岩井澤健治監督

岩井澤健治監督

岩井澤健治監督が海外映画祭に感じる
可能性 「アニメーションにはまだ手
つかずの“やれる部分”がある」

岩井澤健治監督 10月24日、第36回東京国際映画祭のアニメーション部門の特集「海外映画祭と監督」の1作として劇場アニメ「音楽」が東京・角川シネマ有楽町で上映され、岩井澤健治監督がアニメ評論家の藤津亮太氏とトークを繰り広げた。
 同作は、大橋裕之氏による漫画「音楽と漫画」が原作。楽器を触ったことがない不良学生たちが思いつきでバンドをはじめる物語を、実写の動きをトレースして描く「ロトスコープ」という手法で4万枚以上を手描きして映像化した。2019年にカナダのオタワ国際アニメーション映画祭で長編コンペティション部門のグランプリを獲得し、日本では20年に劇場公開された。
 オタワ国際アニメーション映画祭に出品した経緯を藤津氏に聞かれた岩井澤監督は、「知名度が全然なかったので、海外の映画祭でワールドプレミアをすることで箔をつけたかった」と率直に答え、「オタワの映画祭が一般の人に最初に見てもらう場だったので、どう受けとめてもらえるか不安だった」と当時を振り返る。会場では映画の音が聞こえなくなるぐらいの笑いがおこり、上映後にはサイン攻めにあったという岩井澤監督は大きな手ごたえを感じ、「気分がよくなってちょっと舞い上がってしまいました」と笑顔をこぼす。グランプリを受賞したことは、ミニシアターが中心だった国内上映の大きな後押しになったそうだ。
「音楽」(c) 大橋裕之・太田出版/ロックンロール・マウンテン 2020年のアヌシー国際アニメーション映画祭でも、「音楽」は長編部門の最優秀オリジナル音楽賞を受賞。コロナ禍でオンライン開催だったため参加の実感がわかず、ただただ賞の結果を待っていただけだったそうだが、「『音楽』の音楽を評価してもらえてうれしかった」と話す。
 藤津氏から、「日本のアニメビジネスは大きいだけに“型”のようなものがある。海外の映画祭には、アニメプロパーでない岩井澤監督のような人が“暴れられる”スキマがあるのでは?」と聞かれると、「配信では間口が広がっている」「挑戦的な企画が立てやすい」と答えながらも、「僕がつくる作品はニッチなこともあってか、なかなか上手く進まないことも多いです」と吐露。「アニメーションにはジャンル的にまだ手つかずの“やれる部分”があって、新しい試みや真の意味での多様性がある作品が生まれる可能性をもっている。そうしたポテンシャルをもっているのがアニメーションの魅力だと思います」と語る一幕もあった。
 岩井澤監督は、「愛しのアイリーン」「宮本から君へ」で知られる新井英樹氏による中編漫画「ひな」をアニメ化したパイロットフィルムを、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭アヌシー・アニメーションショーケースで発表している。じつはこの作品は次々作で、次回作として別の作品を制作中であることもトークのなかで明かされ、「『音楽』の公開から3年あいだが空いてしまったので、第2作と第3作は連続してつくれたらと思っています」と今後の意気込みを語っていた。第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
【関連リンク】・第36回東京国際映画祭(TIFF)公式アニメ特集

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