【TOC インタビュー】
今までで一番やる気のある
ベスト盤かもしれない
もうズブズブに溺れてて、
女のケツを追っかけ回る男
新曲「パラソムニア」「生きて」以降、3曲目「BirthDay」から順に聴いていくと、TOCの変遷がよく分かります。初期の頃は、やっぱりラッパーの部分をより強調していたような印象を受けましたが、その辺はどうでしょう?
その辺は性格の生真面目さが出ていますね(笑)。
だから、今作の前半に収められている「BirthDay」「Bird」、あと「HATE」はかなり象徴的ではありますけど、結構リリックも攻撃的なんですよね。
ただ、その攻撃性もメジャーでの1stアルバムとなる『SHOWCASE』(2018年1月発表のアルバム)に収録されていた「武器と勇気」や「1999」、さらに『立国宣言』(2020年1月発表のアルバム)収録曲で、微妙に変わりましたよね。尖ってる感じが薄くなったように思います。
メジャーになってからはより自然体となってきたんでしょうね。一番の変化はメロディーだと思います。『SHOWCASE』以降はTOCさん元来のポップ指向が普通に出てきましたよね。
ラップをする人はラップが主体で、メロディーは二の次と考えている人もいると思うんですけど、『SHOWCASE』からのTOCさんは普通にファルセットを使って歌っていますもんね。
Hilcrhymeでデビューして一気に大衆の支持を受けたところは影響したかもしれないですね。
混沌としたんでしょうね。だから、いったんメロディーは脇に置いておこうとしたり、攻撃性が出てきたりという。ただ、メジャーでの2ndアルバムの『立国宣言』は攻撃性もあるんですけど、同時に「Slow Dance」のような、もはやR&Bと言ってもいい楽曲も収録されてます。つまり、『立国宣言』の頃には表現の幅も広がったと言っていいんでしょうね。
元来の歌モノ指向というか、メロディー指向が自然と出てきたんでしょうね。そうは言っても、そこでヒップホップの攻撃性が失われなかったというのはいいですね。
確かに。で、さらに話を続けると、メジャーデビュー後のTOCでも最も変わったのはリリックの内容かなと。やはり自然体になってきたというか、より赤裸々になってきたような印象があります。Hilcrhymeのリリックってカッコ良い男が出てくることが多かったんですよ。TOCは、はっきり言っちゃうとカッコ悪い男も出てきてますよね。それは自然と出てきた結果ですか?
隠さないという。
今おっしゃられた、その“包み込むような愛情”といったものを綴ったリリックはTOCにもあって、この『TOC THE BEST』に収録されている楽曲で言えば、「JENGA」や「I’ll Light You」、「たいよう」がそうだと思います。その一方で、「過呼吸」や「高嶺の花」、「SAD DAY」といった歌詞があるというのがいいんですよ。そこが非常に人間味あふれると言いますか。
絶対にありますね。だから、私は「パラソムニア」も大肯定ですよ。
こういう内容って、下手すると“墓まで持って行く”じゃないですけど、普通の人は隠しがちですが、こうしてかたちにするところがアーティストだとも思いますし、その意味でも大肯定ですね。
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