陳内将×梅津瑞樹、あふれるコンビ愛
「もはや相思相愛」~舞台『あいつが
上手で下手が僕で』-決戦前夜篇-イン
タビュー

芸人たちの青春群像劇を描く『あいつが上手で下手が僕で』(通称:カミシモ)のシーズン3がスタート。第一弾となる「-決戦前夜篇-」と題した舞台は、陳内将が演じる現多英一と梅津瑞樹が演じる天野守による「アマゲン」が主軸に。取材撮影から息ぴったりな様子を見せた2人の対談からは、シーズン1から築き上げてきたコンビ愛があふれていた。

ーー今日の装いは、メインビジュアルよりも華やかさがパワーアップしていますね。

陳内:オーラが出ちゃってますよね。パチファン(お笑い賞レース「38(サンパチ)ファンタジスタ」)2回戦突破しちゃったんで。(隣の梅津を見て)あ、キービジュアルにいない人がいる!
梅津:陳さんだって金髪じゃなくなってるじゃないですか(笑)。撮影を経てもなおビジュアルはどんどん変化していますから。本番の衣裳や髪型がどうなってるのか、僕らもまだわかりません。
ーー改めて、シーズン3の制作決定と今作のストーリーについて感想をお聞かせください。
梅津:よくここまで続いたなと。まず何よりそこが最も素晴らしい。
陳内:僕らシーズン2の舞台は出てないですし、ドラマのほうでも深く関与する役どころではなかった。感覚的にはとても久しぶりな気もしつつ、今作では物語の真ん中にアマゲンを据えていただいているので、初めてのような感覚も持たせてもらっています。
梅津:僕らが真ん中というのはだいぶ異質というか、違和感がありますね。
陳内:ずっと飛び道具的な位置だったからね。パチファンに向かうストーリーなのでもちろん漫才がメインとなりますが、まだ全体が固まっていない段階なのでわがままを言わせてもらうと……どこかにコントをしているシーンが入らないかなぁと淡い期待をしています。アマゲンはもともとコント師ですからね。
梅津:やっぱりやりたいねって、常々話していましたね。結構面白そうなネタをやっているんですよ。漫才をしていても、どこかコントに寄せている節がありますし。
(左から)梅津瑞樹、陳内将
ーー東雲嵩紀(溝口琢矢)と狭間くらげ(大平峻也)の「ノノクラゲ」や、千波未明(木津つばさ)と黒旗晩(中尾暢樹)の「ねあんでる」との化学反応も楽しみです。
陳内:2組と絡むのは、今作が初めてなんですよ。設定としては湘南劇場にいるから勝手知ったる仲ではあるんでしょうが、僕らはまだ彼らのことをわかっていないという……。
梅津:ドラマの撮影中もじっくり話すタイミングがなかったですもんね。舞台としては、(木津)つばさ以外のキャストの皆さんは個人的に初共演。ドラマの撮影中もじっくり話すタイミングがなかったので、どういう役者さんなのかというところも未知です。
陳内:僕は4人とも共演していますね。一番付き合いが古いのはミュージカル『テニスの王子様』で共演した(大平)峻也かな? 割とコメディタッチなキャラクターを演じていたのと、幕前コントをやっていたことを今でも覚えてくれているみたいで「陳内君ってコメディ強いじゃないですか、なんかあったら教えてください!」って言ってくれています。
陳内将
ーー前回出演されたシーズン1の舞台について、振り返りをお聞かせください。
梅津:楽しかったなぁ……。
陳内:楽しかったね!
梅津:まあ、もちろん大変でしたけど(笑)。
陳内:毎日ネタをちょっとずつ変えていってたもんね。
梅津:その日の時事ネタを取り入れてましたからね。
陳内:(本番中は)毎日ネタ合わせしていたんですよ。懐かしいなぁ。寒いところで、打ちっぱなしのアスファルトの壁見ながらやってたよね。
梅津:各コンビ皆やっていましたね。楽屋にいないなと思ったら、廊下とかトイレの前とか、いろんな場所に2人組が肩を寄せ合ってコソコソしているんです(笑)。あの姿は本物の芸人みたいだった。楽屋でやらなかったのはたぶん皆、新しいネタを他のコンビに見られたくないって考えが心のどこかにあったんでしょうね。
陳内:うん、あったね(笑)。ブツブツ言いながら、ネタをやるタイミングの10分前くらいにトイレ行きながら打ち合わせることもありました。順調にアイデアが出てくることもあるし、焦った時もある。最初から最後まで通すのが間に合わなくて「いいよ、もうこのまま行こう!」って出て行ったこともあります。
梅津:結局、なんとかなったんですよね(笑)。
梅津瑞樹
陳内:そう。本当に面白かったんですよ。スムーズにネタが出てこないときは、前の打ち合わせで案を出したはいいけど使っていなかったピースを、後日のネタに組み込んだら見事にハマることもありました。
梅津:「それ、今使うんだ!」っていうのがありましたね。ピタリとピースがハマった感覚が。あの成功体験は自分たちにとってものすごく大きいですし、手応えもありました。今回のシーズン3ではあれ以上の面白いネタを作れるのかと期待もあり、不安もあり……。
ーー舞台という場で漫才をやるのは、やはり特別な緊張感があるのでしょうか?
陳内:初日はめちゃくちゃ緊張したのを覚えています。
梅津:やっぱり他の舞台作品とはちょっと違う感覚はありましたね。「ここは笑ってもらえるだろうな」ってところは基本外さなかったですけど、余計に付け加えちゃったところは「まあそうだろうな、うん」というリアクションだったことはあります(笑)。
陳内:あははは! 僕のお気に入りの自己紹介だった「現多が上手で下手が天野、よろしくお願いしまーす!」もダダすべりしてたね。
梅津:あれはもう、そもそも笑いを取りにいくところでもないですから! そういう部分は、ウケてもウケなくてもどっちでもいいんです。ただ僕らが遊んでるだけなので(笑)。
ーーアマゲンの変遷についてお聞かせください。個性的なキャラクター性はどのように作り上げていったのでしょうか?
梅津:天野については正直、あまり台本に沿った作り方をしていないんです。こうしてほしいんだろうなってところの真逆を全部やろうと思っていました。
陳内:最初のドラマの時点からね。
梅津:はい。もともとはゆとり世代という設定があって、キャラクターソングもそこにフォーカスした歌なんですが……今は見る影もない(笑)。もともと現代的でダウナーなクールタイプがだんだん相方にほだされていくという描き方が土台にあったとは思うんですが、あれだけの役者が揃っているのだからと、もっと面白くしてみたくなった。陳さんも陳さんなので(笑)、2人でいろいろ出し合った結果、こうなりました。
息の合ったお二人の楽しいポーズ!
思わずツッコミも!
陳内:というのも、シーズン1のドラマって実は7話がクランクインだったんです。アマゲンがお笑いを辞めるか辞めないかという、僕らにとって大事な話でした。最初の時点で、皆はおそらく“アマゲン雑魚説”のようなものを持っていたと思うんです。“ずっとスベっている人が仕方なくやっているコンビ”だけでしかなかったところにガツンとぶちかまそうと、梅ちゃんと話し合って本気でやり合いました。「こいつらガチでやってるな!?」って現場の空気を感じつつ。
梅津:はい、ありましたね。
陳内:もし撮影が1話から順に行われていたら、今のアマゲンとは違うアプローチになっていたのかもしれない。タイミング的にも恵まれていたと思います。
ーー一言で表すなら、どんなコンビと言えるでしょうか? 
陳内:もはや、相思相愛。
梅津:ですね。すれ違っていた部分はもう修正していますし、特に障害がありませんから。
ーー厚い信頼関係がうかがえますが、現在の距離感や関係性を掴んだきっかけは何かあったのでしょうか?
梅津:僕はもう最初からですね。「何をしても、この人なら受け止めてくれる!」と、好き勝手やらせてもらっています。“カミシモ”で改めて感じたのが、陳さんの瞬発力のすごさ。漫才の日替わり部分で僕が変な斜めの方向のことを言っても、ちゃんと戻してくれるだけじゃなくて、必ずひとつは色を足して返してくれる。お芝居ももちろん同じで、やっていてこんなにも楽しくなれる人ってそうそう出会えない。
陳内:嬉しいですね。僕も梅ちゃんのこと、勝手にずっと好きなので。寡黙に見えて、頭の中で実はたくさん考えを巡らせているんですよね。純粋に知識量がすごく多いし、中身はど変態なくらい。
陳内将
梅津:ど変態って(笑)。
陳内:僕らも長い付き合いになりましたね。2017年の舞台版ドラえもん『のび太とアニマル惑星(プラネット)』で初めて共演してから、いくつか作品もご一緒していますからね。
梅津:できることならもっとたくさん作品をご一緒したいですし、違う間柄の役でもお芝居していきたい……と、密かに狙ってます(笑)。
ーーお話をうかがっていると、演技への向き合い方はどこか似ている気がします。
梅津:陳さんのことを他の人が「やっぱり芝居人って感じがする」とか「芝居好きな方」と語っているのを実は結構耳にするんですよ。
陳内:えー、そうなんだ。
梅津:ってことは、回りまわって僕も陳さんと同じように思われていることもあるのかな……なんて、今勝手に嬉しくなっています。
梅津瑞樹
陳内:たしかに、感覚は似ているのかもしれないですね。いろんな現場で、今いる状況で、悔いなく自分がちゃんと好きなやり取りを捕まえにいっているところかな?  “カミシモ”では相方ですが、舞台『紅葉鬼』~童子奇譚~で演じた対峙する役も楽しかったです。押したら返してくるし、引いたらもっと来てくれて、存分にやりあってくださる方です。
ーー今作で芸人を続けるかどうかの岐路に立つアマゲンの2人ですが、陳内さんと梅津さんが最近した“究極の決断”を教えてください。
陳内:それこそ、今日のお昼ごはんでありましたよ。家を出るときには絶対、麺類を食べようと決めていたんです。でも途中でアマゲンにそっくりな名前のお店を見つけてしまって……。
梅津:(店名を聞き)あははは! 本当だ、似てる!
陳内:アマゲンとしての取材前だし、そっくりな名前のお店に行ったほうがいいかなって迷ったんです。悩んだ挙句、担々麺にしました。
梅津:選ばれなかった(笑)。でもさすが、いい話をちゃんとしてる……! 僕はですね、新しいカメラを買うかどうかでかなり悩みました。ずっと父からもらったフィルムカメラを愛用していたんですが、今年からはフルサイズも使おうと自分でも買ったんです。これが結構、お高くてですね……。
陳内:でしょうね。
梅津:それなのに、使ったり調べたりしているうちに、もっと違うカメラも欲しくなってしまい……稽古が終わった後に、帰り道にある中古ショップに毎日通いました。まるでショーウィンドウに飾られたトランペットに憧れる少年のように。そして、最後の稽古が終わった日に、ついに……!
陳内:買ったんだ。ご褒美にね。
梅津:そう。今、おうちにあります!
(左から)梅津瑞樹、陳内将
ーー素敵なエピソードありがとうございました。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
陳内:それでは、SPICEさんにちなんで……これまでアマゲンは飛び道具的な、スパイス的なポジションでした。
梅津:おおっ、ちなみました(笑)。
陳内:ですが今回は物語の中心、ともすると後輩芸人である2組がスパイス的な役割を担う……のかどうかわかりませんが(笑)、先輩として引っ張りつつ、楽しい演劇を作っていきたい。良い漫才をして「もういいよ!」と締められるように頑張りたいので、何卒劇場に通ってください!
梅津:そうですね、陳さんもおっしゃる通り、スパイスということで……。
陳内:お、やるの?
梅津:(笑)。こんなスパイシーな我々が真ん中にいること自体が異常事態。これはもう大出世ですよ。シーズン1からは想像もつかない大躍進を遂げたアマゲンが、いったいどんな物語を繰り広げるのか。乞うご期待!
(左から)梅津瑞樹、陳内将
ヘアメイク=竹内研登
スタイリング=稲葉江梨

取材・文=潮田茗    撮影=荒川潤

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