楽しみに。
くるりの2日目公演のセットリストプレイリストが公開中。また、「Quruli Video」では、『愛の太陽EP』発売記念ツアーの東京・昭和女子大学人見記念講堂公演の映像Part1とPart2や、「京都音楽博覧会2023」の即出し映像がレンタル配信販売されている。
くるり

くるり
くるり

くるり
取材・文=桃井麻依子(開会宣言、秦 基博、sumika、Tigran Hamasyan “StandArt”、くるり)、奥“ボウイ”昌史(Saucy Dog、坂本真綾、角野隼斗) 撮影=井上嘉和

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