【奥華子】みんなに支えてもらってき
たのでみんなと一緒に作りたかった
2005年のデビューから7年の間に発表した全楽曲の中から、ファンのリクエストを基に奥 華子自らが“恋のうた”と“愛のうた”にセレクトした初のベストアルバム『奥華子BEST -My Letters-』。本作を制作する上での考えや、収録曲に対する思いを語ってもらった。
取材:石田博嗣
デビュー以降の楽曲を“恋のうた”と“愛のうた”に分けて収録した初のベストアルバムがリリースされましたが、なぜこの時期にベストを出そうと?
実は前アルバム『good-bye』を作っている時から“これを出したら、次はベストだ!”って思ってたんですよ。なぜそう思ったかと言うと、最近、若い世代の女の子がネットとかで“奥 華子、いいよね”って言ってくれていたり、ライヴでも若い女の子がすごく増えてきて、奥 華子の失恋ソングに注目してくれている…だけど、“いつもYouTubeで聴いてます”って(笑)。CDは持っていないけど、奥 華子のことを知っている人がすごく多いんだなって実感としてあったんですね。そういう人たちに“もっとこんな曲があるし、失恋ソングだけじゃないんだよ”って知ってもらいたい思いがあって、気軽に手にとってもらえるベストアルバムがあったらいいなって思ったんです。
『good-bye』の時のインタビューで“新しい自分に出会えた”とおっしゃっていたので、ひとつの区切りみたいな感覚もあったのでしょうね。
そうなんですよね。デビュー以降っていうのは“奥 華子”という自分の世界に頑なになっていたところがあったんですけど、“あっ、そういうのもアリかも”ってなったのが『good-bye』だったんで。なので、ひと呼吸置きたかった…これまでの7年間、ずっと同じサイクルでやってきたので。アルバムを作って、ツアーをしてって。だから、このタイミングで一回立ち止まって、ちゃんと地に足を着けて音楽と向き合いたいなって。その前に今までの作品を出し切りたいと思ったんですよ。
楽曲のセレクトもネットでファンの方にリクエストしてもらって、それを基に選曲されたそうですが。
自分の中で“この曲を入れたい”っていうのはあったんですけど、実際にみんなが聴きたい曲を入れないと意味がないと思って、リクエストしてもらって…4000通ぐらい届いたんですけど、その方々の名前もアルバムのクレジットに書きたいと思ったし。やっぱり、みんなに支えてもらってきたので、みんなと一緒に作りたかったんですよ。まぁ、最終的には自分で決めましたけどね(笑)。あと、その時に出したものがその曲の全てだと思うのでリアレンジもしたくないと思ってて…ただ、『恋』と『元気でいてね』だけはライヴの中で変わってきた…全部の曲が変わってはいるんですけど、その2曲はすごく育った曲だったので、録り直しました。
新曲の「愛を見つけた場所」も収録されていますが、これはこのベスト用に作ったものになるのですか?
ベスト用に新曲を入れたいと思って作りました。デビューする時に自分はどういう曲を歌っていきたいんだろうと思って作った『やさしい花』という曲が“愛のうた”に入っているんですけど、そのアンサーソングというか、思いをつなげた曲を作りたいと思って。『やさしい花』は男性目線だったので、『愛を見つけた場所』は女性目線にして…なので、それも“愛のうた”に入れて。
その“恋のうた”と“愛のうた”に振り分けた基準とは?
言葉にするのは難しいんですけど、自分の中での棲み分けがあって…『恋』という曲のタイトルを付ける時に、まず“恋”を辞書で調べたんですよ。その時に“自分が思いを寄せる人を独り占めにしたい欲求”って書いてあって、恋って綺麗なものじゃないんだと思ったんですね。恋って自分の思いであって、愛はもっと大きなもの…自分の好きな人が幸せだったらって思えることってすごいじゃないですか。だから、誰かのためだったり、自分だけじゃないっていうものが愛なのかなって。そういう基準で振り分けたってのはありますね。
それでも15曲ずつセレクトするのは大変だったのでは?
切りがないんですよね。だから、本当に独断と偏見による選曲で(笑)。『タイムカード』や『元気でいてね』や『君の笑顔』は、今まで活動してきた中でフックとなった曲なんですけど、そういうものも入れたかったんですよ。特に『タイムカード』は路上ライヴをやっている時に、本当にファンの方に支えてもらったので…当時はバイト生活だったから、自分の居場所がバイト先しかなかったんですね。でも、自分を求めてくれるっていうことの喜びを路上ライヴで知ることができて、そこが今でも奥 華子の根本になっているんですよ。なので、この曲は入れたいと思って。比較的、“愛のうた”は自分の活動とリンクしている曲が入っていると思います。
では、“恋のうた”で思い入れの強い曲は?
“恋のうた”には人気のある曲が入ってるんですね。冒頭で言ったような若い世代の子がネットとかで話題にしている曲とかが中心になってて…って、分けてみたらそうなってたんですよ。そんな中でも、『シンデレラ』は思い入れがありますね。この曲は頑張った奥 華子なので(笑)
初めてバンドをイメージして作った曲ですものね。
そうですね。気持ちが内に向かってないっていう意味でも。逆に『トランプ』はかなり内側を向いている…個人的にも好きな曲だから入れたんですね。そこの対比が面白いなって。一般的には『シンデレラ』のようなポップな感じのほうが受け入れられやすいんだろうけど、奥 華子の地というか、個人的には『トランプ』みたいな曲が好きなんですよ。その両方があるからいいのかなって。内に向かってばかりいたら届かないし、外に向けたものばかりだと自分が分からなくなるし。
だからこそ、ベストだからといい曲ばかり並べたものではなく、“これが奥 華子なんです”というものになりましたね。このベストが出た後、年明け早々にはZeppツアーが控えていますが、これが1日2回公演という。
そうなんです! 毎年1回バンドでライヴをやらせてもらっているんですけど、年末はみんな忙しいから、今回は年明けでいいねってなって、どうせなら弾き語りもやりたいってことで、昼間は弾き語りで、夜はバンドでやることになったんです。Zeppでやるのは初めてで…でも、奥 華子のファンの方は年齢層が幅広いので、イスありなんですけどね(笑)。バンドでのライヴは今回のベストアルバムにつなげてやりたいと思っているんですけど、弾き語りのほうは“Last Letter”ってタイトルを付けたんですよ。前回の弾き語りツアーが“5th Letter”だったので、ここで一回区切りを付けようと思って。でも、まだどんな内容にするかは決めてません(笑)。今までまったくライヴで歌ってない曲ばかりをやるとか、今までを振り返るものにするとか、これから考えたいと思います。
・・・
『奥華子BEST -My Letters-』2012年10月17日発売PONY CANYON
- スペシャル盤(3CD + DVD 付)
- PCCA-03692 4900円
- HANAKO BOX(3CD + 2DVD 付)
- PCCA-03692 8750円
- ※完全生産限定
オクハナコ:シンガーソングライター。キーボード弾き語りによる路上ライブをはじめ1年間で2万枚のCDを手売りし驚異的な集客力が話題となり2005年メジャーデビュー。劇場版アニメーション『時をかける少女』の主題歌「ガーネット」で注目を集める。聴く人の心にまっすぐ届く唯一無二の歌声は年齢問わず幅広く支持されている。また数々のCMソングや楽曲提供を手掛けるなど活躍の場を広げている。奥華子 オフィシャルHP