Base Ball Bear、2024年の始まりを飾
るワンマンライブ『新春ベースボール
ベアーちゃん祭り2024』のオフィシャ
ルレポートが到着

1月7日(日)に東京・EX THEATER ROPPONGIにて行われた、Base Ball Bearにとって2024年初のワンマンライブ『新春ベースボールベアーちゃん祭り2024』が開催された。本記事では、同公演のオフィシャルレポートをお届けする。

結成23年目のBase Ball Bearにとって2024年最初のワンマンライブとなる『新春ベースボールちゃん祭り 2024』が、1月7日に東京・EX THEATER ROPPONGIにて開催された。
ワンマンライブ、といってもこれが通常のそれでないことは、開演前のステージからも明らかだった。上手には通常のライブセットが、下手にはラジオブースを模したセットが設置されている。
開演時間を迎え、日本の正月における代名詞的なBGMである筝と尺八の二重奏による「春の海」が流れるなか、小出祐介(Vo,G)、堀之内大介(Dr,Cho)、関根史織(Ba,Cho)の3人に加え、袴姿の遠山大輔(グランジ)がステージに登場。Base Ball Bearと“遠山校長”といえば、かつてTOKYO FMのラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』を共にしていた以来の仲であることは、ファンもよく知るところだ。
4人はまずブースセットに着座すると、まさにラジオでフリートークを繰り広げるような様相で話し始める。今年は辰年なので龍にちなんだ衣装をスタイリストに用意してもらったというBase Ball Bearの3人。堀之内は『龍が如く』シリーズにおける春日一番。『キル・ビル』のユマ・サーマンよろしく黄色のジャンプスーツに身を包んだ関根と、『七人のおたく』の内村光良を意識したカンフー風のセットアップを着用した小出は、“龍”というテーマが分岐してこうなったらしい。
遠山大輔、Base Ball Bear
この日のライブは遠山を交えたトークコーナーと、3人のメンバーがそれぞれ個人的に今演奏したい曲をセットリストに組んだライブコーナーが交互に行われるという趣向。普段からMCもライブの重要な要素を担っているバンドゆえに早速進行が押し気味になっていくなか、遠山に「そろそろやろう!」と促され、満を持してライブコーナーへ。セクション1は関根プロデュースの3曲が披露された。
「1曲目レアな曲で、エリート(コアファン)が喜ぶと思う。2曲目は1曲目を踏まえて、みんな、『うんうん』と喜んでくれるはず。3曲目はマネージャーにこれにすると言ったときに『お見事!』と言われた曲です(笑)」
2010年9月リリースの3.5枚目のアルバム『DETECTIVE BOYS』から1曲目の「BOYFRIEN℃」が始まると、イントロからオーディエンスが歓声を上げる。間違いなくリリース当時とは比較にならないほどレベルアップしている盤石の演奏力、そのスリーピースバンドとしての背骨の太さを提示するようなアンサンブルが響く。そこから2006年4月リリースのメジャーデビューミニアルバムの表題曲である「GIRL FRIEND」と、2005年3月リリースのインディーズアルバム『HIGH COLOR TIMES』収録の「彼氏彼女の関係」を繋げ、バンドの原点を現在進行系のタフなグルーヴで息吹かせるような演奏を聴かせてくれた。
Base Ball Bear
3曲を鳴らし終えると、メンバーは遠山が待っているトークブースに戻り、トークを再開。次のセクション2は小出プロデュースによるもので、「コンセプトは普段のライブでやったらエリートたちも気絶(反応が悪い)するはず。初めてライブに来た方には申し訳ないんですけど、ここは間違いなく気絶します(笑)」と、どこか不敵かつやや自嘲気味に笑わせた。しかし、「beautiful wall(DUB)」、「FICTION ONCE MORE」、「Tabibito In The Dark」の3曲を編んだこの小出セクションが実に素晴らしかった。テーマはBase Ball Bear流のダブであり、その先に生まれるカタルシス、とでも言おうか。「beautiful wall(DUB)」では関根のチャップマンスティックを大いに活かし、小出のボーカルアプローチも含めて深く、深く、潜り込んでいくダブ由来のサウンドを形成。「FICTION ONCE MORE」では音像がよりサイケデリックになり、リズムセクションもまたオーセンティックなループミュージックとしてのダブの快楽性を際立たせてみせる。ディープなサウンドスケープの果てにBase Ball Bearの王道に還っていくような「Tabibito In The Dark」の説得力は格別だった。
トークブースに戻ってきたメンバーに向かって遠山は「音が充満している2曲があって、その先に旅人が見えた!」と感嘆した。このセクション2もまた2024年のBase Ball Bearだからこそ体現できたものである。
Base Ball Bear
Base Ball Bear
Base Ball Bear
堀之内プロデュースのセクション3は「新年だから景気よくいきたいということと、昨年のニコ生で募った視聴者からのリクエストを採用した曲、そして、個人的に今やりたい曲」をピックアップ。まさに今日この日のライブにうってつけの楽曲であり関根がメインボーカルを務める「A HAPPY NEW YEAR」、加速度的にアンサンブルをドライブさせながらドラマティックな緩急もつけていく「yellow」、メジャーデビュー前とメジャーデビュー後の2パターンの音源が存在する「CRAZY FOR YOUの季節」を並べた。堀之内のオーディエンスに対するサービス精神とバンド愛が凝縮された3曲だったと思う。
Base Ball Bear
トークブースに戻ったメンバーは、ここでオーディエンスに吉報を届ける。2月28日に6曲入りのミニアルバム『天使だったじゃないか』のリリースと、3月から6月にかけて本作を携えた全17本の全国ツアーの開催が決定。そして、ラストのセクション4では、『天使だったじゃないか』から「夕日、刺さる部屋」が初披露された。小出はトークの中で新作について「自分たちが原点の部分で影響を受けていた80年代から90年代のギターポップと向き合って作ってみた。サウンドの質感がこれまでの作品とかなり違う」と語っていたが、その言葉通り「夕日、刺さる部屋」は懐かしくもフレッシュなブリットポップの匂いと、二度と戻らない誰かのあの日、あるいは誰かの今日、という青春の輝きと陰影を濃密に閉じ込めたような楽曲だった。
続いて、恐縮しきりの遠山を小出がステージへいざなう。遠山がボーカルをとるこの日だけの「どうしよう」が実現。初々しさの塊のような遠山の歌唱と、いつにも増して丁寧で優しいBase Ball Bearのアンサンブルの交わりがなんとも微笑ましかった。
Base Ball Bear
ラスト、「祭りのあと」を大きなスケール感と貫禄に満ちたプレイで響かせ、トークブースの締めでは来年も「新春ベースボールちゃん祭り」を開催することを約束。こうしてこの日のライブは幕を閉じた──と思いきや、オーディエンスのアンコールに背中を押されステージに戻ってきた3人は、予定になかった「ポラリス」でそれに応えた。
そう、Base Ball Bearという三角形は23年目も自分たちだからこそ創造し響かせられる楽曲を追求していく。どこまでもそういうロックバンドとして生きていく。

Text by 三宅正一
photo by Takahiro Higuchi

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