栗山民也が原発事故を取りまく人間ド
ラマを演出 舞台『チルドレン』出演
は高畑淳子、鶴見辰吾、若村麻由美

2018年9月に、ルーシー・カークウッド作『チルドレン』を栗山民也の演出で上演することが発表された。カークウッドの作品を上演するのは、日本で本作が初となる。
ルーシー・カークウッドは、1984年生まれの弱冠33歳というイギリス演劇界期待の若手女流作家。彼女が執筆した、現代のアメリカやそこで暮らす外国人が抱える問題をひも解いた意欲作『チャイアメリカ』は、2014年にローレンス・オリヴィエ賞作品賞を受賞している。
今回日本での上演が決まった『チルドレン(原題:”THE CHILDREN”)』は、カークウッドがロイヤル・コート・シアターの招きで書き下ろした作品。2016年冬に上演され、今冬、NYブロードウェイでも上演が始まった話題の新作ストレートプレイだ。
<ストーリー>
巨大地震の影響で、大津波が起き、原発事故が起きた。津波の浸水で家を追われたロビン(鶴見辰吾)とヘイゼル(高畑淳子)の夫婦が移り住んだコテージ。そこに20数年ぶりに女友達ローズ(若村麻由美)が訪ねてくる。
3人はかつて原子力発電所で一緒に働いていた核技術者同士。ローズは、ロビンとヘイゼルに「原発事故処理で若手技師たちが危険に侵されている。事故処理に参加すべきは、わたしたちではないか」と持ちかける。
原発から遠く離れた海辺のコテージに鳴り響くガイガーカウンター。リタイヤした男女3人の科学技術者たちは、静かに決断を下す──。

仮チラシ
東イギリスを舞台にしていながらも、実際に日本で起きた事故に触発され、執筆された本作。カークウッドは、シニアが、若者を被曝させないために現場作業を肩替りすることを呼び掛けたという、日本での実際のニュースを聞き、着想を得たという。NYタイムズは本作を次のように評している。
NYタイムズ(2017年12月12日付け)劇評<抜粋>
地震、津波、そして原子炉の停止。
サミュエル・J・フリードマン劇場で開幕した「チルドレン」が恐ろしいのは、脚本のルーシー・カークウッドは単に物語を思いついたのではなく、そのストーリーが、2011年に福島で起きた実際の事故に酷似していることだ。
「1千万年に一度の惨事だ」と、かつてイギリス東岸の架空の原発建設に携わった物理学者、ローズは言う。
悪寒とサスペンスに満ちた傑作でありながら、主題は反原発ではない。カークウッドが描きたかった過ちや責任とは、より巨大で、解決不可能な物事であるが、劇中観客はそのことを少しずつ理解し始める。
劇中、表出するテーマは、(異なる立場や意見の人々にも共通して存在する)人間の身勝手さではないか。ヘイゼルの気取った台詞「来た時よりも美しくして、その場を去るべ きだ」は、後世の子供たちへ遺すべき地球を考えた時、何を意味するのだろうか?
地球は既にひどい過ちの繰り返しで、染みだらけになってはいないか。ちまたの子供じみた親たちと、そしてその子供たちには、カークウッドのつけたタイトル「THE CHILDREN」 は両意的に響くかもしれない。幼稚で身勝手なのは一体どちらだろうか?

かつて原子力発電所で一緒に働いていた、リタイヤした3人の元・核技術者を演じるのは、高畑淳子、鶴見辰吾、若村麻由美。日本の演劇界の第一線で活躍する実力派俳優が集結した。
演出を担当するのは、日本を代表する演出家・栗山民也。弱冠30歳にしてローレンス・オリヴィエ賞を受賞した英国の若手女流作家の新作を通して、栗山民也がどのような舞台を現出させるのか。上質な人間ドラマに期待したい。
演出・栗山民也コメント
人間は、自ら作り出した科学に、自ら潰されていく。地球は、その人間たちの過ちの繰り返しを、ただ黙って受けているだけなのか。「THE CHILDREN」=「子供たち」というタイトルの意味を、地球全体が考える時なのだ、と思う。
公演情報

パルコ・プロデュース2018 「チルドレン」

作:ルーシー・カークウッド    
演出:栗山民也 
翻訳:小田島恒志
出演:高畑淳子 鶴見辰吾 若村麻由美
2018年9月 彩の国さいたま芸術劇場 世田谷パブリックシアター
他、10月日本巡演予定。

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