朝ドラ『ブギウギ』に出たダンスも、
古の京都にタイムスリップするOSK日
本歌劇団『レビュー in Kyoto 』開幕

レビュー in Kyoto Go to the future~京都(みやこ)から未来へ!~ 2023.11.11(SAT)~19(SUN) 南座
現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の主人公・福来スズ子のモデルとなった、往年のスター歌手・笠置シヅ子が在籍していたことで知られるOSK日本歌劇団(以下OSK)。スズ子が所属する「梅丸歌劇団」の先輩・橘アオイ役で団員の翼和希が出演し、梅丸のショーという形でOSKのレパートリーが再現されたことで「実際のOSKの舞台はどうなのかな?」と気になった方も多いだろう。そんな絶好のタイミングで、OSKが得意とするダンスを中心にしたレビューショー『レビュー in Kyoto Go to the future~京都(みやこ)から未来へ!~』が、11月11日(土)から南座で開幕した。
演出家&振付家の上島雪夫を招き、2023年初頭に大阪・東京で上演したレビュー「未来への扉~Go to the future~」に、京都をモチーフにした場面を加えてヴァージョンアップした本作。70分間ノンストップで、クラシックバレエからヒップホップまで、多彩なスタイルのダンスを次々に繰り広げる。「ダンスのOSK」に初めて触れるにはこれしかない! と断言したくなる、まさに決定打と言えるようなレビューショーだ。
翼和希、千咲えみ、楊琳、舞美りら、華月奏
公演初日となる11日(土)には、午前11時の公演の前に、南座のエントランスで劇団員たちのあいさつが行われた。トップスターの楊琳をはじめとする、5人の団員たちがあでやかな舞台衣裳で登場すると、集まったOSKファンたちはもちろん、黒山の人だかりに興味を持って立ち止まった観光客らしき人たちからも「おー」という声が上がる。この華やいだ空気の中で、団員たちは京都の街に向かって、以下のように挨拶をした。
楊琳
楊琳:本日から19日(日)まで、京都南座にて『レビュー in Kyoto』を上演いたしております。劇団員一同、真心を込めてお届けいたしますので、ぜひよろしくお願いいたします。
舞美りら
舞美りら:これまでの歴史を紡いで下さった上級生の方々の思いと、さらなる未来へと願いを込めまして、1公演1公演大切に舞台に立ちます。
千咲えみ
千咲えみ:本日より少し肌寒い気候となってまいりましたが、南座の中は熱い、熱いステージをお届けしたいと思います。千秋楽までどうぞよろしくお願いします。
華月奏
華月奏:一気に秋らしくなりましたが、千咲も申し上げました通り、劇場の中は熱い状態でございます。それに加えて桜も満開でございます。皆様どうぞ御覧ください。
華月奏
翼和希:「強く、たくましく、泥臭く、そしてあでやかに」(がキャッチフレーズの)朝ドラの世界から、約100年後の現在のOSKを、皆様にぜひとも全身で浴びていただきたいと思います。千秋楽までどうぞよろしくお願いいたします。
この挨拶の約30分後、四条通に直結した南座の入口が開かれて、ロビーや客席は観客たちでたちまちいっぱいになった。1階の客席では、OSKのスターたちのブロマイドがずらりと並べられ、他の南座の興行ではなかなか観られないほど華やいだ雰囲気となっている。さらに今回は朝ドラと連動して、笠置シヅ子にまつわるミニ展示も。笠置が長年CMキャラクターを務めていた台所洗剤「カネヨン」まで、ずらりと並べられていた。
『レビュー in Kyoto Go to the future~京都(みやこ)から未来へ!~』
男(華月奏)
ほぼオンタイムで劇場が暗転し、舞台に照明が入ると、貴族から武将まで様々な和の衣裳を身にまとった、劇団員たちが浮かび上がった。このあまりにもドラマティックなオープニングに、客席からは「待ってました!」という大向うまで入る。そして黒いタキシード姿の男(華月)が現れると、今回のために書き下ろされた「この都で」を歌唱。古の街で生きて恋して、そして散っていった先人たちに思いを馳せながら、過去にタイムスリップしていく。
葵の上(舞美りら)、紫の上(千咲えみ)、光源氏(楊琳)、夕顔(実花もも)
まずは平安時代を舞台に、光源氏(楊)、葵の上(舞美)、紫の上(千咲)が優美な舞を披露。男性が訪れるのをひたすら待つしかなかった女たちと、逆に待たせることの辛さにさいなまれる男の心情が、静かに伝わってくるようだ。そこに義経(翼)や弁慶(椿りょう)などが次々に現れると、舞台上に大きな橋がかかり、世界は一気に男と男が刀で競い合う、侍の時代へと移る。剣を振りながら舞う翼たちの姿が、実に凛々しくも麗しい。
龍馬(楊琳)とおりょう(舞美りら)
戦いの合間に男たちは、花街の女たちと一時の恋の花を咲かせる。やがてその中に龍馬(楊)と、浅葱色の羽織をまとった新選組の隊士たちが現れ、舞台はついに幕末に突入。龍馬は妻のおりょう(舞美)が見守る中で奮闘するが、最後には凶刃に倒れてしまう――これらの京都の過去を見届けたタキシードの男は「未来へ」という、タイトル通り都の未来を思う歌を歌うが、暗転していた舞台にバッと照明が入ると、そこには紫のきらびやかな衣裳をまとったOSKの団員たちが!!
「未来への扉~Go to the future~」
思いがけず満開の花が咲いたような空気の中、タキシードの男からバトンを受け継ぐように、本作のテーマ曲「未来への扉~Go to the future~」を全員で歌い踊る。今回の舞台の見どころの一つが、和テイストにあふれた新作部分から、洋物テイストの再演部分へと、いかに違和感なく移行させるか? ということだったが、見事にシームレスにつなげることに成功していた。
「ひと夜の戯れ」
「KYEE」
ここからは「ダンスのOSK」にふさわしい、バラエティに富んだダンスシーンの連打だ。アルゼンチンタンゴでクールに決める「ひと夜の戯れ」、ストリート感にあふれるヒップホップダンスが異色の「ここが僕たちのベスト・プレイス」(華月のレペゼン京都のラップがあざやか!)、これぞ歌劇の群舞の王道「スタイリッシュに決めて」、情熱的なフラメンコの熱さにクラクラしそうな「Passion」と、まったく観客の気持ちをゆるめる隙がない。なかでもキュートなチアリーダーたちが、『ブギウギ』でも大評判となった名物の高速ラインダンスを見せる「KYEE」は、奇跡的なまでの一糸乱れなさに思わず拍手喝采だ。
「ワルツ」
「Swan Lake」
娘役だけによる優美なバレエの「ワルツ」、黒服の男役がダンディに決める「Swan Lake」と続き、最後は再び「未来への扉~Go to the future~」を全員で合唱。<レビューはきらめく 愛を乗せて レビューの光いつまでも/(略)/さぁ踊ろう さぁ歌おう みんなと一緒に 百年のこの舞台で>と、OSKの団員たちの気持ちをそのまま歌にしたような、決意と希望に満ちたナンバーに乗って、幕は閉じられた。
楊琳
再び幕が上がると、楊がOSKを代表して感謝のあいさつを行った。最初に「(客席から)名前を呼んでいただけると、コロナも少し落ち着いたのかなと思います。自分の名前を叫んでいただけるのは、とても光栄です」と言うと、客席からはさらに大きな拍手と声援が。それに続けて「この初日に向けて劇団員一同、日々お稽古に励んでまいりました。そしてこうして、満杯の皆様にご来場いただいて、やっと『レビューin Kyoto』が完成しました。毎回この瞬間は、感謝の気持ちで一杯でございます」と感慨深げに礼を述べた。
「桜咲く国」
さらに続けて「歌劇という文化、レビューという文化を、心から好きになっていただきたいと思います。19日(日)まであでやかに! お届けいたしたいと思いますので、『ブギウギ』とともに、どうぞよろしくお願い申し上げます」と挨拶をすると、ドラマにも登場したOSKのテーマ曲「桜咲く国」が流れる。舞台上に桜色のパラソルを持った全団員が現れ、客席もそこかしこで小さなパラソルがポン、ポンと開く。華月がエントランスのあいさつで述べた通り、劇場が桜で満開になった。
「桜咲く国」
紙吹雪が顔に付着するのを避けるという、苦肉の策で使われるようになったというパラソルだが、タイミングよく閉じたり開いたりすることで、まるで桜の花が舞台で絶え間なく咲くかのように見える。京都は間もなく紅葉の季節に入るけど、この場所だけは辺り一面桜に包まれたような心地。その多幸感一杯の中で、初日のショーは終了した。とにかく密度が濃くて、たった1時間ちょっとの上演時間とは思えないほどの充実度だ。
「I love music」
そしてOSKのレビューを観て感じるのは、楊がこの公演の会見でも言っていた通り「ただキレイなだけじゃなくて、生命力の強さがあってたくましい」ということ。確かに、なんだか心が浮き立って応援したくなるような気分となってくる。楊は以前OSKの舞台を「スポーツ観戦」に例えたことがあるらしいが、言い得て妙だろう。まさに「強く、たくましく、泥臭く、そしてあでやかにー!」という言葉通りの世界が、そこには確かにあった。
翼和希
このレビューショーは一週間に渡って、1日3公演行われる。上演時間がコンパクトでスケジュールの調整がしやすいのも、トライアル気分で入りやすいポイントだろう。特に18日(土)の17時公演はイープラスの貸切で、通常よりもお得な特別料金で観劇できるので、利用しない手はない。『ブギウギ』を通じてOSKのレビューに興味を持った人、特に翼が演じた橘パイセンの魅力にハマってしまった人は、ぜひ京都まで足を運ぶべしだ!
取材・文=吉永美和子 撮影=ハヤシマコ

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