【THE COLLECTORS インタビュー】
シブいTHE COLLECTORSより、
弾けてるTHE COLLECTORS
盤を汚さないようにそっと取り出してプレイヤーに乗せ、慎重に針を落とす。その瞬間に広がる、かけ替えのない愛しい時間。THE COLLECTORSの鳴らす珠玉のポップミュージック&ロックンロールが結成35周年記念7インチシングルレコードBOX『13 VINYL SINGLES』に。この加藤ひさし(Vo)の言葉を参考に、じっくり聴くも良し、DJ気分で弾けるのもまた良し!
今って外に出られない現状なので
最高の大人の遊びをやったという感じ
7インチシングルレコードのBOXセットというのは、いかにもTHE COLLECTORSらしいアイテムですね。
30周年記念のBOXセット(2016年9月発表の『MUCH TOO ROMANTIC! The Collectors 30th Anniversary CD/DVD Collection』)がそれまでリリースした全てのオリジナルアルバムとアウトテイクのCD、ヒストリーDVDをパッケージした豪華絢爛なもので、それから5年が経って“じゃあ、次はアナログBOXを作る?”って話になった時に、アナログの7インチシングルは「太陽はひとりぼっち」(1988年6月発表)しか出していないから、アルバムから代表曲をメンバーが一曲ずつ選んで、それを7インチにしてBOXセットにしたら面白いものができるんじゃないかということで、このアイテムに達しました。
意外な曲がセレクトされていたり、シングル盤としての組み合わせの妙もいろいろあったりしますね。
そこが一番のミソなんですよ。“各アルバムからシングル盤を出したかったよな”っていう想いもありましたし。だから、“このアルバムだったら、この曲をシングル盤で出したかったよ”っていうのが作れたのが最高だったし、面白かったですね。
「Thank U」なんてこの企画がなければ7インチで出ることはなかったでしょうね。
「出てないよね。『ロック教室〜THE ROCK'N ROLL CULTURE SCHOOL〜』(2006年7月発表)という20周年記念でリリースしたアルバムの一番最後の曲っていう印象になってしまっているからね。でも、自分の中ではかなり気に入っているし、カッコ良いと思っているので、これがシングルになることで“あっ、こんなオリジナルナンバーもあったんだ!?”って思ってもらえたらいいですね。あとは、THE COLLECTORSの魅力のひとつでもある「あてのない船」みたいな壮大なバラードは、The Beatlesの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」のシングルを買った時みたいな気持ちで選びました。
7インチシングルになることで再確認できることもいろいろありそうですね。
アルバムって10〜12曲入るわけじゃないですか。だから、聴いていくと多かれ少なかれ、前の曲から影響されたりとかするんだけど、シングルだとその一曲にスポットがくっきりと当たるので、自分でもかなり印象が変わったというのもありました。
アナログ盤だと、ひっくり返してB面の曲を聴く作業も楽しいですしね。
そうですね。で、針を乗せると数分後に止まるわけじゃないですか。止まったら針を上げないといけないから、すごく集中して聴くんですよね(笑)。ながら聴きができない! そこが僕みたいなレコードで育った世代には懐かしさがめちゃくちゃ込み上げてきたり。
盤を傷つけないように、そっと針を落としたりとか。
そして、やっぱり「ヒマラヤ」「揺れる恋はスミレ色」という新曲2曲が7インチになっているというのも嬉しいですね。
しかも、タイトルからしてもう…(笑)。『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜』(2020年11月発表)からの発想の転換みたいなものはあったのですか?
発想の転換というよりは…「お願いマーシー」(『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜』のリード曲)の一曲で2020年を歌いきっちゃったんですよね。だから、これ以上はコロナ時代のことを歌うことができない…今も2020年の延長だしね。この不自由な毎日というのは、日本はどんどんひどくなっているし。そんな中で“何を歌おうかな?”って思った時、沸々と湧いてきたのが“The Beatlesごっこ”だったんですよ(笑)。もうね、プラモデルを作っているのと一緒だね! “俺、サイケが好きだったなぁ”“まったく意味の分らないことを歌っている時代があったよな”みたいな。で、“この悩みも神秘の里に行って解き放つ!”っていうようなエセ宗教的な歌って面白いかもと。だから、「ヒマラヤ」なんですよ。もう何よりも、♪ヒマラヤ〜って歌った時のメロディーラインと歌詞がぴったりとくる感じがね。
深読みすると“過酷さを乗り越えて到達する無我の境地”とかにもとらえられます。
そうそう。だから、これは67年に“インドではそういうことがあるぞ”ってインドを旅したイギリスのロックアーティストたちの、その真剣さを側から見て歌詞を書いたんです。
聴いていてラヴィ・シャンカル、ジョージ・ハリスン、ブライアン・ジョーンズとかが浮かびました。
それができるのは、そういう時代のロックを夢中で聴いていた時代があったからで。結局、ロックの可能性を追求しようと思って精神世界に飛び込んだり、宇宙をイメージしてみたりっていうのが楽しかったんでしょうけど、時代が変わると微笑ましいじゃないですか。その微笑ましさに愛を持って挑戦する…っていうか、リミックスするっていうか。
イントロのシタールの音色なんて最高の遊び心ですよね。
あのエレクトリックシタールは僕の私物なんですよ。そうそう登場する機会ってないので、こういう時に見せびらかすわけです(笑)。今ってほんとに外に出れない現状なので、最高の大人の遊びをやったっていう感じです。
でも、一応ググっちゃいました。ヒマラヤの壮大さを改めて確認しようと。
ヒマラヤ山脈って国を跨いでいるし、広いんですよね。そこで“チベットあたりを意識して政治的なことを歌いやがって”って思うのも勝手だし。だから、そういった意味でも“ヒマラヤ”というワードが何よりも良かったんです。