村上ユカ

村上ユカ

【村上ユカ インタビュー】
地球的から宇宙的へ。
変化するマインドセット

YMOなどのエンジニアを手がける寺田康彦のシンクシンクレコードから1997年にデビューした、シンガー&テクノポップクリエーターの村上ユカ。デビュー25周年の今年、10月12日にリリースした9年振りのアルバムタイトルはその名も“宇宙的”という。往時のテクノの匂いを残しつつ更新されていく世界観の源泉を探る。

“努力すれば報われる”みたいな
考え方は地球的だと思っている

村上さんは楽曲自体は常に作ってらっしゃるんですか?

そういうわけではなくて、突然“作ろう”みたいな気持ちになると、曲の情報が圧縮ファイルとして頭の中に降りてくるような感覚で(笑)。それを解凍しちゃうともう一気にやらなきゃいけなくなるので、“タイミングが来たらその圧縮ファイルを開こう”という感じです。自分が決めているというよりは、その曲がこの世の中に出る必要があると思っていて、ミッションみたいなものを私が完遂している感じなんですよね。ちょっとイタコっぽいんですけど(笑)。

アルバムとしては9年振りのリリースですが、何かきっかけになった曲はありましたか?

まとまったら作ろうと思っていたんですけど、まとまるまでに9年かかっているんです(笑)。なので、きっかけは特にないかな? “この時期だ!”と思って最後に作ったのが、タイトルチューンの「宇宙的」でした。今回タイトルチューンは別になくてもいいかとも思ったんですけど、作った時に“やっぱりこのタイミングだな”と思って。

第一聴の印象は機材自体が新しいのか、ビートやスケール感が新しいと感じまして。

そこは変わっていなくて、本当に古いんですよ。90年代のKORGのハードウェア音源なんですけど、普通のシンセを使っています。今、作る人はソフトシンセでパソコンの中に全部入っていたりするんですけど…そういうのも使ってはいるんですが、メインになっているのは90年代に出たシンセです(笑)。

ビートや空間感の新しさはどこから来ているんでしょう?

そのへんはミックスでやってくれていると思います。ミックスは旦那の杉本 健くん(SPANK HAPPYの「Vandome la sick kaisei」、菊地成孔feat.岩澤瞳の「普通の恋」などを手がけている)にやってもらっているんですけど、1曲目の「宇宙的」は特にディレイをかけたりして、リズムをノリ良くするということをしてくれましたね。

「鏡の世界」と「銀河エレベーター」は先行配信されていますが、この2曲を先行配信した理由はありますか?

「鏡の世界」はその前のアルバム(2013年10月発表の『鳥と魚』)に入れようと思って入らなかったんですよね。ボリューム的に7分ぐらいあるし、メッセージ性もあるので、アルバムの中に入れると長すぎるし、『鳥と魚』に入れるのはちょっと重たい気がしたので。で、結局入れないままいたんですけど、“シングルで切ろうかな?”と思ったんでしょうね。

今回アルバムに収録されて良かったです。ポップスとしてのクオリティーが高いし、シンセベースやストリングスのアレンジの融合が独特なので。この曲はどこからできたんですか?

ちょっとスピリチュアルな話になっちゃうかもしれないんですけど(笑)、もともと私のファンの人でスピリチュアル的なレッスンをしている人がいて、その人に1年半ぐらい習っていたんですよね。心理学でも言われる話なんですが、“自分が目する人の言動とか、そういうものが自分の投影だよ”という話で。それを“鏡”と表現して“鏡の世界”。相手のことを鏡みたいに見ることで、いろんな感情に気がついていくというのを歌詞にしているんですけど、あの曲を書いたあたりはそのレッスンが終わった頃だったかな? 教えてもらった時に“これを曲にしたい”と思って、その途中経過として“こういう世界があるよ”というのも作品にしたかったし、聴いてもらいたかったっていうのがありますね。

目に留まる人の言動が自分の鏡であるというのは確かに納得です。加えて、ここ数年の社会の閉塞感にしんどい想いをしてきた人に対して、寄り添うというようなベタな感じではないですが、共感する内容ではあると思って。

そうですね、確かに。結構淡々としているかもしれない。

この「鏡の世界」以外にもテーマがあってできた曲はありますか?

「宇宙的」ですかね。“努力すれば報われる”みたいな考えを私は地球的だと思っているんですけど、それが“宇宙的”という世界からだと、夢見たことは叶っていくと思っているんですよ。でも、そこにはまだ行ききれていない自分がいて、「宇宙的」を作ることで自分もそこに行きたいっていう、ちょっとアファーメイション(肯定的な自己説得)みたいなところもあるんですけど。

根性論じゃない“夢は叶う”なわけですね。その感覚が宇宙的としか言いようがない?

そうなんですよね。本当に突発的に出てきた曲で、展開もめちゃくちゃだし、“この構成どうなるんだろう?”と作っていて不安もありましたが、それこそ音が降りてくるのを待って作っていったら、自分が納得したり感動したりするものができたので。もちろん努力も大事ですが、直感的にやるというのがあれこれ考えるよりも大事なんじゃないかと思いました。

「宇宙的」には歌詞もありますけど、具体的にはっきり聴こえる歌い方ではなくて。

この曲は音楽ってよりはエネルギーみたいなものを伝えたいと思っていて。明確に説明をする曲ではないんですよね。だから、言葉はすごく少ないし、はっきり聴こえる感じじゃなくて、フワッとしているんですけど、“とにかくエネルギーを!”という感じで作っています。
村上ユカ
アルバム『宇宙的』

OKMusic編集部

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