【Wienners インタビュー】
人生ってなるようになるし、
なるようにしかならない
昨年のアルバム『TREASURE』から約1年振りとなるリリースはTVアニメ『逃走中 グレートミッション』のエンディング主題歌「TOP SPEED」。玉屋2060%(Vo&Gu)が思いのままを書き殴ったパーソナルな歌詞を、爆裂8ビートで疾走させるわずか1分ちょっとの楽曲だ。だが、時間は短いがその中に彼らの今と未来が詰まっている。このシングルのタイミングで発表になったKOZO(Dr)の脱退は残念だが、Wiennersは今なお絶好調のまま、走り続けていく。そんなバンドの現状を玉屋2060%に語ってもらった。
“今日が一番いい”を
ずっと更新している
約1年振りのリリースとなりますが、Wiennersの現在の調子はどうですか?
絶好調ですね。“今日が一番いい”を昨年アルバムを出してからずっと更新している感じはめっちゃある。“絶好調!”としか言いようがない、
その要因は?
今までかかわってこなかったバンドたちとかかわることによっての刺激とか、単純にでかいステージを前よりも経験することが多くなったとか、そういうところで揉まれたというか。昨年のツアーでも強者たちを呼んで、そこで毎回“こいつと戦うのか!?”みたいなことをやってきたことがちょっとずつ筋肉になってきている感じがします。
それはもともとWiennersとして持ってたものがよりブラッシュアップされたってこと? それとも新しい武器を見つけた感覚が近いんですか?
言っちゃうと両方というか、Wiennersっていう弾丸はもともとあったんですけど、その弾丸を詰めるめっちゃいいロケットランチャーを見つけたみたいな感じですね。弾丸だけだったら“手で投げたところで…”っていうのもあるんだけど、これをめっちゃ強力にしてくれる武器をちょっとずつ手に入れている感覚というのが一番しっくりくるかな? どんどん視野が広がっていて、そうなると自然と自分たちが発信する際により広い発信の仕方になってくる…そんな感じはありますね。
今回の「TOP SPEED」はめちゃくちゃ短いし、必殺技をドカン!と撃っておしまい…みたいな曲じゃないですか。“これで勝負できるぞ!”っていうモードになっているのはすごく健全なことだと思いました。
確かに上乗せしないっていうか、素材勝負みたいなところがある。それはずっとやりたかったことではあるけど、怖くてできなかったみたいな。こういう曲は今までもあったんですが、ここまでストレートなのはなかったので、本当にそれぐらいの筋力がついたんだなっていうのはありますね。本当はこれ、60秒で終わりたかったんですよ。
1分20秒くらいの曲だけど、もっと短くてもいいと思っていたんだ!?
本当はそれで終わろうと思って作っていたんだけど、言いたいことがあふれていたぶんの20秒ぐらいが加わってこうなりました。
具体的にはどういうふうにできていったんですか?
この曲の大まかなアイディアみたいなのは、ずっとストックの中のひとつとしてあったんですよ。自分が最近“さよなら”しなきゃいけないことがめちゃくちゃ多かったりして、その気持ちを成仏させたいっていうのと、めっちゃ速い曲なのに2ビートじゃなくて8ビートっていうアイディアがあって。それが合わさって、人生っていうものの“あっと言う間”感を表現するにはこの感じがいいなと思っていた時に、『逃走中 グレートミッション』のアニメの話をいただいたんです。走っているイメージから“これはスピード感でしょ!”となり、ちょうどいいテーマだと思って本格的に作り始めた感じでしたね。
もともと玉屋くんの中にあったものと、たまたま来たお題がうまくハマったっていう。確かにサウンドの印象に対して歌詞がすごくパーソナルですよね。
そうですよね。でも、シリアスにはしたくなかったというか、このテーマをシリアスに表現したくなかったんです。これ、いくらでもバラードにできる曲なんですよ。でも、そうはしたくないっていうか、それを笑い飛ばすのがWiennersだと思ったので、こういう表現をしたかった。
なるほど。それでこの山口百恵オマージュから始まる感じにしたんだ。
そう! 《これっきり これっきり》って(笑)。もはやそれが分かる人って誰もいないんじゃないかと思いますけど。でも、それも本当に思った言葉をそのまま言っただけなんです。歌詞でもなんでもないんですよ、自分の中では。普通は歌詞って言いたいことをバーって書き殴ってから、それを歌詞にするために言葉を整理していく作業があるんですけど、整理する作業もせずに書き殴ったままを“これが歌詞です!”ってやったみたいな。それこそ《これっきり》って言葉が思い浮かんだ時に山口百恵さんが出てきたから、もうそのままです。
これまでもWiennersの歌詞には玉屋くんの思っていることが反映されてはいたけど、そこまでダイレクトに書いたことってそんなになかったですよね?
あんまりないですね。「午前6時」(2011年10月発表のミニアルバム『W』収録曲)とか「ゆりかご」(2020年5月発表のアルバム『BURST POP ISLAND』収録曲)とか要所要所でそういう曲はあったけど、ここまでテーマがしっかりしていて言いたいことがあるのは少ないですね。基本的に言いたいことがあって音楽をやっているんじゃなくて、音楽をやりたいから音楽をやっているので。
「みずいろときいろ」(2015年11月発表のシングル)もうそうでしたが、何か大きな出来事があった時に、それを吐き出すということを定期的にやってきているじゃないですか。それだけWiennersはいろんな荒波を潜り抜けてきているわけだけど、今回はそういう時だったんだと。
確かに! 本当にそうなのかもしれないですね。定期的にガーって溜まったものを吐き出してすっきりして、またちょっとずつ溜まっていくっていう。だから、音楽やっていて良かったと思いますね。やっていなかったらどこに感情を向けたらいいのか…みたいな感じはあるから。
しかも、たまたまそれがアニメとハマったという。
本当に偶然でもあり、必然でもあり…みたいな。そういうことってやっぱり神様が決めているんだなって。それこそ歌詞に出てくるんですけど、最近すごく“なるようにしかならない”ってマジで思うんですよ。人生ってなるようになるし、なるようにしかならない。だからこそ、今みたいな偶然であり、必然の連続になっていて。この曲がここで出されることも偶然であり必然で、KOZOくんが辞めるタイミングが今だったのも偶然であり必然なんだなって。今だからこそ言葉にできている曲だと思うから、めちゃくちゃありがたいと思いますね。
この曲が1分20秒くらいの短さになったのも、短い曲を作ろうというよりも言いたいことがこれだけだったっていう結果論ですからね。
結果論ですね。短い曲じゃなくて速い曲が作りたかったんで。60秒で言いたいことが言いきれたらカッコ良いと思っていたんですけど…でも、別にそれも無理矢理詰め込もうとはしていないから、結果的にこの長さになったわけで。そこにもこだわってないというか、それこそなるようになったんだと思うんですよね。出来上がったものが正解というか。