【むぎ(猫) インタビュー】
もしも大切なものがなかったら
最初に自分を大事にしてほしい
誰かを傷付けたくはないし、
やさしい人が増えてほしい
アルバム初回盤のDVDには昨年11月に東京キネマ倶楽部で行なわれたワンマンの模様も収められていますが、途中に出てくる映像もどれも頓智が利いていて、なんてアイディア豊富なんだろう!と感動してしまいました。
あ、嬉しいです! むぎはシュールな笑いが大好きなんですよね。なので、そういう映像を流して、その間に息切れを休めたりとか…むぎ、あんまり耐久力がないですから(笑)。ただ、ああいう映像は思い付くのがとっても大変なんです。これを観て傷付く人がいないように…っていう細心の注意で考えるので、ほんとにお笑いっていうのは難しいですね。
その“やさしさ”はアーティスト・むぎの一番の特徴であり、武器ですよね。
むぎは1度死んで今、2回目のニャン生を生きてるから、命について考えることがとても多いんですね。だから、誰かを傷付けたりはしたくないし、やさしい人が増えたらいいなぁって本当に思ってるんです。むぎのライヴを観たあとに、後ろで腕組んでた野郎どもが“今日なんかやさしい気持ちになった!”って言って帰っていったりすると、もうほんとに嬉しいんですよ! 早くうちに帰って我が子を大事にしてあげようとか、飼ってる猫ちゃんに早く会いたいとか、そうやって大切な存在を大事にしたくなったって言ってもらえるのが、一番“あぁ、ライヴやって良かったな”と感じる瞬間ですね。
では、ちょっと意地悪な質問を。そういった大切な存在が思い当たらない人はどうしたらいいんでしょう?
自分を大事にしてほしいなって思います。人を大事にする以前に、一番大切にしてほしいのは“自分”なんですよ。むぎも自分が一番大事だし、自分が大事だからこそ人にやさしくできる。だから、みんながまずは自分にやさしくなってくれたらいいなと思います。その想いが如実に表れてるのが、アルバム6曲目の「ギフテッド」なんですよ。
なるほど。全ての存在を肯定してくれる歌ですもんね。ライヴでの現金差し入れ制度も、そのやさしさの表れなんでしょうか?
そうですね。あれもひょんなことから始まって、ある日、むぎの胃袋では収まらない量の差し入れをいただいたんですよ。そこで同じ猫の胃袋に入るならみんなも納得してくれるんじゃないかと考えて、辛い想いをしてる猫ちゃんたちに物資やフードを届けようと“差し入れは現金で”っていうお願いをしたんです。それを沖縄のNPO団体に寄付しますからって。もしかしたら“現金を集めるなんておかしい!”って言われるかもしれないなと不安になりながらも。一応、まだ誰にも怒られてないです(笑)。
本当に素敵な選択だと思います。では、そんなむぎさんの今後の夢を教えてください。
それがむぎは夢とかビジョンを持ったことがなくて…。大きなフェスに出るぞ!って考えてたわけでもなかったのに『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演できたり、東京の事務所からお声が掛かったりして。それはむぎが面白いものをステージで提供して、みんなを笑顔にするっていうことを続けてきたからだと思うんです。もちろんチャンスがあれば、武道館とかだって絶対に立ちたいですよ。でも、全てはタイミングと運だと思うから、まずはそれを逃さないように。むぎにしかできない、むぎだからこそできることを探したいですね。特にライヴには本当に力を注いでいるので、どうか1回、むぎに会いに来てほしいです。むぎもなるべくみなさんの近くに、“君に会いに”行きますので!
現在、沖縄を拠点に活動されているむぎさんからすると、なかなか移動が大変になりますがそこは変わらず?
沖縄に住みたいなと思います。のんびりしてるし、音楽も面白いし、食べ物も飲み物も美味しいし…水が合うって言うんですかね?
そういった沖縄の和やかな風土が、むぎさんの音楽に影響を与えている部分もあるでしょうしね。それに沖縄では、CMにも登場されているとか。
はい。琉球銀行のペット保険のCMに出演しました。あと、「天国かもしれない」(自主制作音源『天国かもしれない』収録曲)が沖縄LAWSONのおでんCM曲になった時は、すごく嬉しかったですね。むぎは出てなくて曲だけの起用だったので、ミュージシャンとして曲を評価してもらえたんだ!って。あとは、アニマックスの『うたのじかん』用に書き下ろした「るすばん天国」をライヴでやった時、それまで興味なさそうにしてた小学生の男の子が、急に“えっ、この曲知ってる!”って、その後のむぎを見る目が変わったことがあったんですよ。“この猫、有名な猫じゃん!”って言われて“えへへ”ってなったので、そういうことが今後増えたらすごく嬉しいですね。
取材:清水素子