【ももすももす インタビュー】
ぼんやりと、
なんとなく分かるっていうのが
一番理想的かもしれない
私の曲を聴いて、
自分が生きてることさえも
忘れてくれたら
そんな日常の変化がある中、新曲「サーモクライン」が配信リリースされます。MBS ドラマ特区『どうせもう逃げられない』のエンディング主題歌として書き下ろされた楽曲ですが、どのように作っていきましたか?
原作を読んだ時に、急展開を迎える場面があったのが印象に残っていて、そこに自分と重なるものを感じたんです。ちょうど自分の身に悲しい出来事があった時期だったので、大切なものを失ってしまう瞬間がリンクして、泣きながらひと晩かけて作りました。
タイトルの“サーモクライン”は温度の違う水が混じり合わずにできる水の層のことを指しますが。
作っている時に“どうせもうやりきれない”と“やりきるしかないだろう”と思うふたりの自分がいました。歌詞は自分よりかは人に宛てて書いた曲で、ももすももすの曲として聴いてくれる方もそうだし、ドラマを観て聴いてくれる方にも向けています。
サビに《翼をカモメに借りて》というフレーズがありますが、ももすさんにとっての翼って何ですか?
自由ですかね。人間って動物よりも不自由じゃないですか。例えば“大人になる”とか。大人と子供の境目って人間においてはとても複雑で、考えても難しくてモヤモヤするんです。大人になったからいいってわけでもなく、子供だからダメなわけでもないし、他の動物にはそういうのがないからいいなって思っていて、その気持ちが出ていると思います。
“カモメ”は自分の糧になるものという比喩なのかなとも感じましたが、そのままのカモメでもあるんですね!?
前に新宿で見た忘れられない空があるんですけど、“あの空を飛べたらいいな”とずっと思っているんです。あと、飛べる動物の中でカモメが一番可愛いと思うから(笑)。あの時に見た空は朝ですごく曇っていたんですけど、すごくきれいだったんです。もしかしたら走馬灯に出てくるかもしれないってくらいに(笑)。
《雨雲みたいな心も/やっと日の目を見るかな》という部分にはどんな想いが?
落ち込んだ気持ちも、雨雲みたいにたくさん雨を降らせたらいつか晴れるかもしれないって自分で思いたかったんです。雨雲がずっと雨雲のままでいることはないので。
最後に《その瞳閉ざさないで》と歌ってるところに心情の変化が出ていて、一曲を通して励ましてくれているようなメッセージをぼんやりと感じます。
曲を聴いてくれて、なんとなく分かるっていうのが一番理想的かもしれないです。人の心もなんとなくしか分からないから、そう思ってもらえたら嬉しいな。
「サーモクライン」はももすさんにとってどんな曲ですか?
自分にとっては絶対に手離せない手紙みたいな曲になりました。だいぶ音楽的にも成長した気がします。
自宅で作るようになってから作曲面ではどんな変化が?
DTMが自力できるようになってきたという単純な理由がひとつあって。あとは、打ち込みで作ることによって、曲の構成をシンプルにしてもいいんだってことに気づけたのが良かったです。今までは“これを足して、これも足して〜”という感じだったんですけど、今回は音数を減らして作りました。効果音もさりげなく入れています。詰め込む楽しさも、軽やかにする良さも知ったので勉強になりました。
まだまだこの生活は続きそうですね。
抜け道はないけど、道端に時々花が咲いていたりとか、野良猫がいたりすることがあるので、そういうのを楽しんだり、たくさん本を読んだり、映画を観たりしようと思います。焦らずに過ごしたからこそできた曲でもあるし。私の曲を聴いて自分が生きていることさえも忘れてくれたらいいなって思うんです。自分は生きてるんだって考えていない間も生きてるわけだから、そんな心の拠りどころになってくれたら嬉しいです。
取材:千々和香苗
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配信シングル「サーモクライン」2021年10月20日配信開始
TRIAD/日本コロムビア
- ※配信先の詳細は、オフィシャルHPをチェック
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- COKM-43535
モモスモモス:2015年よりロックバンド・メランコリック写楽の作詞作曲を手がけ、ヴォーカル&ギター“ももす”として活動。18年より“ももすももす”としてソロ活動を開始。中毒性の高いハイトーンヴォイスと純文学の影響を受けたユニークな言葉遣い、そして絵画のように奥深く、予測不能なメロディーの渦を宅録から世界へ発信している。19年2月にはシングル「木馬」でメジャーデビュー、20年3月には1stアルバム『彗星吟遊』を発表。23年2月にソニー・ミュージックレーベルズ移籍第一弾シングル「エソア」をリリース。その後も配信シングルを2曲、CDシングルを1枚発表し、11月に移籍後初となるアルバム『白猫浪漫』をリリース。12月にはワンマンライヴ『黒猫会議』を開催する。ももすももす ソニー・ミュージックレーベルズ アーティストページ
「サーモクライン」MV
「夏至のツンドラ」MV
「ベルガモットとドラゴンアイ(demo)」
リリックビデオ