ClariSが導くハッピーエンド『Clari
S AUTUMN LIVE 2023 ~Arcanum~』レ
ポート

2023.11.24(Fri)『ClariS AUTUMN LIVE 2023 ~Arcanum~』夜の部@Zepp DiverCity(TOKYO)
11月24日、クリスマスイブまであと1ヶ月と迫ったこの日、東京は最高気温20度を記録した。異常気象と言ってしまえばそれまでだが、そこにClariSのライブの「あの熱気」があったからだったんじゃないかと思ってしまう、そんな公演だった。
ClariS、2回目となるバンドスタイルでのライブ『ClariS AUTUMN LIVE 2023 ~Arcanum~』が開催されたZepp DiverCity(TOKYO)は開演前から2F席まで含めて超満員。オールスタンディングのバンドスタイルということで、観客席もペンライトに首からタオルを巻く人が多数。臨戦態勢は整った。
登場したクララとカレンが選んだ1曲目は「ナイショの話」。「1、2、1234!」のカウントから照明がステージを照らし出すと、赤い衣装に身を包んだ二人が。1曲めからバンドメンバーを紹介するというのも珍しい。この後、休みなく行くよ! という無言のメッセージを投げかけられたような気持ちになりつつ、2曲目は「ヒトリゴト」。「まだまだ盛り上がっていけますか!?」のMCから勢いをつけて2人は歌い出す。
長い手足をたおやかに操るように踊るクララと、全身のバネを活かして跳ねるように躍動するカレン。ClariSのライブは歌だけではなく、ダンスも見どころの一つだ。
友人の振付師の言葉を借りるが、ただ踊るのと歌いながら踊るのはまるで別物なのだ。それぞれのソロパートはお互いの魅力を活かすように踊り、どちらも目が離せなくなる。かと思えば歌声だけではなく動きもシンクロするようにダンスで表現してくれるのがClariSだ。一度見たからと言って納得は出来ない、見るべき部分は無限にある。
「コイセカイ」「君色」と休みなく歌い上げた後にClariSがチョイスしたのは「irony」。デビュー曲となるこの歌が世間に出てからもう13年が経つ。今だからこその「irony」がそこにある。「そんな優しくしないで」と歌う彼女たちの言葉の手触りは、以前とはまるで別物だ。そこから「nexus」と『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』繋がりの楽曲が続く。四つ打ちのビートがバンドの力で脈動のようにうねる、高くジャンプする人、ペンライトを振り続ける人、ただステージを凝視する人、楽しみ方もそれぞれの自由な空間。
「blossom」「treasure」と空気感を変えるような楽曲が続く。恋の歌が多いClariSだが、その恋のアウトプットは多種多様だ。特に「treasure」のポップスバラード感は秀逸。そこから2人が考えた仕掛けが披露されていく。今回のタイトルは「Arcanum(アルカナ)」、隠されたものという意味のこの言葉が示していたものはこの時間だった。
小学校のときにバンドを組んでいたという2人が楽器を演奏するというこの時間。まずはクララが歌う「忘れてもいいよ」に合わせてカレンがアコースティックギターを演奏する時間だ。堂に入った構えからの演奏は、しっかりとしたストロークで丁寧な演奏。どちらかというと歌うクララのほうが緊張しているようにも見えたが、歌にその影響はない。攻守交代で今度はクララがピアノを弾き、カレンが「カイト」を披露する。カレンらしい晴れ渡る青空のような曲。クララのピアノもフレッシュに響き渡る。
「Arcanum」な時間はまだ終わらない。もう一つの隠されたものはリリースし続けてきたカバー曲をメドレーで披露するというもの。「淋しい熱帯魚」「赤いスイートピー」「タッチ」という名曲たちがClariSというシンガーによってお台場に響き渡る。決して大きく手を加えないのがClariSのスタイル。原曲に対するリスペクトと、シンガーとしてどうそれを表現するかの真剣勝負でもある時間、カバーコーナー最後の1曲はPastel*Palettesの「もういちどルミナス」。コラボレーションから生まれたこの曲、アイドルポップ~アニソンクラシック~セルフコラボという流れで過去と現在をつなぐメドレーの時間は終わりを告げ、2人は静かにステージを去っていく。
ここでバンドによるセッションの時間となり、ベースが唸りを上げ、ドラムがリズムを刻み、ギターがオリジナルでリフを引き上げていく。バンドスタイルだからこそのグルーヴを生みあげていく。青いドレスに衣装替えしたClariSが選んだ後半戦の1曲目は「コネクト」。言わずとしれたTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の主題歌、正真正銘のキラーチューンである。そこから同じく『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』の主題歌「ルミナス」で会場は確実にピークを迎える。そこから「Gravity」、そして最新シングルのカップリング、切なくも勢いのある新曲「幻想恋慕」、80年代ポップスを感じさせるような「恋磁石」へと展開されていく。MCもほぼなし、給水もほぼ行わず踊り続け、歌い続けるClariSのフィジカルの強さはもっと称賛されるべきだ。
そして先程も語ったが、ClariSの楽曲には「恋」をテーマにした楽曲が非情に多い。少女の多感な気持ちを表すこれらのラブソングを歌いこなしながらも、あまりウェットな感情にならないのがClariSの魅力のような気がした。そこに感情が乗っていないわけではない。思い切り思いを載せつつも、どこか隣の席の女の子の気持ちを覗き見ているような不思議な感覚。仮面を外し、様々なことにチャレンジしているClariSの今のバランス感は13年というキャリアと努力に裏打ちされているように見える。
客席からの圧倒的なコールも味方につけた「シニカルサスペンス」、TVアニメ『憑物語』エンディングテーマである「border」では、客席ひとりひとりの目を見ながら歌う姿に、心の柔らかい部分にそっと手を触れられるような感覚になる。
本編最後はTVアニメ『リコリス・リコイル』オープニングテーマ曲である「ALIVE」。今のClariSを代表するように早く、強く、しなやかで美しい曲。銀テープが舞い散る中、会場のボルテージはここまで一度も下がることはなかった。
アンコールでは新曲「ふぉりら」をついにファンの前で公開。アレンジしたライブTシャツの上に、MVで着用した白衣に身を包んでのパフォーマンス。新曲では初めて2人で担当した振り付けとともに歌われる少しだけ大人の女の子の恋愛の物語はまた新しいClariSの扉を開くかのようだった。
客席とともに行った記念撮影では「思い思いのギャルポーズで撮りましょう」と無茶ぶりもあったが、それも客席は楽しんでいるのが印象的だった。ClariSが楽しんでいることこそがファンの喜びに直結している。そう感じられる時間も後わずか、最後の一曲は「PRECIOUS」。「ありがとう」と「大好き」を詰め込んだこの曲が響くなら、そこは絶対にハッピーエンド。約束された喜びに会場が揺れる。
2024年5月からライブツアー『ClariS SPRING TOUR 2024』が行われることも発表したClariS。「やっとみんなのもとに会いに行ける」と満面の笑みを見せたクララとカレンの明日は、いや、これからもずっと、きっとハッピーエンドへのプレリュードなのだと、強く思う。
取材・文:加東岳史

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