ドレスコーズ

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【ドレスコーズ インタビュー】
はっきりと不道徳さを
自覚してラブソングを歌う

“悪いことを謳歌しよう”という
不道徳なアルバム

このアルバムは夏という季節が帯びているノスタルジーを誘う面も描かれている印象がしました。「やりすぎた天使」や「夏の調べ」とか、そういうものを感じました。

夏ってそういう気持ちになりますよね。

「夏の調べ」の《いつかどこかであったような/ひとりででっちあげたような/そんなことばかり》って、本当にそうだなと。

夏がきたと思った時にはもう去り際なんです。そういうのは日本人の情緒をくすぐりますよね。

夏に対するこういう感覚って海外の人にはあるんですかね?

一年の中での何らかのピークという感覚はあるのかもしれないですよ。

“このあと、衰えていくんだ”という予感と隣り合わせの季節だから、切なさがどことなく漂うのかもしれないですね。

ね。日本の夏は短いですし、そういうものに同情するのは日本で育ったからかもしれない。パッと栄えているものを見ると“でも、どうせすぐに消えるから”というふうに考えてしまう。蝉とか花火とか、夏の風物詩にはそういうものが多いですから。

「わすれてしまうよ」の《ここへくる道で 思い出して/とめどなく あふれ しゃがみこんで》も、夏が帯びているノスタルジーをとても感じました。

今回は夏に作ったと言いつつも、実際には屋内にこもって自分の中の“いつかの夏”の記憶にアクセスする作業だったんです。だから、ノスタルジックと言えるものになった面もあるのかもしれないですね。

シンセの音も今作全体に漂う郷愁感につながっているように感じます。「ラストナイト」のアナログっぽいサウンドとかまさに。

僕もとても気に入っています。アナログサウンドは輪郭や境界線がボケていて、いいんですよね。

全体的にリバーブな質感があって、聴いていると白昼夢を見ているような感覚にもなりました。

それが夏っぽさとも言えるのかもしれないですね。夏の蜃気楼じゃないですけど、暑さで朦朧としているようなイメージが浮かぶのかもしれません。

「横顔」も僕の中ですごく夏の風景が浮かぶんです。歌詞で夕立について描いているわけでは全然ないですが、夏の夕立のようなムードを感じました。

これも妙に日本的なところがある曲かもしれないですね。

ピアノの旋律から雨の風景を喚起された部分もあるのかもしれないです。ピアノはコロナ禍が始まった頃から始めたんですよね?

はい。今回はいつもよりシンセサイザーをたくさん使っているんですけど、それは鍵盤楽器が少し弾けるようになったからかもしれないですね。今まではギターだけで曲を作っていたのが、ピアノで作ることも多くなりましたし。

まさに本作は音と言葉によって、とても奥行き深い世界が作り上げられているアルバムですね。

ありがとうございます。“戀愛大全”ってタイトルも、そもそも恋愛って良いことばかりじゃなくて悪い側面もあるじゃないですか。恋愛をすると馬鹿になっちゃうし、独善的になるし、理屈が通らなくなるので。だから、『戀愛大全』は悪いことを讃美するような、悪いことを勧めるような、不道徳なアルバムなんです。どうしてラブソングだけにこだわって作りたかったのか、理由がちょっとずつ自分でも分かってきました。“はっきりと不道徳さを自覚してラブソングを歌う”っていう感じですね、これは。

恋愛は病気だと言う人もいますし、愚行と無縁で真っ当に生きるんだったら恋愛なんてしないほうがいいという考え方も、少なからず頷ける部分がありますからね。

そうですね。それでも恋愛にひた走ってしまうのだから、人間って悪い生き物だということです。そういう意味での人間讃歌のようなつもりです。

取材:田中 大

アルバム『戀愛大全』2022年10月19日発売 EVIL LINE RECORDS
    • 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
    • KIZC-90697~8 ¥7,480(税込)
    • 【通常盤】(CD+Blu-ray)
    • KIZC-699~700
    • ¥3,850(税込)
    • 【LP】
    • NAS-2117
    • ¥4,000(税込)
    • ※KING e-SHOP限定商品

ライヴ情報

『the dresscodes TOUR2022 「戀愛遊行」』
11/11(金) 北海道・札幌cube garden
11/13(日) 宮城・SENDAI CLUB JUNK BOX
11/23(水) 岡山・YEBISU YA PRO
11/24(木) 福岡・BEAT STATION
11/26(土) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
11/27(日) 大阪・千日前ユニバース
11/30(水) 神奈川・CLUB CITTA’

『12月21日のドレスコーズ』
12/21(水) 東京・恵比寿ガーデンホール

ドレスコーズ プロフィール

2003年「毛皮のマリーズ」結成。日本のロックンロール・ムーブメントを牽引し、2011年、日本武道館公演をもって解散。翌2012年「ドレスコーズ」結成。2014年以降は、ライヴやレコーディングのたびにメンバーが入れ替わる流動的なバンドとして活動中。8thアルバム『戀愛大全』(2022年)、LIVE Blu-ray & DVD『ドレスコーズの味園ユニバース』(2023年)が発売中。9thアルバムが2023年9月13日に発売予定。秋にはアルバムをひっさげたツアーも開催予定。近年は菅田将暉やももいろクローバーZ、上坂すみれ、PUFFY、KOHHといった幅広いジャンルのアーティストとのコラボレーションも行なっている。音楽監督として『三文オペラ』(2018年 ブレヒト原作・KAATほか)『海王星』(2021年 寺山修司原作・PARCO劇場ほか)などに参加。俳優として映画『溺れるナイフ』Netflixドラマ『今際の国のアリスSeason2』などに出演。映画『零落』(2023年 浅野いにお原作・竹中直人監督)では初のサウンドトラックを担当。現在は東京新聞にてコラムも連載中。ドレスコーズ オフィシャルHP

「やりすぎた天使」 AudioVideo

「聖者」MV

「エロイーズ」AudioVideo

「メイキング・オブ・戀愛大全」
冒頭映像

『戀愛大全』&
「the dresscodes TOUR2022」
Teaser Movie

OKMusic編集部

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