由薫

由薫

【由薫 インタビュー】
私は私のままで普通に海外でも
曲を聴いてもらえる日本人でいたい

今よりもパンクな私が
小学生くらいの頃にいた(笑)

「lullaby」と「No stars」もToruさんのプロデュースですね。

はい。聴いてくださるみなさんをイメージすることとか、音楽に対する姿勢をToruさんはたくさん教えてくださったんです。Toruさんとの制作があったからこそ、その後の他の曲が生まれたんだと思います。“楽曲の艶やかさ、奥行きの深さを出すにはどうしたらいいんだろう?”とか、Toruさんとお会いする度に質問をして勉強をしています。

サウンドアレンジに対する興味も大きいんですか?

とても興味があります。今、私は転換期を迎えていると思います。最初の頃はアコギで最初から最後まで作ってデモを完成させていたんですけど、最近は曲の種を自分で作って、そこからアレンジャーのみなさんと話し合って作っていくことが増えているんです。耳が肥えて知識も増える中で完成させるのが難しくもなってきているので、アレンジャーさん、エンジニアのみなさんとかにたくさん質問をするようになりました。完全に自分だけでできるようにならなくても、いろいろ理解できているのは大事だと思うので。

ひとりでDTMの作業をすることはあるんですか?

最近は曲作りをしなくてはいけないのであまり触っていないんですけど、ちょっと前までDTMっぽい音楽とかを作ってみたりもしていました。楽器が弾けなくてもマウスの操作だけで曲ができるというのはものすごい可能性があるぶん、センスが問われると思いますね。そういう感覚も磨いていきたいです。

DTMだからこそ生まれる曲もあるのかもしれないですね。

そうですね。DTMをいっぱいやっていた時、いろいろな音をダウンロードできるサイトのサブスクの契約をしたんです。最近はあまりDTMをやっていないので、またちゃんとやりたいと思っています。毎月サブスクのお金が引き落とされていますし(笑)。

(笑)。「Hangry」はギターロックのサウンドですね。“怒り”と言ってもいいくらいの激しい感情が表現されているのが印象的でした。

これは曲がもともとあって、アルバムに収録する前提で歌詞を書き始めたんです。海外から日本に転校してきた子供の頃の自分と向き合いました。それは自分が芸術に興味を持つきっかけの根本なんです。

周囲から押しつけられる価値観に対する違和感を描いている曲ですが、当時はどのようなことを感じていたんですか?

あの頃の私はいろいろなことに反発して怒りつつも、かたちとしては従っていたんです。でも、あとから言われて気づいたんですけど、負けず嫌いでもあったみたいなんですよね。挫けそうになっても“やってやるわい!”って這い上がろうとする力があって、それに助けられながら生活していたと思います。だから、今よりもパンクな私が小学生くらいの頃にいたというか(笑)。その時のことを曲にしてみたのが「Hangry」です。

海外と日本では学校生活も大きく異なるものがあるんでしょうね。

そうでしたね。私はスイスから日本の学校に転校したんですが、スイスの学校はインターナショナルスクールだったので、さまざまな人種の子供たちが英語を使って会話をしていて、誰からも個性を否定されないユートピアみたいな環境だったんです。そういう中にいながらも“私は日本人なんだ”という意識と日本に対する憧れも抱いていて、日本に行くことを楽しみにしていたんです。でも、いざ日本に来てみたら私の言葉遣いは他の子たちと違っていましたし、エコバッグで登校していたりしたのも目立ってしまっていたみたいで、周囲と馴染んでいない子供であることを大人たちから怖がられていたところもあった気がします。だから、「Hangry」の歌詞みたいなことがすごくあったんですよね。“日本に戻る”という意識で日本に来てみたら、むしろ違和感があったというのは衝撃的な体験でした。

それが先ほどもおっしゃったように芸術への興味につながったんですよね?

自分の居場所を探す中で、本を読んだり、音楽を聴いたり、創作をするようになったんです。それが後に音楽を作ることにつながっていきました。

体験してきたことは今後も活かされていくんじゃないですか?

そうですね。日本の外でも生活していた身としては、J-POPと海外の音楽の間にあるのかもしれない壁を感じずに活動するのも目標です。世界で天下を獲るということではなくて、ひとりの日本人の女性アーティストが普通に世界中のみなさんに聴いていただけるようなことがあればいいですよね。そのためにリリックを全部英語にする必要はないと思っています。昨年3月に『SXSW 2023』に出たんですけど、あの時も“日本語は全然分からないけど気持ちは伝わってきた”って言われたんです。だから、私は私のままで普通に海外でも日本でも曲を聴いてもらえて、ライヴもする日本人のアーティストでいたいです。

今年3月の『SXSW』にも出演するんですよね?

はい。あと、今年の6月に3回目のツアーがあるんですけど、今までよりもいろいろな場所に行くので、それも楽しみにしていただきたいです…というか、私自身がみなさんにお会いできるのを楽しみにしています!(笑)

取材:田中 大

アルバム『Brighter』2024年1月17日発売 Polydor Records
    • 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
    • UPCH-7661
    • ¥5,500(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • UPCH-2265
    • ¥2,750(税込)

ライヴ情報

★1stアルバム『Brighter』を引っ提げた全国ツアーが決定!
6/08(土) 宮城・LIVE HOUSE enn 3rd
6/15(土) 広島・ALMICHTY
6/15(日) 福岡・ROOMS
6/22(土) 東京・WWW X
6/29(土) 愛知・ell.FITS ALL
6/30(日) 大阪・梅田Shangri-La

由薫 プロフィール

ユウカ:2000年、沖縄生まれ。幼少期をアメリカ、スイスで過ごす。15歳でアコースティックギターを手にし、17歳でオリジナル楽曲の制作を開始。かねてから映画や本が好きで、その頃に見つけた映画の主題歌を作るというオーディションで特別賞を受賞したことが現在の活動を始めるきっかけとなる。22年6月に楽曲「lullaby」でメジャーデビュー。23年2月には「星月夜」がドラマ『星降る夜に』主題歌に抜擢。各種チャート1位を獲得し、ST再生数は3か月足らずで5,000万回再生を記録。同年にはアメリカ・テキサス州で開催された『SXSW』にも出演し、国内外で注目を集める。グローバルなセンスを持ち合わせた洋楽と邦楽の間を漂うような音楽スタイルで、彼女自身も変化を続けながら音楽を届けていく。由薫 オフィシャルHP

「Crystals」MV

「Blue Moment」 (Acoustic Ver)

「sugar」MV

「星月夜」MV

「gold」 (Official Lyric Video)

「No Stars」MV

「lullaby」MV

『Brighter』全曲トレーラー

OKMusic編集部

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