自動車の未来をどう覗く?生まれ変わ
った『JAPAN MOBILITY SHOW 2023』レ
ポート

2023年10月28日(土)~11月5日(日)に東京ビッグサイトにて『JAPAN MOBILITY SHOW 2023』が開催される。1954年に初開催された「全日本自動車ショウ」から数えて約70年の歴史を持つ、世界五大モーターショーの1つに数えられる威厳あるイベントは変革の時を強いられている。1964年の第11回から「東京モーターショー」に改称し、およそ60年近く親しまれた名前から、今回新たに「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」として生まれ変わったことで注目をしている方も多いことだろう。隔年開催の前回(2021年)がコロナ禍で中止となり、4年ぶりの開催ということでも「行ってみようかな?」とお考えのそこのアナタに向けて、会場の雰囲気や見どころなどをお届けしよう。
◆押し寄せるEVの波にどう乗るか?国産メーカーの矜持が顕在化する結果に
前述の通り、1954年から数えておよそ70年もの歴史を持つ、間違いなく日本の自動車業界における一大イベントが、東京モーターショー改め、この『JAPAN MOBILITY SHOW 2023』だ。スイスのジュネーブ、フランスのパリ、アメリカのデトロイト、ドイツのフランクフルト、そして東京で開催される同イベントが世界五大モーターショーと数えられて久しいが、近年ではこれら五大モーターショーを取り巻く環境も大きく変化している。
HONDAブースではシティとモトコンポを彷彿させるモデルも展示 撮影:前田勇介
今回の主要な参加社をまとめると、乗用車がトヨタ・日産・ホンダ・マツダ・三菱・ダイハツ・スバル・スズキ・レクサスに加え、輸入車はBMW・メルセデスベンツが出展し、そこへ新興EVメーカーのBYDとソニー・ホンダモビリティが名を連ねた。商用車はいすゞ・日野・三菱ふそう・UDトラックスの4社、二輪車はカワサキ・ホンダ・ヤマハ・スズキにEVメーカーのaideaが出展。やはり国産車メーカーの名前が目立つ。これら主要な参加社は東展示場1〜6にブースを構えている。
SUZUKIブース 撮影:前田勇介
そのさらに奥、東展示場7・8にはキャンピングカーエリアやモータースポーツエリア、次世代モビリティ関連の出展ブースが軒を連ねており、オーリンズやミクニのような機械・部品エリアは西展示場4F、南展示場は家族で楽しめるトミカコーナーやスーパーカーコーナーに加え、職業体験ができるキッザニアエリアやフードコーナーが設けられている。

KAWASAKIブースではNinjaのハイブリッドモデル、EVモデルを展示

BMWブース 撮影:前田勇介
本レポートでは主要メーカーが並ぶ東展示場エリアと南展示場エリアから抜粋し、場内の雰囲気や注目したい展示についてお伝えしようと思う。
◆“GT-R"ではなく、”スカイライン”の意思を継ぐ者
日産ブースの今回発表されたハイパーフォース 撮影:前田勇介
東展示場エリアで、まず出迎えてくれたのは日産だ。目玉の「ハイパーフォース」なる次世代高性能スーパーカーがステージ中央に鎮座している。全固体電池を最適な重量バランスで搭載、高出力モーターのパワートレーンにより、最高出力1000kWを発生、圧倒的な加速力を発揮。また、強力なダウンフォースを生み出す空力設計、進化した電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」、高強度カーボンを活用した軽量化車体により、サーキットやワインディングロードで今までにないコーナリング性能と卓越した操作性を実現するという。スタイリングは”鉄仮面”ことR30スカイラインのシルエットフォーミュラをモチーフとしたような、直線的で角ばったデザインとなっている。現在の日産の”顔”とも言えるハイパフォーマンスカーのGT-Rは2007年の登場から毎年のように改良こそ加えられているものの、完全に円熟しきっており、次世代機の噂も絶えないが、あえてGT-Rの設定がないR30型スカイラインを踏襲したデザインスタディモデルを送り込んできた事に、何らかの意思を感じるのは私だけだろうか。4輪制御技術と言えば第二世代GT-R(R32)に投入された「アテーサE-TS」を思い浮かべる方も多いだろうが、その進化版とも言える技術も合わさった”史上最強のスカイライン”を大胆にアイコンとして用いてきたなという印象だ。
日産ブース 撮影:前田勇介
日産ブース 撮影:前田勇介
◆軽量2シーターオープンこそマツダの象徴
MAZDAブース 撮影:前田勇介
続いてはマツダブースを紹介しよう。真っ赤なNAロードスターや、現行のNDロードスターやロードスターRFなど、ロードスターだらけの中にポツリと置かれているのは「マツダ アイコニックSP」と名付けられたコンセプトモデルだ。車格的にはロードスターよりもひと回りほど大きく、FD型のRX-7と同じくらいのサイズ感に見受けられるが、水素など様々な燃料を燃やせる拡張性の高いロータリーエンジンを活用した、2ローターRotary-EVシステムを搭載。MX-30で発電機として現代に復活した同社伝統のロータリーエンジンだが、その発展系として軽量コンパクトなスポーツモデルに搭載。ロータリーエンジンと軽量2シータースポーツ、マツダにとって象徴的な2つの要素を掛け合わせた、まさにアイコニックな1台となっている。
MAZDAブース 撮影:前田勇介
◆コペンの拡がる可能性
ダイハツブース ビジョン コペン 撮影:前田勇介
ダイハツブース ビジョン コペン 撮影:前田勇介
2シーターオープンと言えば、ダイハツ・コペンも人気の1台だ。ダイハツブースではそんなコペンの発展系をいくつか見ることが出来る。世界初公開となる「ビジョン コペン」は電動開閉式ルーフ「アクティブトップ」を継承しながら、FRレイアウトとカーボンニュートラル燃料の活用を見据えた内燃機関の組み合わせにより、走る楽しさを極めた新たな小型オープンスポーツを提案。ボディサイズは3835✕1695✕1265mm(全長✕全幅✕全高)、ホイールベースは2415mmの車体に排気量1300ccのエンジンを搭載するという。660ccのおよそ倍の排気量に加え、FFではなくFR。市販化されたら、どれほど楽しいモデルだろうと思ってしまうが、それもこれも来場者の反応などを見ての事だろうから、気になる方はぜひダイハツブースでスタッフに生の声を届けに行ってほしい。またコチラもコペンをモチーフとしたバギーにリフトアップされたコンセプトモデル「オサンポ」も出展されており、コペンを軸に多様な可能性を感じられるブースとなっていた。
ダイハツブース ビジョン コペン 撮影:前田勇介
ダイハツブース ビジョン コペン 撮影:前田勇介
ダイハツブース 撮影:前田勇介
◆見て、乗って、体感。憧れのキャンピングカー
キャンピングカーブース 撮影:前田勇介
続いて東展示場7・8エリアからはキャンピングカーエリアの様子をお届け。夢の超高級輸入キャンピングカーから軽キャンピングカー、ハイラックスベースで悪路も安心の本格派キャンピングカーまで、様々な種類の車両が出展。実際に室内の広さなども体感できるので、よりキャンピングカーを身近な存在として感じられることだろう。
キャンピングカーブース 撮影:前田勇介
キャンピングカーブース 軽バンのキャンピングカーも充実していた 撮影:前田勇介
またモータースポーツエリアも併設されており、最新のF1やインディ、プロトタイプスポーツカーやWRCを走るラリーマシン、SUPER GTの車両やGPマシンの車両展示も行われている。
モータースポーツエリア 撮影:前田勇介

◆エンジン組み立て体験などができる、充実したキッザニアエリア
トミカブース 撮影:前田勇介
キッザニアエリア SUBARUブース 撮影:前田勇介
キッザニアエリア TOYOTAブース 撮影:前田勇介
最後に南展示場エリアはマニア垂涎の限定トミカの販売や、スーパーカーの展示もあるが、ぜひお子さん連れのファミリー参加社にはキッザニアエリアを体験して頂きたい。こちらも主要な国産車メーカーがブースを構えており、エンジン組み立て体験や、ピットクルー体験、日本が世界に誇る板金技術の高さなどを体験できるワークショップが開催されている。SUBARUブースでは実際にニュルブルクリンク24時間耐久レースを戦ったWRX STIそのものを使用し、インパクトレンチを使ったナットの開け閉めや、トルクレンチを使って適切なホイールの装着方法などが学べるようだ。各ブースともに所要時間は5〜45分程度で、予約不要(マツダのみ要予約)で先着順となっているので、入場したらまずは南展示場を目指してみるのが良いかもしれない。
ツバメインダストリのARCHAXも展示されていた 撮影:前田勇介
◆より注目されるニッポンの車両たち
冒頭で「五大モーターショーを取り巻く環境は大きく変化している」と述べたが、やはり1番の変化は、各国でのガラパゴス化と言えるだろう。以前は各国・各メーカーがこの五大モーターショーにはこぞって参加し、新たなコンセプトモデルや、市場へ投入間近のニューモデルをセンセーショナルに発表する場として、これらのモーターショーは存在していたが、近年ではどのメーカーも自国と主要マーケットで開催されるモーターショーに出展する程度。今回のラインナップを見て「国産車メーカーばかりだな」と思われた方もいるかとは思うが、逆にフランクフルトではドイツ車や欧州のメーカーばかりだし、デトロイトでは北米大陸を主要なマーケットにしているメーカーばかりだ。自動車自体は、寒冷地だろうと温暖な地域であろうと、どの大陸でも走れるような性能が求められたり、あるいはコスト削減という意味でもプラットフォームがあらゆる車両、時にはメーカーの枠組みを超えてまでして共有され、ある意味で画一的で個性のない自動車ばかりが増えたようにも思えたが、モーターショーとして捉えると各地域でガラパゴス化しているのは非常に興味深いところだ。
だが逆に言えば、国産車メーカーとしてはより注目される場として腕の見せ所であるし、海外メディアからしてみれば直接、日本へ行かなければ日本車メーカーの動向を確認できないということだ。実際に会場を歩いてみても、海外からの来訪者が以前にも増して多かったように感じた。
またEVの台頭で、これまでの自動車作りが根本的に覆った事によって、また自動車に個性が戻ってきたようにも感じる。いやはやどうして、やはり自動車は内燃機関で走ってこそという考えが染み付いている筆者であるが、エンジンを搭載しないからこそ可能となるレイアウトの自由度の高さは、完全に熟しきった自動車産業に革命を起こしつつある。低重心化やモーターならではの大出力、加速感などは実際に乗ってみると悪くないのかもしれない。とにかく、EVにしろガソリン車にしろ、自動車は走ってナンボ。問題なのは、運動性能を謳ったEVモデルに実際に乗れないことなのだ。実際に乗らずにあれやこれやを言うのは違うと思うし、自分の目と耳で確かめずにやんやと言うのもお門違いだ。誰が何と言おうと電気自動車の時代は必ずやってくる。ともすれば4年ぶりに訪れたまさに好機。自動車の未来に目を向けてみるのも一興か。
レポート・文・撮影:前田勇介

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