【祐友 開幕レビュー】開けてみるま
でわからない! 福袋みたいなステー
ジ『Yuichiro & Friends -Singing!
Talking! Not Dancing!-』

この20年、魅力に溢れた“ミュージカル界のプリンス”は何人か誕生したが、“ミュージカル界の帝王”としてその座に君臨し続ける俳優は彼ひとりかもしれない。そう、山口祐一郎その人である。劇団退団後には『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャン役をはじめ、『ダンス オブ ヴァンパイア』、『エリザベート』、『モーツァルト!』、『レベッカ』、『レディ・ベス』などさまざまなミュージカル作品で重要な役を担い、近年ではストレートプレイの舞台でも圧倒的な存在感を見せつけている。
そんな山口が信頼するフレンズたちと贈る2幕構成のトーク&コンサート『Yuichiro & Friends -Singing! Talking! Not Dancing!-』が2024年1月6日(土)に日比谷・シアタークリエで開幕した。ここでは初日前日に行われた公開ゲネプロの模様をお伝えしたい。
ニューヨークをイメージした背景とステージ上に置かれたアンティーク調の5つのソファ。壁にはキャストたちのフォトグラフが飾られている。舞台上の生バンドの演奏とともに、本公演のホスト、山口祐一郎が意外過ぎるナンバーをチャーミングに歌いながら登場。そうか、この曲で来たか。おっと、ここでもうひとつお伝えしなければならないことがあった。本公演のセットリストは初日以降の客席に座ったお客さまのお楽しみとのことなので、本レビューも当日の楽曲に関してはシークレットのスタイルでお届けする。
山口祐一郎      写真提供:東宝演劇部
山口のソロ歌唱に続き、10代の頃から彼と多くの作品で共演している大塚千弘、バラエティに富んだ役柄で山口と同じ舞台に立ってきた石川禅、劇団時代から縁が続き、近年ではストレートプレイでも共演する保坂知寿、“天才”繋がり(?)『モーツァルト!』でのやり取りが懐かしい中川晃教のゲスト4人が1人ずつ舞台に登場し、各自が希望したというナンバーを歌う。
キャスト全員のソロ歌唱が終わったところで5人が集まりトークコーナーに入っていくわけだが、この日のメンバーを見て想像してほしい。語りたいことがあるとなぜか席を立ち舞台前センターに歩き出す山口とそのトークに乗っかり話を広げる中川、どうまとめようか立ったり座ったりの石川と切れ味のあるツッコミを入れる大塚、姉のように全体を見ている保坂。特に進行役が決まっているわけではないので非常に自由な会話の球が飛び交う。正直、挙げられたトークテーマより、キャストたちのほとんど“素”の状態やそれぞれの関係性が面白すぎて、そちらに気持ちを持っていかれる感すらあった(勿論、ポジティブな意味で)。
ゲネプロで山口の口から語られたのは小学校から中学、高校時代の思い出やあるバンドメンバーとの意外な関係。そこからキャストたちの共演作品でのエピソードやコロナ禍での筋力維持などに話が広がり、この日のキャスト、5人中4人が共演したあの作品のメロディが流れると、それが時間ですよの合図となって次の歌唱コーナーへ。
(左から)中川晃教、大塚千弘、山口祐一郎、保坂知寿、石川禅     写真提供:東宝演劇部
本公演の構成・演出を手掛けたのは山田和也。山口とは数々の作品でタッグを組み、昨年は『キングダム』と『家族モドキ』のストレートプレイ2作品でも同じ現場に携わった。山口のことを知り尽くし、互いの信頼関係が構築されている山田だからこそ、キメキメの構成とタイトなタイムスケジュールで進行するのではなく、あえて緩やかで自由な遊びの部分を多く取った構成にしたのだと感じた。ある意味“確信犯”である。
楽曲についてはシークレットと先にも書いたが、かなりバラエティに富んだ内容であったことは書き添えておきたい。鉄板ミュージカルナンバーは勿論、あっと驚くジャンルの楽曲が手練れのミュージカル俳優たちによって歌われるさまは新たな年の幕開けにふさわしい。
また、今回の企画で非常に興味深いのは、ゲスト4人の組み合わせが固定ではないこと。石川、大塚、保坂、中川に加え別公演日には浦井健治、今拓哉、涼風真世、平方元基、平野綾吉野圭吾(五十音順)ら、やはり山口と共演作品も多い俳優陣が登場し、さまざまな組み合わせで舞台を彩る。ということは、楽曲の構成やトークの内容もその日ごとにいろいろなバリエーションがありそう。特にトーク部分については毎回開けてみなければ中に何が入っているのかわからない福袋のようなドキドキ感がある。
さてここで、山口祐一郎のコメントを紹介しよう。
「新しい年を、ここ、シアタークリエで皆様と共に迎えられますことをとても幸せに思っております。大切なFriendsと繰り広げる、とっておきの時間。Singing! Talking! Not Dancing!
Friendsの出演は日替わりの組み合わせで、一体何通りのセットリストとトークが展開されるのでしょうか。皆様のご健康とご多幸をお祈りして、ご一緒に笑顔で温かいひとときを過ごせたらと願っております。皆様も是非、Friendsの一員としてお楽しみください。劇場でお待ちしております!」
歌とトークで紡がれる華やかで優しい時間。懐かしい楽曲が歌われるたびに、心の柔らかい部分が刺激されること間違いなしのステージだ。

取材・文=上村由紀子(演劇ライター)

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