ダンス新時代 〜職業「プロダンサー
」として生きる〜 KOSÉ 8ROCKS「Ka
ku」

4年目を迎えた世界最高峰のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE」。その中で活躍するDリーガー達の激闘の日々や苦悩、そして思考や価値観に迫る“ダンス新時代 〜職業「プロダンサー」として生きる〜”をDewsが独占取材。D.LEAGUE 23-24シーズンを駆け抜ける全13チーム26名にフォーカスします。今回は20年ブレイキン一筋で世界のトップに君臨し続ける不動のブレイキンクルー「MORTAL COMBAT」の初期メンバーであるKaku氏に迫る。
まずはじめに、ダンスのキャリアについて教えてください。
14歳からブレイキン一筋で23年になります。所属しているクルー「MORTAL COMBAT」は大阪を拠点に活動をし、今年で20周年を迎えました。クルーとしては主に国内外のブレイキンバトルやショーケースのコンテストに出場をしたり、イベントに出演をしながら活動をしています。個人ではスクールでインストラクターとしても活動を続けてきました。振り返ると沢山の良いことも苦しいこともありますね..(笑)。首のヘルニアをやってしまった時は、握力が8まで下がり僕が得意とする回転技などが一生出来ないと思った時期もありました。ケガ以前に出来ていたことが出来なくなったり、今でも寒い時期は身体に響いたりするなかで踊り続けています。ダンスを続けてこれたのは「やっぱり僕にはこれしかない。」と思っているからですね。初めてブレイキンに出会った時に“これで戦えるんだ”と思いました。自分の取り柄がやっと見つかったという感覚で、その取り柄を失いたくない一心で今でもトレーニングを続けています。ブレイキンは特に、他のジャンルに比べ身体を動かさなくなったらもう取り戻せないので、そのリスクを常に背負っていますね。
20年以上フィールドを変えることなく第一線でご活躍をされていますが、その秘訣について教えてください。
僕は「イジ」だと思っています。「イジ」には理由が2つあり「意地」と「維持」です。例えばMORTAL COMBATをなぜ続けてこれたのかというと、自分たちがバトルで勝って嬉しい気持ちよりも、負けて悔しい気持ちや何かを失った気持ちの方が倍以上残るものがあり、悔しくて“やり返す”という気持ちが、僕たちをここまで繋いでくれたんだと思います。「意地」でも自分たちがやっていることが間違っていないと思い続けることと、継続にはどんな形でも「維持」が大事。それらをベースに持ちつつ、下の世代の子たちに良い背中を見せながらシーンを繋げていくということも考え、身体が動く限り活動を続けていきたい気持ちでここまでやってこれています。
ディレクターに就任されて2シーズン目となりますが、最初にお話をいただいた時の心境を教えてください。
僕はディレクターになる前からKOSÉ 8ROCKSにはSPダンサーとして参加させていただいていたので、現場の雰囲気や制作の大変さを知っていました。メンバーのことも元々知っている仲だったので、それに対してのハードルは無かったです。ただ、これまで活動をしてきた事と、全くと言っていいほど異なる世界に行く感覚に正直不安がありました。経験や生活拠点もガラッと変わるので自分の器を考えると…正直すぐに返事をすることができなかったです。僕はコロナ禍前に半年ほど海外で生活をしていたのですが、コロナ禍になり一気にエンタメ市場全体が縮小してしまって、ダンサーも仕事の領域が極端に狭くなりました。それを実感していた中のお話だったので、D.LEAGUEの環境はとても恵まれていると思いました。MORTAL COMBATのメンバーに相談をしたところ、彼らは「絶対やった方が良い。」と言い切ってくれました。「というか、お前はもっと早くから外に出た方が良かった。」とも言ってくれて、正直自分ひとりでは決めきれなかったのですが、メンバーの後押しもあり、ディレクターとして責任のある仕事に就く決断をすることができました。まさか自分が30歳を越えて上京をするとは思わなかったですね(笑)。
ディレクター就任の22-23シーズンを終えていかがでしたか?
本当に凄かったです。こんなにあっという間に終わるのか、と。MORTAL COMBATの活動を並行して行っていたのですがKOSÉ 8ROCKSの活動が常に1番にありましたし、脳内もいつもKOSÉ 8ROCKSのことばかり考える日々を送っていました。今まで僕たちが得意としていたショーケースの作り方では全く通用しなくて、毎日違うことをしないといけないような気持ちでいました。ディレクターとして大切にしていることに「自分たち(チーム)だけが良ければいいわけでは無い。」ということがあります。例えば時間ひとつとっても、期日を1つずつ守らなければ、どれだけの方達に迷惑をかけてしまうのだろうということを考えながらコントロールをする必要があります。1作品を作る上で、関わる範囲が大きくなればなるほど、その影響幅も大きくなるわけで。昨シーズンはそのコントロールがうまくできなかった反省があるので、今シーズンからはクリエイティブディレクターを僕以外に2名据えて、うまく回るように体制を整えました。僕の周りには頼っても良い人たちが沢山いたんですよね。そう言ったご縁を活用することも僕の役目だと思えたのもD.LEAGUEの経験があってのことでした。
今シーズンにおいて、作品づくりやチームとしての変化はありますか?
“関わる裏方の方々も含めて一緒に作品をつくる”という意識が強くなりました。例えばラウンド2の作品は、ブレイキンのルーツであるヒップホップを語る上で、楽曲制作をDJ MAR SKIさんにお願いしました。ずっとお願いしたいという話はあったのですが、やっと実現することができました。ニューヨークのブラックアウト(大停電)をテーマにした作品なのですが、MARさんと打ち合わせをする中でアイデアが出てきて、構想を組み立てることができました。トラックメーカーさんや、衣装さん照明さんなど、D.LEAGUEはチームメンバーだけでなく制作スタッフさんたちも一緒に戦ってくれているんですよね。昨シーズンはそのスタッフさん達とあまり会話ができていませんでした。今シーズンになり、スタッフさん達と、作品づくりの過程で沢山会話をしながら進められている事も大きな力になっています。僕たちだけでは作り得ない壮大な作品になることを実感しています。
D.LEAGUEの作品づくりは、他のステージの作品づくりと比べて異なる部分が多いでしょうか?
はい。もう全然違いますね(笑)。MORTAL COMBATに関しては“他と違うことを恐れずにやっていこう”というテーマのもと、ショーケースを作っています。D.LEAGUEの場合は、色々なことを考えないといけないんですよね。例えば誰に評価されるのか。審査員の方々やオーディエンス票を取りに行くバランス。自分たち自身の評価にも嘘をつきたくない。それに加えて昨シーズンからVSスタイルになったので、毎回対戦チームが1つ明確に決まっているので、そのチームに対してどういう風に戦うのかを考えて作品づくりをしています。シーズン中には対戦回数が決まっているので、その流れも気にしなければなりません。その中で、KOSÉ 8ROCKSのメンバーの割り振りも毎回考える。KOSÉ 8ROCKSって超人の集まりだと思っています。ただ、この超人たちを“普通”に見せてしまってはいけない。当たり前にしてはいけないと思っているので、その価値がきちんと伝わるようにしつつ、ジェットコースターのように作品づくりをするわけです。普段のショーケース作りとは比べることができないほどに多くの要素を考えながら2週間に1度のペースで仕上げていくことは、他ではなかなか経験ができないことだと思います。
最後にD.LEAGUEを応援してくださる方々に一言お願いします。
戦っているのは僕たちだけじゃなくて、ファンの方々も一緒にアツくなって欲しいなと思っています。会場の熱狂は僕たちにもダイレクトに伝わってくるので、それをもらって僕たちも更にアツくなり、良いパフォーマンスをして会場の方々の熱狂をさらに拡大する。そのお互いの相乗効果でどんどん熱狂の輪を大きくしていきたいですね。僕たちもまだまだ頑張るので、ファンの方々にはD.LEAGUEを知らないお友達とかにも伝えてもらい、パワーをお互い伝え合って、熱狂の輪を一緒に拡大していきたいと思っています。
Kaku プロフィール

アーティスト

Dews

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