けいちゃん

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【けいちゃん インタビュー】
音楽が好きな人であれば
必ず楽しんでもらえる自信はある

テクニカルなパッセージとかは気楽に、

指達に任せて弾いている感覚

続いて、本作のピアノのプレイについて話しましょう。今回、ピアノの演奏面で特に大事にされたことは?

強弱で言うところのピアノ(弱)の弾き方です。僕はフォルテ(強)よりもピアノのほうがエネルギーを使うと思っていて、ピアノは凝縮されたフォルテだと感じているんです。ピアノにもいろんな種類があると思うし、ピアノはそれを表現できる楽器でもあるので、そこの追求は頑張りましたね。特に「かげおくり」とか「Dear U」とかは、アコースティックピアノだからできる表現ということにこだわりました。

その一方でサンプルのピアノの音も使うという振り幅の広さは強みと言えますね。それに、今作は超絶的にテクニカルな側面と歌心やニュアンスなどで聴かせる部分のバランスの良さも光っています。

ニュアンスということではギターやバイオリン、サックスといった楽器は伸ばした音にビブラートをかけたりできるじゃないですか。それに対して、1度音を鳴らしたらもう何も変えられないのがピアノの特徴なんです。でも、それがいいんです。弾いた音が消えるまでの間に、耳で聴くだけで音が変わっていく楽器というところが。なので、“弾いたらおしまい”ではなくて、減衰していく音の美しさみたいなものをちゃんと表現することを意識して弾きました。

そういう細やかな気遣いが活きて、テイスティーなピアノを味わえます。テクニック面に関してコメントがないということは、テクニカルなプレイは自身の中ではそれほど大きなことではないのでしょうか?

そうですね、それほどすごいとは思っていないです。速いパッセージを弾く時、僕はいい意味で集中していないんです。

えっ!? 集中していない?

はい。いい音を出そうと思って音にフォーカスして演奏する時はすごく集中しますけど、テクニカルな技術を見せつけるような場面では頭の中が真っ白になって、指が勝手に動いている状態になるんです。だから、何も語らないんだと思います。何も考えずに弾いています。

あっさりとおっしゃいますが、リズムや音符の長さ、音の強弱といったことが的確でなければ、ああいう仕上がりにはならないですよ。そういう難易度の高いフレーズを“楽しいな”と思いながら弾けるというのは衝撃です。

その辺りは僕が潜在的に培ってきたものがあって、その延長というか。ずっとクラシックをやってきて、音へのこだわりとかテクニックとかが身について、その後ジャズを勉強してアドリブをどうやればいいかとか、どういう音を使えばいいかといったことをずっと追求して、それがある程度手に馴染でいるんです。何も考えないで適当に指を動かすだけでも、ちゃんとコード感とかがしっかりしている音が出せるようになっているんです。だから、テクニカルなパッセージとかは、気楽に指たちに任せて弾いているだけという感覚です。アドリブとか速いパッセージを弾く時は、自分の引出しの中のものをパパパパッと出していっているから何も考えずに…もちろん心の中ではメロディーをちゃんと歌っていますけど、頭が真っ白に近い状態で弾ける。だけど、ちょっと新しいことをやってみようとなると、違う引出しを組み立てる作業がありますが、その時は“試しにこれをやってみよう”というのを考えて弾くので、集中力を使います。

そうやって新たに得たものもどんどん引出しになっていくわけですから、本当に末恐ろしいです。もうひとつ、今回のレコーディングではアコースティックピアノはどんなものを使われたのでしょう?

もうバラバラです。その場にいた子を“はじめまして”で弾かせてもらいました。いろんなピアノと出会えるというのは一期一会で、その時々の運命で楽しさがあります。なので、それぞれの曲でピアノの音の毛色が違っています。

す、すごいです! “弘法は筆を選ばず”を実践されているんですね。さて、『聴十戯画』はマニアックな音楽好きからライトなリスナーまで、幅広い層が楽しめる一作になりました。本作を完成させて、今はどんなことを感じていますか?

ピアノという楽器の偉大さというか、ステータスの高さを改めて感じています。どんな場所にでも馴染めるし、主役にも脇役にもなれるし、ジャンルを飛び越えることもできる。とにかく汎用性が高いことと、楽器の王様と言われるだけの筋合いがあることを身に染みて感じて、その魅力を『聴十戯画』を通してみんなに知ってもらえたら嬉しいです。音楽が好きな人であれば必ず楽しんでもらえる自信はあるので、気軽に手に取ってほしいです。

まったく同感です。それに、『聴十戯画』を聴いてライヴも観たくなる方が多いと思いますが、その辺りのご予定は?

ライヴは実現させたいと思っています。ライヴをする時はみんなに来ていただき、生で僕のピアノを体感してもらい、生でお互いの感情をやりとりできたらいいなと思っています。ライヴが決まったら、ぜひ会場に足を運んでほしいです。

取材:村上孝之

アルバム『聴十戯画』2022年12月14日発売 徳間ジャパンコミュニケーションズ
    • 【初回限定盤】(CD+DVD)
    • TKCA-75098
    • ¥5,000(税込)
    • ※MINI PHOTO BOOKLET+三方背ケース付属
    • 【通常盤】(CD)
    • TKCA-75099
    • ¥3,000(税込)
けいちゃん プロフィール

ケイチャン:1996年生まれ。19年よりYouTubeにて活動を始め、フリースタイルピアニストとして高い人気を得る。チャンネル登録者数は100万人を超え、総視聴回数3億2千万回を超える。20年12月にさいたまスーパーアリーナにてワンマンライブを行ない、21年6月にデビューアルバム『殻落箱(ガララバコ)』にてCDデビュー。22年12月には全曲インストゥルメンタル楽曲の2ndアルバム『聴十戯画』をリリース。23年9月に配信シングル『馬の耳ドロップ feat. majiko』をリリース。同年10月には品川Club eXにて、けいちゃんピアノリサイタル『Rubato Circus〜play grandioso〜』を開催した。TBS系朝の情報番組 『THE TIME』にレギュラー出演他、映画主題歌を手がけるなど、ピアノを軸とした音楽総合表現者として、トラックメーカーとしても活躍。同年12月には3枚目となるアルバム『円人』をリリース。2024年2月には『Live Tour 2024『円人』』を豊洲PIT(東京)、なんばHatch(大阪)で開催。けいちゃん オフィシャルHP

「かげおくり」MV

OKMusic編集部

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