チームしゃちほこ、デビュー1年で武
道館達成 ローカル・アイドルが一気
に人気を得た理由とは

(参考:9nine、武道館公演で見せた「ガールズポップの本質」とは? 自由奔放なユニットの個性を追う)

 当日、武道館にはチームしゃちほこのTシャツやタオルを身に付けた大勢のファンが、推しメンのカラーのサイリウムを持って結集。ライブが始まる前から館内は色とりどりのサイリウムに彩られ、実に壮観だ。今回のライブは、チームしゃちほこが古代ギリシャにタイムスリップして神々を喜ばせるためにライブを披露するという設定で、舞台には神殿風のセットが用意されている。会場のスタッフも古代ギリシャ風の衣装に身を包んでおり、徹底してその世界観を作り込もうという姿勢が伺える。オープニングVTRで神様役の竹内力がメンバーを呼ぶと、それぞれポップアップ(ステージ下から飛び出す装置)で登場し、会場は大歓声に包まれた。

 1曲目「エンジョイ人生」が披露されると、後方からスペシャル・ゲストとしてROLLYが登場。生ギターをかき鳴らしてメンバーのパフォーマンスを盛り上げる。続けてライブ定番曲の「OEOEO」、アルバム『ひまつぶし』リード曲の「よろしく人類」へと続き、会場のテンションが一気に上がっていく。個性的な振り付けのダンスも、元気いっぱいの歌声も若々しく、グループとしての勢いを感じさせるステージだ。

 同グループが結成されたのは2012年4月、ももいろクローバーZ私立恵比寿中学に続く「3Bjunior」の姉妹グループとして、名古屋城西之丸広場で路上ライブを披露したのが始まり。メンバーは秋本帆華(名古屋レッド)、咲良菜緒(マリッジブルー)、安藤ゆず(ポニーピンク)、大黒柚姫(紫パープル(仮))、坂本遥奈(手羽先キミドリ)、伊藤千由希(ういろうイエロー)の6人で、全員が名古屋在住の高校生(結成時は中学生)だ。その名の通り「しゃちほこ」を頭に乗せたスタイルや、「ひつまぶし」や「手羽先」といった名古屋名物を挙げる歌詞などで、地方色を全面に押し出しながらも、「3Bjunior」ならではのユニークなパフォーマンスで全国区を目指した活動を展開していた。

 また、特筆すべきはその音楽性で、多様化するアイドル・シーンにおいてもひと際目立つ個性的な楽曲の数々は、音楽ファンの間でも定評を得ている。武道館公演の約1週間前、8月20日に発売された1stアルバム『ひまつぶし』は、すでに2014年のアイドル・シーンにおける名盤との呼び声も高い。同アルバムには、アシッド・ハウスを基調としたサウンドでBase Ball Bearの小出祐介に絶賛された「いいくらし」や、中毒性の高い歌詞で人気を博したメジャーデビューシングル「首都移転計画」、狂騒的なシンセサウンドが耳に残る「愛の地球祭」などのシングル曲のほか、書き下ろしの新曲を9曲も収録。電波ソング的でハイテンションな「抱きしめてアンセム」、千原ジュニアが作詞した「んだって!」、ヒューマンビートボクサーのDaichiを迎え、メンバーがゆるふわなボイスパーカッションを乗せる「赤味噌Blood」といったエッジの効いたナンバーに加え、小出祐介が作詞・作曲を担当したストレートで疾走感溢れるロック曲「colors」、ベートーベン交響曲第9番のフレーズを取り入れた壮大な王道アイドルポップス「よろしく人類」など、実に多彩なアプローチでメンバーの魅力を描き出している。

 このように、彼女たちの楽曲が個性的で面白いのは、所属レーベルの「unBORDE」に依るところも大きいだろう。unBORDEは、きゃりーぱみゅぱみゅ神聖かまってちゃんtofubeatsゲスの極み乙女。など、Jポップシーンの中でも特に先鋭的なアーティストを抱えるレーベル。つまり、言ってみればチームしゃちほこは、ももクロを擁する「3Bjunior」と、きゃりーを育てた「unBORDE」がタッグを組んで生み出した、渾身のローカル・アイドル・ユニットなのだ。あっという間に人気が沸騰したのも頷けるところである。

 しかしながら、彼女たちの魅力はなにも、エッジーな音楽性や際立ったコンセプトだけではない。序盤の3曲が終わり自己紹介が始まると、メンバー1のひょうきん者でありながら、実は涙もろい安藤ゆずが早くも「この景色が見たかった……」と言葉を詰まらせる。その表情がスクリーンにアップで映されると、ファンからは「頑張れ!」とエールが送られた。ごく普通の高校生でもある彼女らが、あっという間に大きなステージへと上り詰め、そのプレッシャーと向き合うというストーリーもまた、ファンの共感を呼ぶのだ。そのMCは時に拙く、時に突拍子ないが、しかし等身大の10代のリアリティがあり、応援せずにはいられないものがある。

 その後「いいくらし」「首都移転計画」「colors」とアルバム収録曲をたて続けに披露したメンバーは、その勢いのまま「大好きっ!」「でらディスコ」とライブ定番曲を熱唱、ステージ脇に設置されたリフトに乗り、ファンに手を振って歓声に応えた。

 中盤では、センター秋本帆華がソロ曲「おっとりガールの憂鬱」を歌い上げる。秋元の歌声は真っすぐに澄んだ響きを持ったロリータ・ボイスで、ユニゾンの中でも通りやすく、チームしゃちほこ特有のサウンドにも大きく影響している。子どもが歌う童謡のようなどこか懐かしい響きを、ファンはじっくりと聴き入った。

 16曲目「そこそこプレミアム」からはROLLYが再び登場。秋本帆華はワイヤーによるフライングに挑戦し、武道館の宙を舞う。特に臆することもなく、いつもの笑顔で飛翔する秋元の姿に、チームしゃちほこならではの“ゆるさ”を感じて微笑ましかったのは、筆者だけではないだろう。センターでありながら誰よりもマイペースで、どこか飄々とした彼女の存在は、チームしゃちほこのスタンスを象徴しているようだ。誰もが笑顔でその姿を見守っている。

 その後「トリプルセブン」「抱きしめてアンセム」とアッパーな楽曲を全力でパフォーマンスし、メンバーは一度ステージを後にした。アンコールで再び登場すると、チームしゃちほこ初となるバラード曲「明け星」をスタンドマイクでしっとりと歌いあげ、その後、ラストの定番となっている「マジ感謝」「ごぶれい!しゃちほこでらックス」を続けて披露、ファンと一体となって盛り上がり、武道館公演は幕を閉じた。

 ライブの最後には、2015年の年明けに愛知県体育館で「鯱詣」と題された単独ライブを行うことも発表されたチームしゃちほこ。エッジーでユニークな楽曲群と、エンターテイメント性が高いパフォーマンス、そして名古屋在住の普通の高校生ならではのアイドル性をかね揃えた彼女たちの勢いは、今後さらに増していきそうだ。(松田広宣)

リアルサウンド

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