岡本健一、浦井健治、中嶋朋子、ソニ
ンら出演 シェイクスピアのダークコ
メディ『尺には尺を』『終わりよけれ
ばすべてよし』を交互上演

2023年10月18日(水)~11月19日(日)新国立劇場 中劇場にて、シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』が上演される。
新国立劇場の2023/2024シーズンは、シェイクスピア二作品の交互上演でスタートする。『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』の二作品は、シェイクスピアの戯曲のなかでは上演回数もそれほど多くはなく、またどちらも、最初の全集では"喜劇"に分類されているが、ストーリーもやや複雑で、登場人物も屈折したキャラクターが多く、"ダークコメディ(暗い喜劇)"と呼ばれている。
しかし、単に暗いだけではなく、人間の内面、時に自我と欲望をむき出しにした登場人物たちは、同時期に書かれた『ハムレット』から始まる四大悲劇の主人公たちを彷彿させる、魅力的で深い人物造形に満ち、物語も終幕に至るまで、息をもつかせず展開するなど、隠れた傑作とも称されている。
また、この二作は時をおかず執筆されたと推測され、ストーリー的にも同じテーマを持つ、表裏一体のような戯曲であり、交互上演にこそ意味があると新国立劇場は考えている。さらに、シェイクスピア作品の中では、数少ない、女性が物語の主軸となる作品でもあり、両作品とも登場人物たちは降りかかる困難に果敢に立ち向かい、世の理不尽を白日の下にさらす。
そこで、2023/2024シーズンの開幕は、この二つの作品を交互上演する、という前代未聞の企画に新国立劇場は挑む。
(左から)ソニン岡本健一、中嶋朋子、浦井健治  
演出は、「新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズ」の鵜山 仁があたり、出演は岡本健一、浦井健治、中嶋朋子をはじめとするこのシリーズお馴染みの俳優陣と、今回新たに参加するメンバーが顔を揃えた。さらに『ヘンリー六世』以来、14年ぶりに新国立劇場シェイクスピア作品の出演となるソニンにも期待が高まる。
12年に亘りシェイクスピアの歴史劇を上演してきた新国立劇場のカンパニーだからこそできる、チャレンジングな企画に期待しよう。
新国立劇場の演劇『尺には尺を』/『終わりよければすべてよし』メイキング映像
【尺には尺を】あらすじ
ヴィーンの公爵ヴィンセンシオ(木下浩之)は、突然出立すると告げ、後事を代理アンジェロ(岡本健一)に託し旅に出る。だが実は、密かにヴィーンに滞在したまま、アンジェロの統治を見届ける目的があった。というのも、ヴィーンではこのところ風紀の乱れが著しく、謹厳実直なアンジェロが、法律に則りそれをどう処理するのか見定めようというのだ。
そんな法律のなかに、結婚前の交渉を禁ずる姦淫罪があり、19年間一度も使われたことがなかった。アンジェロはその法律を行使し、婚姻前にジュリエット(永田江里)と関係を持ったクローディオ(浦井健治)に死刑の判決を下す。だがクローディオはジュリエットと正式な夫婦約束を交わしており、情状酌量の余地は十分にあったのだ。
それを知ったクローディオの妹、修道尼見習いのイザベラ(ソニン)は、兄の助命嘆願のためアンジェロの元を訪れる。兄のために懸命に命乞いをするイザベラの美しい姿に、アンジェロの理性は失われ、自分に体を許せば兄の命は助ける、という提案をする。それを聞いたイザベラはアンジェロの偽善を告発すると告げるのだが、彼は一笑に付し、「誰がそれを信じる?お前の真実は、私の虚偽には勝てぬ」とイザベラに嘯く。
クローディオの命は? イザベラの貞節は? すべてはアンジェロの裁量に委ねられる。
【終わりよければすべてよし】あらすじ
ルシヨン伯爵夫人(那須佐代子)には一人息子バートラム(浦井健治)がいた。彼はフランス王(岡本健一)に召しだされ、故郷を後に、パリへと向かう。だが王は不治の病に蝕まれ、命は長くないと思われていた。
もう一人、伯爵夫人の元には侍女として育てていたヘレナ(中嶋朋子)という娘がいて、その父は、先ごろ他界した高名な医師だった。彼はヘレナに、万病に効く薬の処方箋を残していた。そしてヘレナは、実は密かに、身分違いのバートラムのことを慕い、妻になりたいと願っていた。
その想いを知った伯爵夫人は、ヘレナにバートラムを追ってパリへ向かうことを許す。パリに到着したヘレナは王に謁見し、亡父から託された薬で王の病を見事に治してみせる。王は感謝の印として、ヘレナに望みのものを褒美として与える約束をする。ヘレナはバートラムとの結婚を望むが、彼はそれを拒否し、自ら志願して、逃げるように戦地フィレンツェへ赴いてしまう。残された手紙には「私を父親とする子供を産めば、私を夫と呼ぶがいい。だがその時は決して来ないだろう。」と認められていた。
ヘレナは単身、バートラムを追ってフィレンツェへと旅立つ。愛する彼と結ばれるために。

演出 鵜山 仁 メッセージ
物の見た目や物を見る立場が変わると、人の心は他愛無く変化してしまう。加害者のはずが被害者になり、被害者のはずが加害者になる。とすれば「生」の世界はたちまち「死」の世界に、「死」の世界がもしかしたら「生」 の世界に反転するかもしれない。『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』。この二つの「問題劇」にしかけられた二つのベッドトリックは、そんな人生と世界の変容を象徴しているような気がします。
三年に及ぶコロナ禍、僕にとって驚きだったのは、目にも見えない、生物だか無生物だかも判然としないウイ ルスという存在に、世界がここまで翻弄されてしまったことです。そして昨年二月以来のロシアによるウクライナ侵攻は、「戦争」が、実は平穏に見えたわれわれの日常の、すぐ隣に息を潜めていたことを痛感させました。
われわれの目に見えていたのはなんと狭い世界だったのか、ならば舞台という特権的な場では、生きている現実の人間だけではなく、目には見えない世界、死者たちの歴史や、ウイルスも含めた森羅万象、あらゆるものとの交信を心がけたい。ここでは日常生活の利害、効率、善悪を一旦度外視した、遠大、深遠なコミュニケーショ ンが求められます。そのためにあらゆる手段を動員して見えない者たちに呼びかけ、見えない者たちの呼びかけに応えたい。
2009年の『ヘンリー六世』から2020年の『リチャード二世』に至るまで、新国立劇場の舞台で、シェイクスピアの歴史劇を創ってきた仲間たちとの新しいチャレンジ。これを機会に是非、もう一歩先の世界に、分け入ってみたいと思っています。

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