小島和宏 HKT48台湾密航記2:前夜
祭潜入編 

 これはマズい。とにかく、急いで空港の外に出る必要がある。

 だが、ここからは拍子抜けするほどスピーディーに事が進んだ。そもそも、海外に行くのに(もしくは海外から帰ってくるのに)、機内持ち込みの荷物だけ、という人は少ない。さらに到着した台北松山空港はかなりコンパクトなつくりで乗降客もさほど多くなく、1分も並ぶことなく入国審査を受けられ、気がつけば、飛行機を降りてから、わずか10分後には、もうタクシー乗り場まで到達していた。

 ただ、今回はたった一人での行動。中国語をしゃべれない(大学時代、2年間、授業を受けたはずなのになぁ~)自分にとって、ここから先もハードルが高い。とりあえず、運転手に台湾のガイドブックの表紙を見せ、台北101の写真を指差して、堂々と日本語で「ここ!」と伝えると、タクシーは無言で動きはじめた。

 本当は「時間がないから、急いでくれ」とも伝えたかったが、そんな言語スキルは持ち合わせていない(ちなみに滞在中、すべて日本語で押し通しました)。ところが、そんなことは伝える必要なんてなかった。噂には聞いていたが、台湾のタクシーというか車の運転はダイナミックかつスリリング! ガンガン車線変更し、グイグイ前へと出ていくのだ。

 おかげで囲み会見がスタートする数分前に会場までたどりつくことができた。日本から取材に来ている人たちと顔を合わせてホッとひと息。当然のことながら、みなさん、もっと時間に余裕を持って台北入りしている。こんな綱渡りをしているのは僕だけだ。 会見前にメンバーと話をすると、彼女たちは市街地からかなり離れた台湾桃園国際空港に到着し、いささか飛行機が遅れたため、まっすぐ会場入りした、という。つまり、まだ台湾らしさをまったく味わっていないわけで、台湾に来た、という実感が沸かないまま記者会見に臨むのは、大変だなぁ、と感じた。 会見場に入ると、地元のメディアの記者やカメラがズラリ。そこに7人のメンバーが登場して、質問に答える、という形式で会見は進められた。

 指原莉乃が「せっかく台湾に来たので、名物の小籠包を100個食べたい」とナイスなコメントを出すも、現地の記者の反応は微妙な空気。おそらく、台湾にやってきた芸能人がみんな口にする“お約束”なんだろう。

 ところが、これに反応したメンバーたちが「私は担々麺!」「かき氷が食べたい!」と口々に絶対に食べたい台湾グルメを連呼しだすと、報道陣も「おっ、この子たち、本当に調べてきているぞ」という感じで、食いつきはじめた。なんの計算もなく、無邪気に食べたいものを口にしただけなのだろうが、そんな素直さこそが「言葉の壁」を軽々と超えてしまう最強の武器でもあるのだ。

 そう、今回の台湾公演の裏テーマはいかにして「言葉の壁」を乗り超えるか。その答えは、前夜祭のステージですぐに発揮されることになる(つづく)。

次回「HKT48台湾密航記3:地上390メートル決戦」をお楽しみに!

小島和宏 1968年生まれ。週刊プロレス記者として8年間活躍し、現在はフリーライター&編集者として、エンタメ分野を中心に活躍。近年はももクロやAKB48などのアイドルレポートでファンの支持を得ている。

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