ダンス新時代 〜職業「プロダンサー
」として生きる〜 DYM MESSENGERS「
TAKUYA」

4年目を迎えた世界最高峰のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE」。その中で活躍するDリーガー達の激闘の日々や苦悩、そして思考や価値観に迫る“ダンス新時代 〜職業「プロダンサー」として生きる〜”をDewsが独占取材。D.LEAGUE 23-24シーズンを駆け抜ける全13チーム26名にフォーカスします。今回は日本のストリートダンス界において欠かせない存在であり、今シーズンより新チームとして参入をするDYM MESSENGERSのディレクターであるTAKUYA氏に迫る。
まずはじめに、ダンスのキャリアについて教えてください。
ダンスを始めて32年くらいになりますね。僕がダンスを始めた当初はハウスダンスというものがまだ日本には無くて、最初はヒップホップとかブレイキンを踊っていました。中学の時とかヘッドスピンとかもしていましたよ。当時はテレビから影響を受けて、ムーブメント的に踊る人が多かったですね。それからはハウスダンスを主軸にコンテストにも出ていました。今も現役で踊りながらダンススタジオ関連の会社経営などをしています。
DYM MESSENGERSはD.LEAGUEが4シーズン目にして新たに参入したチームですが、ディレクターとしてオファーをいただいたときの心境を教えてください。
最初は正直「僕じゃないかな。」って思いました。僕はどちらかというとエンターテイメント寄りのスタイルではないので語弊を恐れずにいうと、わかりやすさよりも自己表現を追求するタイプなので合わないかなと思いました。ただ、ずっとD.LEAGUEは開幕当時から見てきたので、色々な形でのエンターテイメントを目指しても良いのではないかと思うようになりました。D.LEAGUEのディレクターという立場になることで、ダンスシーンに対しての“恩返し”ができるという気持ちにもなりお話を受けました。
DYM MESSENGERSのメンバーはキャリアや実力に加え個性も兼ね揃えた方々ばかりですが、どのようにして結成されたのでしょうか?
まず近年で僕の活動やダンスに対して理解があるメンバーにお声がけをさせてもらいました。僕はレギュラーレッスンを10年以上やってないのですが、たまにワークショップをするときに参加してくれたメンバーもいます。僕の意志やビジョンを理解してくれていてマインドが近いことが重要でした。それぞれ得意とするダンスのジャンルはバラバラなのですが、全てのジャンルにオープンマインドでいるという共通点もあり、現在のメンバーはチームを作る上で最初に思い描いたメンバーでした。得意ジャンルはバラバラだけど、ある意味“同じジャンルに見える”というのもこのチームの強味かもしれません。これだけのメンバーをD.LEAGUEに召集できたのはとても嬉しいですね。
新規参入チームとしてどのような存在を目指していますか?
僕たちは、これまでD.LEAGUEで戦ってきたチーム関係者やDリーガーの方々をとても尊敬しています。その上でD.LEAGUEに足りない要素を拡張したいと思い、このチームを発足しました。D.LEAGUEは、いわゆるアンダーグラウンドシーンのダンスを普段観ることに慣れていない方々も多く来場されるし、配信視聴者にもそのような方々は多くいらっしゃると思います。そういう方達に対して「こんなダンスもあるんだよ!」と、ひとつの幅として伝えたいと思っています。例えるなら、ダンサーのひとり一人が楽器としたときに“代わりの利かない存在”であり、その楽器が重なり合いジャズセッションのように、ひとつの音楽として聴こえるようなダンスを届けたいですね。シンクロをして美しく魅せることも勿論ダンスの醍醐味ですが、ビシっと揃っていなくても、ひとつに見えるこの感覚と面白さを僕たちのチームを通じて味わって欲しいですね。
D.LEAGUE問わずこれまで多くの作品を発表されてきたと思いますが、作品づくりで大切な要素は何だと思いますか?
“嫌なことをさせない”ですね。個々のダンサーが活きる動きや役割をオーダーするようにしています。嫌なこともそうですが、意味の無いことはさせないという言い方もありますね。例えば演劇でも何でも配役があるものはそうだと思うのですが、それぞれ得意不得意がある中で、適任なことを素直にやってもらいたい。衣装に関しても全員同じで格好良いことはありますが、僕は全員違うけどそれが個々の魅力を引き出すような衣装も好きですね。“その人に合うスタイル”で見た目や振付、配役などもみんなで仕上げていきたいと思っています。どの作品でも「誰がどこにいるんだ?」というのがわかるように輝く場を作ることを意識して作品づくりをしていますね。
自分たちの届けたいスタイルで勝ち続けるということは、時に難しいこともあると思うのですがどのようにバランスをとられていますか?
僕たちのマインドやスタイルで全ラウンドを勝負したいと思っていますし、その上で勝つことも当然拘っています。D.LEAGUEの観客のみなさんや、審査員の方々に刺さる作品づくりの努力や研究を重ねています。自分から湧き出て表現したいことが僕はアートだと思っていて、そこを担保しながらエンターテイメントをやるということを意識しています。プライオリティはその時に応じて変わったりするのですが、脈絡なく人が驚く事を考えるようなつくり方をしちゃうと「本当に感動してもらえるのかな?」って思ったりするんですよね。ステージに上がる人間として、嘘のないパフォーマンスが結果として感動を生むのだと思っています。それが最終的にエンターテイメントに消化されるのではないかと思うんですよね。例えば、本格的な歌手ほど、ステージはシンプルだったりする。照明がサス1本で衣装はデニムに白Tにアコギだけで舞台装飾無し。それでも大きい会場で大観衆を目の前にして感動を与えることもありますよね。とはいえ、舞台装置がある演出を否定しているわけではありません。もちろんそういった演出も素晴らしいのですが、そういったシンプルに洗練されたステージでも感動を与えることができるという事実もあり、エンターテイメントとして消化されている。僕たちが目指しているのは、その感覚に近いかもしれません。D.LEAGUEを拡張するという方法として、僕たちはダンスを通じてその可能性にチャレンジをしたいと思っています。ただ、エゴで貫くつもりは一切ないです。今もそのライン引きに毎日悩んでいます。「どこまで受け入れてもらえるかな?」という感じで。
ディレクターとして、意識していることは何でしょうか?
チーム関係者の方々やメンバー全員の意見を一度全部受けるようにしています。ただ、正直コスパ悪いんですよね(笑)。メンバーのみんなは僕含めダンスに真っ直ぐな故にある意味で不器用で、答えが見えているものに対して最短ルートを行くのではなく、敢えて遠回りをして新たな発見を取りに行きたいタイプの集まりで、予定調和より予定外なものに魅力を感じるメンバーばかりなんです。それが重なり、新しい創造ができるので良いことなんですがただある意味コスパは悪いという見方もありますね(笑)。あと、僕は経営者でもあるのでお金周りの事ももっと考えていきたいです。運営面でも予算などを上手に配分しながら円滑に運営できるようにするにはどうしたら良いのかなど。チーム発足1年目なので、作品づくりもチーム運営面も手探りでチューニングをしている状況です。ただ、メンバーは元々波長の合う人達を集めているので既に仲が良いですね。すぐみんなで飲みに行っていますね。これがまた僕を筆頭にみんな酒好きで(笑)。お互いを尊重し合うことやコミュニケーションもチーム形成の上で大切な要素だと思っています。
最後にD.LEAGUEを応援してくださる方々に一言お願いします。
ダンスを観ると言っても色々な楽しみ方や見方があって、それらを一人でも多くの方々に体感してもらえると嬉しいなと思います。「同じ振付でも違う人が踊るとこんなに違って見えるんだ!」のような気付きがあったり、音楽とどこがどうハマって見えるのかなど、結構視点を意識するとダンスの見え方って幅広かったりするんですよね。ダンスをやっていない人にもこれからダンスをやっていく人達にも伸び伸びと自由に表現する事の素晴らしさを伝えていけるチームになっていきたいですね。
TAKUYA プロフィール

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