【足立佳奈 インタビュー】
今の私だからこそ
作ることができたアルバム
“音楽はすぐ側にあります”、
この言葉が私を支えてくれている
そして、今作では20歳だからこそ作れた「20」という曲がありますよね。
はい。これは20歳になってから歌詞を書きました。20歳になっても、結局はやってみなくちゃ分からないことばかりだったんですよ。なので、1番の歌詞はアーティスト活動をしていて今思うことを好きなだけ言って、今後も頑張ろうという強い気持ちを込めて、2番は他の人の妬みから始まる悪口を陰で言うのではなくて、言いたいことがあるなら隠さないで言えばいいじゃんというリアルな気持ちを込めました。
急に気持ちを吐き出した歌詞になるのはすごく刺激的ですよね。
自分でも歌っていてスカッとしました(笑)。この曲を歌ってから、当たり前にみんなの日常にあふれている強めのワードを入れても悪くないって思うようになりました。
そういうことを歌ってもいいんだって思えたのかもしれないですね。
そう思います。これまでは“いい子でいなくちゃいけないのかな”とか思っていたんですが、“でも、いい子っていったいどういうことなんだろう”とも考えていて。ただ静かにすればいいわけではなくて、思ったことをちゃんと素直に言えることもいい子の条件のひとつなんじゃないかって思うようになったんです。
デビュー時にインタビューした時は、まだ子供な一面が見えていましたが、たった3年でものすごく大人になった印象が…。
あはは。自分的にも落ち着いたと思います。自分がなりたい理想像ができて、そうなるために曲の方向性も考えていかなくちゃいけないって思ったんです。「little flower」では歌い方も大人っぽく変えて、自分の中で大きなギアチェンジを図ったので、そう思ってもらえるのかもしれないです。嬉しいです(笑)。
年々歌詞や曲が変化していくのは必然ですしね。
そうですね。本当にスポンジのようにいろんなことを吸収しているのが自分でも分かるんですよ。ライヴを観れば“こんな曲をやってみたい!”って思うし、“お客さんとの関係性がいいな”とも思ったり。いろんなことにアンテナを張っていないと逃しちゃいけないような大事なものがたくさんあるので、今は毎日がすごく楽しいです。
「music」はすごく印象的な曲でした。
中学3年生の時に「大地讃頌」という合唱曲を卒業式に歌ったんです。その時に、音楽の先生が“音楽はいつもあなたたちの側にあります”と言ってくれたんですよ。その時、その言葉にハッとさせられて。受験の時やオーディションの時とか“どうしたらいいんだろう”という際に、その言葉をもらってガラッと考え方が変わったんです。確かに、友達と離れたり失ったとしても、家族と意見のぶつかり合いで喧嘩になったとしても、音楽は常に側にあるということに気付いたんです。そう考えたら私はひとりじゃないし、音楽という友達がいると思うようになったんですね。そんな私の音楽に対する想いを、この曲に詰め込みました。
本当に大事な曲になりましたね。
はい。あとは、最後の「二子玉川」は二子玉川でレイトショーを観た帰りに、電車の向かいに座っていたカップルを観て、思い浮かんだ曲なんです。自分ではない人が主人公の歌詞が生まれたのは、すごく大きな変化なのかもしれません。
そんな個性的な曲が詰め込まれたアルバムのタイトルは“I”と名付けられていますが、どんな意味が込められているのでしょうか?
“I”か“ME”で悩んだんですが、“I”のほうがひとりの大人の女性という感じがしますし、真っ直ぐで芯がぶれない“I”という文字にも惹かれたので、このタイトルにしました。
今の等身大の曲が詰まっているからこそ、10年後に聴いたらまた違う印象を受けるんでしょうね。
そうだと思います。それもまたすごく楽しみですね。
取材:吉田可奈