【SLOTHREAT インタビュー】
本物のヘヴィミュージックを
もっと幅広い層に届けたい
奇をてらわず、
正攻法でヘヴィ・ミュージックを
広めたい
SHINYAさんのドラムには、本当に衝撃を受けました。パターン系や高速の2バスなどを多用されていますし、歌のバックで叩きまくるシーンも結構あったりして、ここまで運動量の多いドラムは珍しいですよね。
SHINYA
結構、大変です(笑)。ドラムもコンポーザーの克哉がかなり緻密に作り込んでくるんですよ。1~2割くらい自分なりにアレンジしますけど、基本的には克哉の要望通りのドラムを叩いています。
克哉
僕、ドラムが大好きなんです。あと音楽をクリエイトする上でリズムパートが曲の善し悪しの土台を作るわけですから、当然最重要項目のまずひとつなので、めちゃくちゃ研究しているし、ドラムパートを考えるのが楽しくて仕方ない。しかも、SHINYAは叩けてしまうんですよ。“それ、できるんだ!?”みたいな(笑)。だから、ちょっと無理させてしまっているのかもしれないけど、素晴らしいドラムを叩くのでブレーキはかけないという(笑)。
SHINYA
(笑)。先程も挙げた「現人」のビートは結構衝撃を受けましたね。普通のドラムフレーズではないというか、なかなか考えつかないようなものを克哉にオファーされて、それがすごく良かったんですよ。かなり難易度が高くて、叩くのが大変なのは分かっていたけど、再現してやろうという気持ちになりました。なので、「現人」のドラムはぜひ聴いてほしいです。
KAZ
それで言うと、歌で苦戦したのはリード曲の「ILLUMINATE」です。この曲は展開数が多くセクション毎の切り替わりも早くなっていて。それに対して普通のヴォーカルを乗せていくと、曲とヴォーカルの化学反応を最大限に発揮できないんですよ。どうしようかと悩んだ結果ヴォーカルシンセを使ったり、細かい音符を詰め込んだりしてみたり、いろいろ工夫をして制作しました。結果的に、また新しいステップに行けて良かったと思います。
“これは無理!”とは言わないメンバーが揃っているってことですね。KAZさんの歌は声域の広さや表情の豊かさが光っていますよ。
KAZ
僕、高校くらいまで変声期が来なくて、変声期が来たあともハイトーンが出る状態のまま低い声も出るようになったんです。だから、一般男性の低いところから女性キーのちょっと高いところまでは大体歌えるかと思います。それが僕の強みだと思っていて、ハイトーン系のヴォーカリストはハイトーンしか歌えないイメージが僕の中であるのですが、低い声も極めればヴォーカリストとしては唯一無二になれるんじゃないかと思うので、表現の幅広さに関しては、女性に比べて男性ヴォーカルは繊細さに欠けるところがあるように感じていて、自分はそれを払拭したい気持ちがあるんです。あとは、歌録りの時は感情を込めて、全身全霊で歌う。それを心掛け涙を流しながら歌った曲とかもありましたよ。今回のアルバムは全編を通していろんなヴォーカルアプローチをしているので、そういうところも楽しんでもらえるんじゃないかと思います。
間違いないです。そんな『THEMIS』は個性的かつ良質な楽曲とハイレベルなプレイが詰まった好盤に仕上がりました。今作のリリースを機にバンドが大きくスケールアップすることを感じていて、SLOTHREATの今後の活躍が本当に楽しみです。
克哉
ヘヴィミュージックというのは本国において未だに固定された層の間でしか広がらないものだと思うんですよ。中にはそういう括りの中で著名なバンドも少数はいるけど、いわゆるアングラ要素だったりコアでディープな要素のあるバンドがアンダーグラウンドシーンで終わってしまうのを本当にたくさん見てきました。そういう世間の中で、自分たちは自分らなりの本物のヘヴィミュージックをもっと幅広い層に届けたいという想いがあるんです。冒頭で話した“矛盾の共存”みたいなところで、僕らの音楽はコアなファンを納得させられる要素もあるし、ライトリスナーに良さを感じてもらえるキャッチーさもあると思う。そこを存分に発揮して突き詰めて、より多くの人に響く音楽を作っていきたいと思っています。
孝哉
ラウドミュージックも日本のライトリスナーの間でも少しずつ認知されてきていると思うけど、まだ理解が深まっていない状況なんですよね。どういうルーツがあって、こういう音楽をやっているのかが見えないのに、そこそこ人気が出ちゃっている人たちというのが結構多い。海外だとそういうことはなくて、しっかり深いところでヘヴィな音楽をやっている人たちが人気を得ていることが多いように感じます。日本にヘヴィミュージックをより浸透させるために、おこがましい言い方かもしれないけど、自分たちはヘヴィミュージックですでに名を馳せている人たちとは違う側面で燃料を投下できたらいいなと思っています。その上で自分たちの周りには本当にカッコ良いバンドとか、すごい才能を持った人がいっぱいいて、もちろん既に知られてる人たちもいますがそういう人たちみんなでさらに上がっていきたいという気持ちはありますね。あと、最近は奇をてらったクロスオーバーみたいなところで、アイドルとかまったく違うシーンの人たちと激しい音楽をやっているバンドが一緒にイベントをしたりすることが多いじゃないですか。自分たちはそういうことは安易にはやりたくなくて。活動としては正攻法でヘヴィミュージックを広めていきたいという気持ちが強いんです。
瀬希
『THEMIS』をいろんな人に聴いてほしいという思いがありますし、今はできないけどライブにきてほしいですね。あとは、孝哉も話したように、いい音源を作って、いいライブをするという当たり前のことを積み重ねていって、上にいけたらいいなと思う。地に足をつけて、活動していきたいです。
KAZ
今いろいろなシーンのバンドがいる中で、音源を聴いて“いいな”と思ってライヴに行ったけど、“あれ? ライヴが音源に劣ってる”みたいなことが結構あったりすると思うんですよ。僕らはそういうところをちゃんと突き詰めていって、音源に全身全霊で挑んでいる分ライブもパフォーマンスなど拘り抜いて、なおかつ演奏面でも歌唱面でも音源に劣らないバンドになっていきたいです。あとは、『THEMIS』は本当に自信作なので、いろんな人に聴いてほしいし、今は国内に向けて発信していますけど、海外でどれくらい今後僕らが通用するのかというところも試していきたいところです。
SHINYA
みんなに語られてしまって重複してしまうところがありますけど、克哉が言ったようにコアなリスナーから、あまり音楽を掘り下げないようなライトなリスナーまで巻き込んでいきたいというのはありますね。僕はSLOTHREATの楽曲には本当に自信を持っているんです。歌は作り込まれているのにキャッチーで聴きやすいし、よく聴くと楽器隊がすごくエクストリームなことをしているという両方の側面があるので、いろんな人に楽しんでもらえると思ってて。ヘヴィなバンドサウンドのアーティストが少ない今の国内のトップチャートに入る可能性も間違いなく持っていると思うので、SLOTHREATに少しでも興味を持った人はぜひ『THEMIS』を聴いてほしいです。
取材:村上孝之