【塩ノ谷 早耶香】どちらの曲も言葉
を映像化して歌いました
透明感とどこか影を抱いた雰囲気が同居する佇まい。しなやかさと凛とした強さを兼ね備えた歌声。そして、新たに見せた表情。両A 面シングルの2曲に込められた彼女の歌世界は、さらなる深化を遂げている。
取材:竹内美保
47都道府県を訪ねて歌う『うた修行』の真っ只中ですが、反応や手応えはいかがですか?
本当にたくさんの方々との出会いがあって、その中で初めて経験させていただくこともいっぱいあって。アーティストとしても、塩ノ谷 早耶香というひとりの人間としても、もっともっと成長していきたいなと感じられる毎日ですね。あと、どの場所でも私の歌を真剣に聴いてくださるので、“私自身もより真剣に歌に向き合っていかなければ。見守ってくださる方々に恩返しをしたい”ということも強く感じる旅でもあります。
歌だけではなく、精神的な修行の場でもあるみたいですね。人としての成長が歌にも反映するでしょうし。
そうですね。歌の技術はもちろんなんですけど、人間としても大きくなって成長していこうというのが『うた修行』の目標なので。そこでいろいろ経験をすることによって、自分自身の中で新たな感情を手に入れることで、より表現も深くなると思いますし、活かせることもたくさん出てくると思いますし。新曲の「片恋」と「Smile again」も歌わせていただいているんですが、特に「Smile again」はすごい笑顔で聴いてくださる方もいれば、泣きながら聴いてくださる方もいて…みなさんの表情でその曲の持つ一面を知るということもあるんです。
「片恋」のほうは切ない楽曲ですけれど、その切なさは幸せな時間があったからこそ抱ける感情なんだなということも、早耶香さんの歌声から感じることができますしね。
ほんとですか!? それは私の中でもすごくイメージしたところなんです。すごく切ない曲に聴こえるからこそ、重たい部分もあるけど、どこかピュアな歌声だったり、一瞬明るく聴こえるような声質を入れてみたり。この曲を聴いた時に“こんな思いをするぐらいなんだから、きっとすごく幸せだったんだろうな”っていう、その幸せの時の映像が思い浮かぶからこそより切ないというか…そういう作品だと思います。
心情的にはかなり複雑な部分が描かれていますし。
ひとつの恋が終わってしまった時に交錯する、いろいろな感情…“苦しい”と思いながら、“その出会いにもきっと意味があったんだよね”って噛み締めるような曲なので、今までで一番私の中で感情的にならなければならなかったといいますか。この曲は自分自身に問いかけているような歌なので、深く強い思いをまず自分自身に伝えるような意識を持ってレコーディングに臨みましたし、ステージでもそういう気持ちで歌ってます。特に大サビでワーッと盛り上がった後、プツンと糸が切れたかのように次の音で静かになって落ちサビに入る、その流れはすごく大切に表現しているところですね。
その対極の色を持つのが「Smile again」で。リズムもちょっと跳ねたポップなサウンドですね。
すごく明るい曲ですよね。歌詞もポジティブですし。たぶん、この曲はみなさんの想像の中にない私が表れると思ったので、“どういう塩ノ谷早耶香で歌うのが一番いいんだろう?”ってレコーディングをするにあたって結構悩んだんです。ここまで笑顔になれる曲って、あまり歌ったことがなかったですし。でも、私自身も決してマイナス指向ではないので、“素を出して歌おう。19歳の女の子の部分、等身大を出せばいいな”と思って、その気持ちそのままで歌いました。この曲はライヴで聴いていただくことにもすごく意味があって。その場所にいらっしゃるみなさんと私が思いを直接通わせるというか、お互いが友達のような関係で“一緒に笑顔で前を向いていこうね”という雰囲気で歌える曲なので。
近しい、親しい友達に語りかけているような歌詞ですし、ちょっと人懐っこい歌声も聴けますしね。
そうなんです。ほんとにガールズトークの一部分を取り出してポン!と曲にしたような歌詞なので。女の子独特の感情だから、女性の方には私と会話をしているような感覚で聴いていただけたらと思いますし、ちょっと応援ソング的な部分もあるので女の子に限らず、男性の方にも聴いていただいて少しでもその方を元気付けられたらいいなと思ってます。
「片恋」と「Smile again」、世界観も表現方法もまったく異なりますが、すごく2曲のバランスが良くて。しかも、両A面だとそれぞれの独立性が強い場合が多いんですけど、この2曲はループして続けて聴いていたくなります。
ありがとうございます。それぞれのカラーがはっきりしていますし、それぞれにしっかりとした感情が表れていますし、両極端の曲ではあるんですけど、「片恋」はどちらかと言うと自分の世界、「Smile again」は私と友達の関係だったり、私からの応援歌であったりで…そういう意味では、「片恋」でまずひとりの世界に浸っていただいた後に、“私はひとりじゃないんだ”ということを「Smile again」で感じていただけたら、より明るい気持ちになれると思いますし、何度も繰り返し聴いていただくことで、映像もはっきりと浮かんでくるんじゃないかなって思います。私自身、どちらの曲も言葉を映像化しながら歌っているので。でも、自由に聴いてもらえるのが一番ですね、私の歌は。自由に聴いて、自分の世界でその人自身のものにしてもらいたいです。私自身も自由に歌いたいと思っていますので(笑顔)。
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