錦織一清が演出・出演を務め、舞台『
あゝ同期の桜』を上演 渋谷天笑、岡
本悠紀、髙汐 巴ら出演
豊島中佐に島田正吾、庄司上整曹に辰巳柳太郎、出陣学徒に大山克己・緒形拳・若林豪等が扮し、大評判になり、各地で再演された。また、同年四月にNETで連続テレビドラマで放送され、六月には東映から中島貞夫監督により映画化された。
(中略)全航空特攻化のため入隊待機となった私は、グライダーの滑空訓練中に終戦を迎え、復員して机の中からそっと取り出した遺書と髪と爪を庭の隅で焼いた時の恥ずかしさは忘れられない。生き残ってしまったという意識はじつに強烈で、それまでよりずっと長い年数がたった現在の私をまだ支配している。間に合わなかった者、見送った者として、私は兄たちの死をいたみ、そして自分をも含めた戦争世代の“かえらざる青春”に、全身全霊からの単なる感傷でない、挽歌をかなでたい。今ようやく私はわれらの世代を語る機会と決意をもった。私の現代劇はここを出発点とする」
惣田紗莉渚
【あらすじ】
学徒動員が全学生に適用され、昭和十九年二月一日に特に優秀なる官立私立の大学生が、第十四期海軍飛行予備学生として、霞ヶ浦の海軍航空隊に配属された。その中には、官立大学成績主席の諸木、全日本で柔道空手の大会で優勝した神崎、飛行機乗りに憧れる工学部秀才原、実家の寺を継ぐ塚本、哲学者を目指す中沢、親孝行なクリスチャン西、皆夫々に将来に夢見ていた青年がいた。
軍事教練は、通常は四年かけて卒業するところを四ヵ月での速成士官教習で、体力知力共に、日々お国のためにと歯を食いしばって、精神論が強調され、先輩や上官からは、自省しろと鉄拳制裁の毎日。厳しい訓練を終え、各見習い士官は、方々の基地に配属され、戦局が思わしくない状況で、徐々に前線へと配属されていき、同期の者が次々と命を落としていく。
その中で、昭和二十年春、桜舞い散る季節、鹿児島の最前線基地鹿屋に十四期の士官たちが配属されてきた。つまり、操縦できる人間を最後の決戦に備えてのこと。昨年秋に行われた神風航空隊の活躍は、そこで戦死した人間が軍神とあがめられており、集まった面々は自分たちの出撃命令がいつ下されるか待機していた。そんな折、許嫁や両親が訪ねてきたり、地元の女学校の生徒たちが、お餅を作ってくれたりと、穏やかな青春の時間を過ごすこともあった。
いよいよ、特攻の日。悠久の大義に生きるべく笑って死地に赴いていく若者たち……。
震えながら、指導してきた豊島中佐や参謀たちが敬礼したまま見送るのであった。
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