【ネクライトーキー インタビュー】
自分をどんどん更新していかないと
音楽をやってはいけない
レコーディングの前日に朝日さんが
“これ、やりたい”って持ってきた
面白いです。確かにもっささんの曲って違う存在感があると言いますか、今回のアルバムの中でも非常にいいアクセントになっていますよね。
朝日
特に「だから、」はそう思います。
とても大きな曲だと思います。作った時期を考えれば、まったく意図されたものではないと分かるんですが、年初に起こった出来事とリンクする部分もすごくあって。
もっさ
本当にたまたまなんですよ…。これは、自分の中の決意表明として書いた曲なので。決意表明というか、ここから先のことみたいなものを自分の中で決めようという、ある種の印みたいな曲を作ろうと思って書いたんです。
歌詞の《優しくもなんともない》というフレーズがとても切実に響きました。
もっさ
やさしくない瞬間が2023年はちょっと多かったもので（笑）。やさしくありたいのにやさしくなれない時ってすごくつらくないですか？ でも、それでもいいと認めようっていう曲なんです。
シューゲイザー的な、オルタナ感全開のサウンドも胸に迫りますね。
朝日
デモではイントロの立ち上がりはわりと静かな感じだったんですけど、作っていく中でもっと力強い音から始めたらどうかという話になって。
藤田
バラードにはしたくないってずっと言い続けていたので、“じゃあ、でっかい音からスタートしよう！”っていう。
そう！ バラードではなく、あくまでもロックナンバーとして成立させているところが素晴らしいんです。
藤田
カッコ良いロックですよね。1サビ後のギターソロのあと、3拍子だったところから4拍子にスンって戻るのとか、すごくカッコ良い。
この曲のあとに聴く「石ころの気持ち」がまたグッとくるんです。ある意味、「だから、」のアンサーになっていませんか？
もっさ
そうなんです。聴いていて励まされている感じがして。「だから、」のあとにこの曲があって良かったと本当に思いますね。
そういう意味でも、トータルでひとつの物語とも言えそうなアルバムだと思いました。「幕間」というインタールード曲が入っているのも、そこを意図したのでは？
朝日
「幕間」に関しては、特に前半に情報量の多い曲が多いと感じたので、ひと呼吸置くために入れたかったというのもあるんですよね。逆に「幕間」が入るからこそ、アルバムを通して聴いた時に流れを感じられるというか。さっきも言いましたけど、朝から始まって、昼を過ぎて夕方を迎えて、薄暗くなっていく感じみたいなものが出せた気がするんです。実際、「紫」とか「ランバダ・ワンダラン」とかあたりは夜のムードがありますし。
藤田
「だから、」は深夜だよね。
もっさ
まさに。
そして、「石ころの気持ち」で夜明けに向かっていく。美しいですね。
もっさ
並べた時はそこまで考えていなかったんですけど（笑）。
藤田
結果としてそうなりましたね。
朝日
でも、それは薄々みんなも感じていたと思います。だからこそ最終的に全員がこの曲順に納得して落ち着いたのかなって。曲順を決める時は必死すぎて気づいていないけど、実はそうだったからこそここに収まったみたいな。
個人的には「ねぇ、今どんな気分？」の圧巻のアウトロにシビれました。
朝日
アルバムを通してスパッと終わる曲が多い中で、これはウジウジした未練を引きずった歯切れの悪い曲だからこそ、しっかりとしたアウトロが必要だという気持ちで作ったんですよ。ここで雰囲気がグンと変わるというか、それまで曲中に出てこなかったパターンがアウトロで出てくる曲って、俺は好きなんですよね。だから、この曲も作っていて楽しかったです。
藤田
この曲は最終のレコーディングの前日に朝日さんが“これ、やりたいです”って言って持ってきた曲なので、私たちは録っただけなんです。レコーディングの中で自分のエッセンスを入れるぐらいのことしかしてなくて。
もっさ
計画どおりじゃなかった唯一の曲です。
というと？
朝日
実はもう1曲、別の曲を作っていまして。その曲も気に入っていたんですよ。今回の制作の最後の曲だったんですけど、アルバムとして並べてみた時に他の曲とキャラが被るタイプの曲だったんです。気に入っているからいいかとも思っていたんですけど、レコーディングの前日になって、急にこの曲が出てきてしまったんですよね。他の曲と比べてもかなり毛色が違うけど、だからこそアルバムのフックになれる曲だし、あとはメンバーがレコーディング前日の夜に新曲を渡してOKと言ってくれるかどうかだと思ったので、深夜に緊急オンライン会議を開きました。“すいません。本当に急なんですけど、曲ができてしまって…”って（笑）。
満場一致で“やろう！”となったのですか？
藤田
すぐに“分かった！”って言いました。
タケイ
いい曲だったしね。
朝日
たぶん、“だってやりたいんでしょ？”って思われていました（笑）。
藤田
このタイミングで出してくるんだから、それはそう思いますよ。もちろん私たちもアルバムがさらに良くなると確信したからこそですけど。
つくづく、いいバンドですね。
朝日
ありがたいです。これからもどんどんやっていこうと思っています。
全員
（爆笑）。
朝日
でも、それで言うと「幕間」も全曲トラックダウンが終わったあとに“こことここの間に曲があるといいと思うんですよね”って俺が言い出して入れた曲で（笑）。そこまでの制作も本当に楽しくて、いいアルバムが作れている手応えがあったから、最後の最後まで後悔のない選択をしたいという気持ちでギリギリまで粘りました。
その熱量が隅々まで行き渡った、本当に傑作だと思います。『TORCH』という作品ができたこと、これからのネクライトーキーについて今、どんなことを思っていらっしゃいますか。
朝日
自分としては、ちゃんとこの作品を超えたいです。現段階ではこれが最高だと思っていますし、今やれることを全部やったからハードルは上がったとも思うんですけど。これはすごく思うことなんですが、俺が過去の自分を超えたいって戦っていても、聴く人たちには俺が過去の自分に打ち勝てたとか関係ないじゃないですか。これを聴くか、The Beatlesの名盤を聴くか、そういう選択肢は無限にあるわけで。でも、だからこそ、それぐらい身を削ってやっと同じ土俵に上がれると思うんです。自分をどんどん更新していかないと音楽をやってはいけないよなって。そう思うと…すごく背筋が凍りました。
全員
（笑）。
伸びるんじゃなくて、凍るんですか？
朝日
いやぁ、大変だなって。
確かに（笑）。藤田さんは？
藤田
すごくいいものができましたし、このアルバムの中に「ふざけてないぜ」と「bloom」っていうタイアップがついた曲が入っているのもいいと思うんです。特に「bloom」はタイアップ作品にすごくマッチしたと思っていて。こういうふうに自分たちに投げられた球に対してばっちりの正解を返すっていうのはまたやってみたいことですね。
タケイ
僕はまだ次の作品とか全然考えられていないんですけど、ひとまずはここに収録した曲たちをお客さんがいる場で披露できることをすごく楽しみにしています。「わっしょいまっしょい」や「ねぇ、今どんな気分？」のアウトロとか、“どうぞご自由に”っていうゾーンがある曲は特に腕が鳴りますね。武者震いというか、今から“やったるぜ！”みたいな気持ちです。
中村
個人的にはいい意味で今までで一番力を抜いて作れたアルバムなので、この感覚で新しく曲を作っていけたらいいなと思います。でも、まずは楽しくライヴをしたいですし、ツアーもすごく楽しみですね。
では、最後にもっささん。
もっさ
前向きになれるのは今までどおりなんですけど、今回は誰かの手を引っ張れそうだという気がすごくしていて。これまでは自分ひとりが前を向くので精いっぱいだったけど、もうひとりぐらいの手は引っ張れそうだなって。今は思っています。
取材：本間夕子
「ちょうぐにゃぐにゃ」MV
「bloom」MV
「あべこべ」MV
「ランバダ・ワンダラン」MV
「ふざけてないぜ」MV
bloom」from New Album「TORCH」
「TORCH」trailer
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