MUCC、逹瑯(Vo)誕生日に地元・茨城で
開催したツアーファイナル公式レポー

結成25周年のMUCCが、2008年に発表したアルバム『志恩』と2009年に発表したアルバム『球体』をコンセプトにしたツアーのファイナル公演を逹瑯(Vo)の誕生日でもある8月21日(月)に地元茨城・水戸市民会館で開催。当日のオフィシャルレポートが到着した。

結成25周年を迎えたMUCCが、2022年から様々なコンセプトツアー『Timeless』を行なっている。過去にリリースしたアルバムをコンセプトにしたツアーで、2023年6月からはシリーズ第三弾となる『MUCC 25th Anniversary TOUR「Timeless」~志恩・球体~』をスタートさせた。2008年に発表した8枚目のアルバム『志恩』と2009年に発表した9枚目のアルバム『球体』をコンセプトにしたツアーだ。そのファイナル公演となったのが8月21日(月)=茨城・水戸市民会館でのライブ。
MUCCの地元である茨城で、この日は逹瑯(Vo)の誕生日。開場のBGMは、逹瑯が選曲したであろう懐かしいナンバーの数々。穏やかでピースフルなムードも流れる会場だ。そんな空気が一変したのは、18時30分にSE「球体Instrumental」が響き始めたとき。
呪術的な調べに合わせ、会場を埋め尽くしたMUCCの熱狂的ファンである夢烏たちのハンドクラップが巻き起こった。照明で真っ赤に染まったステージに、まず姿を現わしたのはサポートメンバーの吉田トオル(Key)とAllen(Dr)。曲が「99」のイントロであるシーケンスフレーズへと切り替わる中、YUKKE(Ba)とミヤ(Gt)も登場し、歓声と拍手が二人を包み込む。そしてミヤが哀愁あるメロディを弾き始めると、二段仕様のステージセットの上段にスポットライトの光が集中。上段のセンターに光を浴びて姿を見せたのは逹瑯である。誕生日を祝福する大きな拍手も起こるが、逹瑯の浮かべる表情は嬉しさというより不適さも入り混じった笑み。すでにライブに入り切った逹瑯がいた。
その逹瑯がマイクを力強く握り直した直後だった。ド迫力のシャウトをとどろかせ、それを合図にミヤとYUKKEはリフをかき鳴らす。一気に攻め立ててくるMUCCの極悪サウンドとストロングなボーカルに、覚醒されるしかない夢烏たち。ホールで椅子席なのにも関わらず、MUCCと夢烏はゼロ距離。そう感じるほどの熱狂ぶりだ。それでも容赦なく激しいライブパフォームを繰り返しながら熱いプレイを浴びせ続けるMUCC。曲のエンディングで「このでっけえヤツの44歳を祝おうぜ!」とミヤの放った言葉は、火に油を注ぐ格好となった。「咆哮」に突入するや、ミヤとYUKKEの繰り出す殺戮リフに合わせてヘッドバンギングするわ、サビでは逹瑯と一緒になって声をあげるわ、衝動と激情が渦巻くフロア。逹瑯も「いい感じじゃん! でっかい声、ちょうだいよ!!」と煽りを喰らわせる。夢烏たちの祝福も兼ねた狂騒ぶりを前に、ようやく嬉しそうに笑顔もこぼす逹瑯である。
また夢烏なら十分に分かっていると思う。MUCCはいつだって変化を恐れないバンドであることを。発表する曲やアルバムのたび、MUCCは新たな表情や側面を見せつけてくる。このツアーのコンセプトとなった『志恩』と『球体』は、そうしたMUCCの音楽的スタンスを強く印象付けた2作品だった。
なにしろ、メタリックさを極めたアグレッシヴな曲もあれば、トライバルでヘヴィネスな曲もあるし、後のEDMの先駆けと思えるダンサブルなナンバーだってある。約15年前にそういった曲を発表したとき、あまりにも振り切った多種多様な曲の数々に、バンドを理解しているはずの熱心なファンですら驚いた。だが、頭で理解する前に、身体や心が勝手に反応してしまう曲たちばかりだった。『志恩』と『球体』に収められた曲は、様々な曲調でありながら、その後、ライブのキラーチューンとして威力を発揮し続けている。
その曲が軸になっているライブだから、夢烏たちは正気を失うほどの盛り上がりっぷり。それを前に、さらに気合いと気持ちの入ったステージを展開するMUCC。故郷でのライブというのも、逹瑯の誕生日というのも、メンバーと夢烏らのモチベーションが高まる要素になっているはずだ。
「バースディイ・ボーイが君たちを楽しませるために来ました」
6曲目「レミング」を終えたところで、逹瑯が話し始めた。
「私を祝いに来たあなたたちのために、カラッカラになるまで働かさせていただきます。カラッカラになるまで、いろんなものを出していってください」
YUKKEの弾くアップライトベースに逹瑯がハープフレーズを絡ませる「ファズ」、夢烏たちの手にするLEDの光るMUCCの扇子が舞い踊る中でダンサブルに決める「アンジャベル」、50'sロカビリーとブルース・テイストが同居する「カナリア」など、『志恩』と『球体』の時期ならではのヴァリエーションで、まさに逹瑯のMCどおり思いっきり楽しませるMUCC。どの瞬間もクライマックスだが、一人ひとりを曲の世界に思いっきり引き込んだのは、ライブ中盤過ぎ。今ツアーでは披露されていなかった『志恩』収録の「蝉時雨」から立て続けに組曲のように披露した「小さな窓」。切なさ、悲しみ、願いなど、曲に描いた情景と感情で夢烏たちを溺れさせていく。逹瑯の歌は、会場にいる全員の心をつかみ、そして優しく抱きしめてもくれた。「讃美歌」を歌い終えたとき、夢烏たちからの感謝の拍手が逹瑯を包み込んだ。
しかし次からは急展開。「志恩」でヘヴィネスをまき散らすMUCCに、夢烏たちも全身をグルーヴながら快楽を貪る。
「今日はアタシの誕生日ということらしいんですけど、それもそうなんだけどさ、今日はこの『志恩』と『球体』ツアーのファイナルとなってます。水戸市民会館へ、ようこそ! 長くやりすぎた25周年のツアーが、今日が終わると、(『Timeless』シリーズのツアーが)残り1本になるんですよ。2023年、まだ25周年が続きますんで。25周年やっている間に、2回、誕生日が(笑)」
夢烏たちを歓迎する言葉もはさみながらライブはエンディングに向かって突き進む。小気味いい「空と糸」に続いて、「やるか! 騒ぐか!!」と「塗り潰すなら臙脂」もたたみ掛けた。スモークも吹き上がるステージで、勢いよく走り周りながら抜群のフォーメーションでも視線を奪うミヤとYUKKE。ステージ・センターでシャウトやグロウル、メロディなど唱法を瞬間ごとに切り替えながら、シンガーとして存在感を放ち続ける逹瑯。曲が次々に続く中、逹瑯とミヤとYUKKEはステージセットの上段で3人で並んでライブパフォームしながら笑顔も。会場を埋め尽くす夢烏たちも、もちろん最高の笑顔を輝かせた。そしてライブ本編のラストを締めくくったのは「リブラ」。強い生命力も宿らせた逹瑯の歌声に、ストリングスもフィーチャーした美しいバンド・アンサンブルが絡み、夢烏たちを感動で包み込んでいった。
そしてアンコールだが、この日は“アンコール”の掛け声ではなく“逹瑯”コールも巻き起こった。それに答えて逹瑯が登場するが、ステージ袖から普通に出てしまったため、自ら仕切り直し。ステージセットの上段センターから再びカッコつけながら登場して笑わせる。誕生日を迎えた瞬間にLINEで12012やWaiveのメンバーからメッセージが届いていた話や、YUKKEやミヤとのお笑いトークなども展開。すると、そこに突然現れたのは、茨城のご当地ヒーロー=イバライガー。逹瑯の誕生日をお祝いするために来たという。逹瑯とイバライガーをデザインしたケーキやプレゼントを渡し、「今日から君もイバライガーだ!」と一緒にヒーロー・ポーズを取ろうとするイバライガー。ノリノリでポーズを決めるミヤとYUKKEに対して、傍観者と化す逹瑯。主役の逹瑯がやってくれないことに戸惑うイバライガー。YUKKEの「やったほうがカッコいい。みんなも見たいべ」という説得で、ようやく4人全員でイバライガーポーズを決めた。
「これからも愛する地球と茨城を一緒に守っていこう。MUCCのみんなに絶え間ない愛を注いでくれ。さあ、これからアンコールだ!」
イバライガーの高らかな宣言で始まったのは「蘭鋳」。もちろんイバライガーも一緒だ。曲の合間には“イバライガー!”と叫ぶミヤ。そして夢烏たちを激しいモンキー・ダンスで狂乱させる「スイミン」も喰らわせる。そしてラストは「WORLD」。メンバー全員によるコーラス・ハーモニーが響く中、夢烏たちは愛情を込めて一緒に歌い、コーラスをさらに美しく彩っていく。みんなの歌声を全身で浴びながら、想いを込めて歌う逹瑯の姿がステージにいた。その幸せそうな表情に、最高のバースディを迎えられた喜びも満ちていた。
文=長谷川幸信 撮影=冨田味我
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