【LUNA SEA ライヴレポート】
『30th Anniversary
CROSS THE UNIVERSE -THE DAWN-』
2021年5月30日
at 東京ガーデンシアター
雷のようなオープニングSEとともにステージに現れる5人。オレンジのライトが会場を包み、多幸感あふれるナンバー「LUCA」で幕を開ける。真矢(Dr)のドラムが鼓動を高鳴らせて、RYUICHI(Vo)の爽快な声が会場いっぱいに広がっていく。《Na Na Na》とコーラスができない客席に向かってINORAN(Gu)がクラップを促す。言葉に出しては伝えられない想いを込めて、オーディエンスは大きくクラップする。一呼吸置いて、「LUCA」の明るいムードから一変、スリリングな「Closer」に。動き回るSUGIZO(Gu)のギター、それに対して呼応するJ(Ba)のベースに意識を持って行かれた。
“東京、会いたかったぜー! 初めてのこの会場ですが、実は22年前にすぐ近くで『CAPACITY ∞』をやっていて”とRYUICHIは振り返る。22年前の1999年5月30日は東京ビッグサイトスペシャルオープンステージで、総動員数 10万人を記録した『LUNA SEA 10TH ANNIVERSARY GIG [NEVER SOLD OUT] CAPACITY ∞』が行なわれた。これは3日前に会場を襲った強風によりステージセットが倒壊するという不運に見舞われながらも、その廃墟をセットにするというアイディアで敢行され、メンバーはヘリに乗って登場するなど度肝を抜く演出もあった伝説のライヴである。客席に向かって“『CAPACITY ∞』に来た人ー!”とRYUICHIが問いかけると、かなりの人数の手が挙がった。RYUICHIは“おっ、すごい出席率”と感心。さらに“たぶん縁があって、この辺に来ているんだと思うんだよね。だから、新しい故郷ができたと俺たちは思っています”と言葉を続けるのだった。
3曲目は『CROSS』のプロデューサーであるスティーヴ・リリーホワイトもインタビューで“いかにもJっぽくて、いい曲ですよね。かなりライヴ向けじゃないですか”と太鼓判を押していた「Pulse」。もともとポジティブなメッセージが込められた楽曲であるが、特にこの日はその明るい部分が際立っていた。《君よ恐れずに この空打ち抜け 今 闇さえ切り裂け》といったフレーズは、コロナ禍で不安を抱える人たちの心を奮い立たせてくれる力を感じさせた。そして、一曲の中で動と静を行き来するナンバー「PHILIA」に。RYUICHIの冴え渡るシャウトやJの繊細なピアノと、見所が随所にある曲だが、それが浮き上がることなくひとつの世界に集約されていくところが、5人の絶妙な調和を表している。
MCでRYUICHIは“ニューアルバムを届けてから、ツアーもずいぶんと立ち止まっていますが。本来であれば、もしかしたらツアーのラスト公演であったこの3日間のガーデンシアター。この会場からツアーをまた始めたいと思います”とツアーの再開を宣言し、“僕らには、そしてみんなには、音楽が必要だと思います。お互いの思いをツアーで、もしかしたらまだマスクももちろん、歌えないかもしれませんが、しっかりと共有し合って、ひとつになりましょう”と語った。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』第一弾オープニングテーマである「宇宙の詩~Higher and Higher~」は、まさにこのライヴのタイトル“THE DAWN=夜明け”を感じさせた。アウトロで真矢のドラムが鳴り続けて、そのまま「静寂」へ。ライヴの肝となる大曲で思わず感情がほとばしる楽曲だが、今回のライヴでは臨界点に達するギリギリのところを攻めながら見事にコントロールされていて、彼らの演奏のすごみを見せつけた。また、“日々、いろいろなことと向き合って、きっと困窮している、そんな時間もたくさんあるんじゃないかと思うんだけれど、俺たちのこのライヴの瞬間は全てを忘れて、自分たちのもといた場所、導かれた場所、想いを残す場所に戻ってきて、思い切り楽しんでください”と語るRYUICHIの言葉も印象深い。そして、第1部のラストナンバーは、ガンダム40周年プロジェクトのテーマソング「THE BEYOND」。雄大なメロディーに合わせてオーディエンスが大きく手を振る様子は、会場の上部から見ていると大海原のようだった。
20分間の換気休憩をはさみ、「月光」のSEから始まった第2部。RYUICHIが《Jesus, don’t you love me?》と叫ぶと、歓声にはならないけれど、会場の空気が震えるのを感じた。これから各地を制覇していくという、ツアーへの期待感がここでも高まる。オーディエンスが声をそろえて歌っていた「DESIRE」の《Shadows of my LUV》というフレーズは、客席の想いを受け止めて、自ら鋭く歌った。この2部のセットリストでは彼らが幾度となく披露してきたヒットナンバーが並ぶが、この日は演奏への集中力がいつも以上に研ぎ澄まされているのが、観ている側にも伝わってくる。
“ずっと終わらない夢を見ているみたいだよね、俺たち。ツアーも本当に走り出せそうなので、何とか完走して、何なら、もう一回やり直す?みたいな”と笑顔で話すRYUICHI。切ない歌詞ではあるものの目の前が広がっていくようなサウンドの「IN MY DREAM」を演奏した直後、“えー、スピーカーが飛びました。少々お待ちください”という予想外の出来事が発生したことを告げる。突然見舞われた機材トラブルにも落ち着いて対処する様子は、それもライヴの醍醐味として楽しんでいるようでもあった。ほどなくして回復し、ライヴを継続させていくーー。
滞った空気を一掃する大ヒットナンバー「ROSIER」では、オーディエンスが声を出す場面でRYUICHIは“心の声でー!”と叫ぶ。彼らの演奏の迫力を観ていると、例え歓声がなくても5人の音だけで気持ちを最高潮に高めていけるという、LUNA SEAの真骨頂を改めて感じた。観客の声での後押しがない分、このコロナ禍はバンドが持つ地力が問われる機会になったのかもしれない。そういう意味では、今回の公演ではライヴバンドとしての実力がいかんなく発揮されていたと感じた。
アンコール1曲目はコロナ禍で制作された「Make a vow」を、医療従事者、エッセンシャルワーカーといった人々の生活を支えてくれている人に感謝の気持ちを乗せて演奏。続いて行なわれたメンバー紹介では、真矢がトップを託される。これまでのライヴでは真矢のドラムソロに合わせての“真矢コール”がLUNA SEAのライヴでの定番となっていたが、今はそれができない。代わりに圧巻のドラムプレイを魅せながら、オーディエンスとクラップでコール&レスポンスを誘う。続いてJが“3日間、どうもありがとう。やっとツアーも始まるので、俺たち全員でライヴ会場は安全なんだっていうことを、みんなで証明していきましょう! 全国のみなさん、待っていてください”とコメントし、次に紹介されたINORANは「Sweetest Coma Again」のイントロを演奏後、“俺がしゃべると長くなっちゃうから”と遠慮しつつも“本当にどうもありがとう!”と思いの丈を叫ぶ。また、SUGIZOは“みんなごめんなさいね。ご迷惑をおかけしました”と先ほどの機材トラブルについて詫び、“Jも言ったようにツアーが始まります。安全安心を全国で証明して、音楽を止めさせない。音楽は止まらない。アートは、文化は止まらない。俺たちに必要じゃない? 一緒にこれからも、音楽を鳴らしていきましょう。そして、これから33年目が始まったよね。一緒に命尽きるまで、この旅を共に歩んでいきましょう”と約束。最後にRYUICHIが“みんなに想いを語ってもらっているんで、何もないんですけれど、本当にみんなのこと愛してます。どうもありがとう!”と締め括った。
本公演の最後はアルバム『CROSS』のラスト曲「so tender…」を投下! しみじみとした余韻に浸るイメージの楽曲だが、この日はまさにこれから待ち焦がれたツアーが始まるにあたっての決意を感じさせるアツさが際立っていた。33年目でまた新しい旅に向かう彼ら。ツアーで5人がどんな新しいものを手に入れるのか、しっかりと観届けていきたい。
撮影:田辺佳子、横山マサト、岡田裕介
取材:キャベトンコ
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