道重さゆみが後輩に見せた景色……娘
。が横浜アリーナに帰ってきた!

 道重さゆみの4329日間の集大成である本公演のライブレポートの後編をお送りする。

[前編]
『彼と一緒にお店がしたい』の曲中で〝お気に入り〟メンバーである鞘師の唇を奪った道重。MCでは「さゆみ、やりましたー! こんな大勢の前での、(鞘師)りほりほとの公開キスはとっても気持ちよかったですー!」とご満悦。

 ここで特別ゲストとして初代リーダー中澤裕子、そして27日から新ハロー!プロジェクトリーダーに就任する℃-ute矢島舞美、同期の田中れいなが登場し、卒業を祝福する。「しげちゃん、昔から可愛かったけど、今日本当に可愛いよ!」という中澤からの言葉には「中澤さん、なんでそんなに優しいんですか?」「可愛いのピークを今日に仕上げてきました!」とトークも絶好調だ。矢島から毒舌トークを振りまきながらも裏では優しかったというキャラ崩壊エピソードが暴露された後、盟友・田中れいなも「本当に同期? 信じられない!」と同期・道重の成長に驚いきつつも「12年間お疲れ様でした!」としっかりした真面目なメッセージが贈られた。

 ここからは本ツアーで3パターン用意されていたメドレーを全て濃縮した長時間のスペシャルバージョンでお見舞いする。『シルバーの腕時計』では新垣里沙パートを石田が引き継ぎ軽快なラップを披露し、往年の名曲を新アレンジで連打。

 そしてメドレーも中盤に差し掛かろうかという頃、『ABCD E-cha E-chaしたい』からは道重がメインステージにとどまり、それ以外のメンバーがセンターステージで歌唱した。道重が足を痛めてしまい、ダンスパフォーマンスが出来なくなってのとっさの判断だったことが後のMCの際にわかったのだが、(後輩が歌い上げる様子を後方のステージから見守るという、卒業後を仮想した演出か……?)と思わせてしまう程の完璧さだった。

『好きだな君が』で〝さゆみずき〟として道重と2人で歌うはずだった譜久村が機転を利かせて全速力でメインステージを走り、道重のサイドに駆け寄り無事歌いきった。イメージカラーが同じピンクで、立ち位置も対になることが多かったこのユニットの最後のステージということで会場のボルテージも高まった。

「もっと声はって行けますかー?!」という新サブリーダー・生田の煽りから本編もラストスパート。道重のデビュー曲である『シャボン玉』を全員で歌唱した。2013年5月に田中れいな卒業公演のラストをこの曲で飾ってからわずか1年半。メンバー全員の声量が増し、より迫力のあるパフォーマンスをみせてくれた。鈴木香音の厚みのある歌も非常に素晴らしい。

 そして道重体制の出発・EDM路線のきっかけとなった『One・Two・Three』、CMソングとして大量露出を叶えた『Password is 0』で駆け抜ける。「皆さんも一緒に歌ってください」という曲振りからは本編ラストの『Be Alive』。コンサートでも定番曲となっている、優しいナンバーで会場もふんわりとした幸せで包まれた。 アンコールでは〝さゆみん〟コールが響くがなかなか出てきてくれない。中盤、足を痛めていたようにも見えたのでファンが心配する中、メンバーが現れる。

 譜久村の「アンコール1曲目は、私たちから道重さんの感謝の気持ちを込めて歌います」という言葉から、『見返り美人』からスタート。

 真っ白なワンピースに身を包んだメンバーがメインステージで歌うのを背にして、晴れ着姿の道重がセンターステージまで花道を歩き出す。演歌調で憂いがあるメロディーに、後輩からの想いが詰まった歌詞。会場にいるこちらもつい目頭が熱くってしまう。声を出さずにすすり泣くファンも多く目についた。

 明けのMCではつった足が痛んだのか一時期踞ってしまう場面もあったが、メンバーからの贈る言葉を受け取る。静岡公演が台風で中止になった時にファンを想って泣いていた姿や、甘え方がわからずにいた工藤に優しく積極的に声をかけていたこと、後輩達から、道重とのエピソードや感謝の気持ちがひとつひとつ、紡がれていく。

 石田からは「道重さんが笑っているだけで幸せです。だから、笑ってください」という熱いメッセージ。鞘師からは「いつもかっこいい道重さんに、何度も嫉妬してしまうこともありました」という意外な発言が飛び出す。これには道重も困惑し「え!? え!? 嫉妬、何で!?」とパニックに。グループを引っ張るために奮闘する道重の姿は、優等生のエース・鞘師にとっても偉大であったということ。

 最後は「私、道重さんに対する感情表現が上手じゃなかったんですけど、今日ははっきり言わせてください。道重さん、本当に本当に大好きです!」と絶叫。会場からは弾けるほどの拍手が沸き起こった。足を痛めてしまうというアクシデントで急遽椅子が用意されたが、道重は最後までしっかりと自分の足で立って、メンバーと抱擁を交わした。

 セレモニーの後、沢山の花があしらわれたお姫様のようなドレスで登場した道重が再び現れる。「泣かずにしっかりみなさんに気持ちを伝えたいと思うので、聞いてください」と、手紙を読むこともなく、ピンクのサイリウムで埋め尽くされた会場に真っすぐと視線を合わせたまま、自分の言葉でファンに感謝の気持ちを述べた。

「芸能界に興味があったわけでもなくて、歌が好きとかダンスがやりたいとか、そういう気持ちも全然なくて。ただ、〝モーニング娘。が好き〟という気持ちだけでここにやってきました」、「加入して何年かソロパートが全然なくて、ステージに自分の立ち位置はあるのに、そこに居場所がない気がして、(私ってモーニング娘。に必要あるのかな……?)と感じた事もありました。でも、〝モーニング娘。が好き〟という気持ちだけは一度もブレずにここまでやってきました」と、その黒く大きな瞳をキラキラとさせながら言い切った。
 気が遠くなる程の長い間、後列の歌割りも無いポジションから、ただひたむきに、真っすぐに、自分の仕事を全うして前進した努力が実を結んだ。地方のラジオでも一切手を抜かずにトークスキルを磨いた。それがきっかけで、ついにはバラエティーや歌番組の大量露出を獲得。グループを4年振りに横浜アリーナまで導いたのだ。

「私は、(後輩に)この景色を見せてあげたかったんです。これが私にできる最後の恩返しです。今回は私が卒業ということで立つことができたけど、これからは単独のコンサートでみんなにもこの景色を見てほしい。そして私の知らなかったような、もっと大きな景色をみんなに見てほしい。その時は、みんなから見る景色の一部に、さゆみもいると思います」

 グループを離れたら、もう同じ方向からの景色は見られないけれど、ならば私は景色になる。ずっとモーニング娘。応援し続ける、という感動的なスピーチには、会場もすすり泣きからついには声をあげて号泣する人も出てくる程だった。

 そして「私の人生の始まりの曲、この曲を歌ってモーニング娘。になりました。心を込めて歌います」と選んだ卒業曲、『赤いフリージア』を一人で歌いきる。オーディションで泣きべそをかきながらオドオドとしていた彼女はもういない。12年間、アイドルとしての責務を全うし、ここに立っているのだ。

 そしてオリコン1位を獲得した思い出の曲『歩いてる』を歌う。卒業セレモニーのソロ曲だと思うと、メンバーと一緒に歌いきった。メンバーと目配せをし、全員が残りわずかなステージを噛み締めるように泣き笑いを浮かべていた。

「それでは、次が本当に本当にラストの曲になります。モーニング娘。道重さゆみが最後に歌う曲、そして10人でのラストパフォーマンス、行きますよ!」と『Happy大作戦』で締めくくり。アイドル人生のラストは、次の世代への希望を繋ぐ前向きな楽曲を選んだ。

 終演後、客席の近くまで手をふって駆け抜け、そして深々とお辞儀をして去って行った。アイドル・道重さゆみは最後まで礼儀正しく、ファンを想って駆け抜けて行った。

 道重さゆみは、間違いなく女神だった。出会った人々を全てを愛で包み込み、そして軽やかに去って行った。彼女が歌う姿は、もしかしたらもう目にすることは出来ないかもしれない。それでも、アイドル・道重さゆみ伝説はファンの間で神話のように語り継がれることであろう。




モーニング娘。’14 セットリスト

1.TIKI BUN
2.わがまま 気のまま 愛のジョーク
3.What is LOVE?
4.時空を超え 宇宙を超え
5.Do it! Now
6.明日を作るのは君
7.Fantasyが始まる
8.I WISH (updated)
9.シャバダバ ドゥ~
10.笑顔の君は太陽さ
11.彼と一緒にお店がしたい!
12.スペシャルメドレー
 シルバーの腕時計
 Help me!!(updated)
 恋愛レボリューション21(updated)
 恋愛ハンター(updated)
 ラララのピピピ
 ABCD E-cha E-chaしたい
 ワクテカ Take a chance
 ブレインストーミング
 好きだな君が
 この地球の平和を本気で願ってるんだよ!
 青春コレクション
 LOVEマシーン
 Give me 愛

13.シャボン玉
14.One・Two・Three
15.Password is 0
16.Be Alive


17.見返り美人

18.赤いフリージア
19.歩いてる
20.Happy大作戦




前編
achico 寝ても覚めてもアイドルポップ!なOL / フリーライター。東京生まれH!P POP育ち。日々、アイドルに踊らされています。

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