【ハラミちゃん インタビュー】
年代をつなぐ架け橋だったり、
伝道師みたいな役割を果たしたい
もっともっとピアノという
楽器のことを知っていきたい
今作のレコーディングはどういう環境で録音されたのでしょう?
広いスタジオにグランドピアノを置いて、その周りに10本以上マイクを立てて録りました。1stアルバム『ハラミ定食 DX 〜Streetpiano Collection〜』(2020年7月発表)の時からいつもお世話になっていて信頼しているエンジニアさんと今回もやらせていただいて。すごくいい音で録ってくださいましたし、レコーディングもめちゃくちゃやりやすかったです。
グランドピアノがバーン!と置いてあって、マイクが10本以上立っているスタジオにひとりで入って演奏するわけですよね。かなりなプレッシャーなのでは?
レコーディングはひと言で言うなら“つら楽しい”というか(笑)。つらいこともたくさんあったんですよ。本当にレコーディングでしか味わえないつらさとか、孤独さとかがあって。確か「Rusty Nail」の時にお昼からレコーディングを始めたんですけど、一回弦が切れちゃったんです。毎朝調律師さんが入って弦のチェックとかしているんですけど、7時間くらい続けて弾いたら弦が切れちゃって。ピアノは2時間のコンサートでも調律がこまめに入る楽器で、7時間くらい弾き続けると弦が切れることもあるって初めて知りましたね。そんなふうに予期しないアクシデントが起こったり、プレッシャーや孤独を感じたりしましたけど、やっぱり充実感があって“楽しかったな”という印象です。
つらいことも多いことで、完成した時の達成感はより大きかったと思います。
そうですね。あとは、楽曲の細かいところのアレンジとかを前は全部自分で決めていたんですけど、このアルバムからはみんなにすごく相談するようになったんです。それが良いことなのか悪いことなのかは分からないけど、自分の中ではそういう意味でもひとつ成長できたことと感じています。みんなの意見を聞いて取り入れるとで、“こんなに広がるんだ”とか“こんなにいいことがいっぱいあるんだ”ということに気づきました。
制作では本当にいろいろなものを得ることができましたね。さて、今作はあまり音楽に詳しくない一般的なリスナーが楽しめると同時に、ピアニストも刺激を受けるという良質な一作に仕上がりました。アルバムを完成させて、今はどんなことを思っていますか?
まずはこんなに大変なご時世で、ひとつ作品ができたということが、もうそれ自体が感謝だなと思っています。あとは、レコーディングをするにあたって原曲を聴きながらアレンジをどうしていこうかと考えてメモったり、練習したりしていく中で、一年前にアルバムを出した頃よりも自分の引き出しがいつの間にか広がっていることを実感できたし、ピアノでやれることはまだまだあるんだと感じました。逆に、“まだこれはできないんだな”と気づいて、足りないと思う部分が増えたというのもありました。今回のレコーディングの間にもっともっとピアノという楽器のことを知っていきたいと思えたし、『ハラミ定食2~新メニュー揃いました!~』で今現在のハラミちゃんを堪能していただいて、その上でこの先の続きも見守っていただけると嬉しいですね。
音楽家/ピアニストとしての魅力がより伝わるアルバムになっていることは間違いないです。もうひとつ、アルバムリリースに加えて、4月から7月にかけて全国ツアー『ハラミ定食2 全国ツアー 2022 ~新メニューお届けするぬ!~』を行なうこともアナウンスされています。
今回は初の2部制というか、昼は普通のライヴで、夜はちょっとファンミーティングっぽいライヴというかたちになっています。夜のライヴはセットリストなしでやろうと思っているんですよ。もう完全なリクエスト祭り(笑)。セットリストなしで、即興だけでライヴをするというのはハラミちゃんらしいし、私にしかできないようなことなので挑戦したいと思って。本当にその場のお客さん次第なので、お客さんの年齢が高い時は古い曲が多くなるでしょうし、若い子が多い時は新しい曲が多くなると思うんですよ。自分はストリートピアノをやっているからかもしれないですけど、そういう一期一会の瞬間がすごく刺激的で好きなので、それをワンマンツアーでやってみるというのがすごく楽しみです。逆に、今回のアルバムをちゃんと聴きたいという方は昼に来ていただければ大丈夫ですよ。ハラミちゃんの違った顔を一日に2回出すというのは結構大変でしょうけど、それを楽しみたいし、みなさんにも楽しんでいただけるといいなと思っています。
取材:村上孝之