ザ・リーサルウェポンズ、ロックでダ
ンスでコミカルでノスタルジック Z
epp Shinjukuワンマンは愛と幸せしか
感じない素敵な空間に

ザ・リーサルウェポンズ『E.P.ウソつかない」』 2023.07.06(thu) Zepp Shinjuku
7月6日、Zepp Shinjukuでザ・リーサルウェポンズのワンマンライブ『E.P.ウソつかない」』を観た。リーサルウェポンズといえば80’ sオマージュに溢れたキャッチーなハードロックとダンスミュージックを武器に、ツイン怒号システムと称するファンとの激しい掛け合いを得意とするユニットだが、コロナ禍ではその特長を100%発揮することが難しかった。しかし今回のZepp Shinjuku 2Daysではいよいよ声出し解禁だ。開演前の影アナを買って出たBAN BAN BANの鮫島一六三が、「伝説となる今日この日をあなたの網膜に焼き付け、あなたの声帯をすり減らし、前後両隣すべての人を愛し、存分にお楽しみください」と煽りまくる、その声にフロアいっぱいの怒号が応える。仕掛けは整った。新宿決戦2日目の幕開けだ。
ザ・リーサルウェポンズ
「ウィーアーザリーサルウェポンズ!」
お馴染みの黄色いオーバーオールにアメフトヘルメットの、先生ことアイキッド。夏なのに赤いダウンジャケットに赤いハチマキ、ティアドロップサングラスがトレードマークのサイボーグジョー。湧き起こる「アニキ」コールに応えて登場した二人は、「80年代アクションスター」「ポンズのテーマ」と爆音で代表曲を連発して波に乗る。アイキッド先生のギターはスタインバーガー、背後にずらりと並べたキーボードの要塞も実に80’ sっぽい。さらにギターをスモークマシンに持ち替えて所かまわず白い煙をぶっ放す。スクリーンには必ず歌詞が出るので“エイドリアーン”も“ファイヤー”もみんな歌える。ザ・リーサルウェポンズのライブはある意味全員参加型のビッグなカラオケパーティーだ。
ザ・リーサルウェポンズ
ザ・リーサルウェポンズ
三三七拍子でぐいぐい盛り上がる「東海道中膝栗毛」、全世界のDJを敵に回しそうな問題作「押すだけDJ」、そしてアイキッドの生活感をそのまま歌い込んだ「半額タイムセール」。ザ・リーサルウェポンズの曲はどれもハードロック/ヘヴィメタルの様式美、80’ sアメリカンポップスにインスパイアされたキャッチーなメロディ、エレクトロミュージックの高揚感、歌詞を歌う時の発語の快感に満ちたキャッチーさで統一されているから、曲が変わっても盛り上がりが途切れない。しかもここZepp Shinjukuはオープンしたばかりの新しいハコ、フロアを取り囲むように配置された鮮明なスクリーンが売り物で、東海道五十三次や半額シールなど様々な映像が映し出されて視覚的にも楽しい。時間の経つのが早い。
「感謝しかないです。Zepp2Daysですよ。あったかいね」
MCでも超ハイテンションのジョーと、普通に世間話をするアイキッドの対比がおかしい。しかも都立家政駅前のマルエツや鷺宮のオーケーストアなど、半額セールやお酒の安売りの穴場も教えてくれるからザ・リーサルウェポンズのMCは有意義だ。そしてミラーボールがきらめくディスコソング「マハラジャナイト」、アイキッド先生のホンダ・スーパーカブへの愛情を歌い込んだ「Super Cub is No.1」、さらに「歌詞が書けない」ことを歌詞にした逆転の発想が楽しい「ミッションインポッシブル」へ。メタルとディスコとポップをゴチャマゼにしたリーサルウェポンズの本領発揮、フロアはずっとお祭り騒ぎ。
ザ・リーサルウェポンズ
ザ・リーサルウェポンズ
「インバウンドっていうんですか。最近うちの町も外国人多いよね」とアイキッド。「そうねー」とジョー。「そうねじゃないよ」とアイキッド。言葉も感性もすっかり日本人化したジョーのボケと、自分で作ったサイボーグという設定を時々忘れて真顔で突っ込むアイキッド。相変わらずいいコンビだ。「熱血ティーチャー」で最大級の怒号にまみれたあと、「シェイキン月曜日」ではなぜか「うまい棒」を客席にばらまき、「夏の日のメガドライブ」は少年の日のノスタルジー満載の歌詞と美メロで、30代以上の観客をうっかり感動させる。演奏を終えたアイキッドの「スーファミやった人はすくすく育ってる。セガハードを選ぶ時点で人生のハードモード。そこがいいんです」と哲学的な言葉を吐く。深い。中学生時代のアイキッド先生の三種の神器は「メガドライブ、コミックボンボン、ヘヴィメタル」だったらしい。深い。
ザ・リーサルウェポンズ

ザ・リーサルウェポンズ

セガだけでなくカプコンへの愛情も表現する「昇竜拳が出ない」では、お立ち台の代わりに置かれたホッピーの黄色いケースの上でアイキッド先生の渾身のギターソロ。コロナ前のライブではよく見かけた「大バルーン転がし」の演出も、久々に見ると楽しいだけじゃなくちょっとグッと来る。ライブが戻って来た。今日イチラウドなエレクトロ・ダンスチューン「サイボーグメカニンジャ」、明るいシンセ+ハードロック「ホッピーでハッピー」、そしてヴァン・ヘイレンへのオマージュをたっぷりと含んだ「さよならロックスター」。これはパロディではない、希望の歌だ。そしてなんといっても「雨あがる」の間奏、“ウィルスと戦う全ての人々へ”と、スクリーンに映し出される真摯なメッセージ。ザ・リーサルウェポンズは生粋のパーティーバンドであり、80’ sノスタルジーでありながら、確かに今を生きるユニットだ。とことん笑えて楽しめるが、音が消えたあとに残る感情はほんのちょっぴり切なくて苦い。ちょっぴりだけ。
ザ・リーサルウェポンズ
アンコール。ザ・リーサルウェポンズの始まりの曲「都立家政のブックマート」では、ファンの間ではお馴染みの有名人、ブックマート都立家政店の店長の顔がなぜか上下逆で大写しに。どんどんビッグになるが二人は原点を忘れない。ここで次なる目的地、11月11日に両国国技館で開催される「ザ・リーサルウェポンズ 地獄の国技館バトルロイヤル」の告知映像が流される。次は相撲とプロレスの聖地・国技館だ。ワンマンライブと言いながら多くのゲストが登場し、「歌いながら演奏しながら人を殴る」(アイキッド)という、非常にクセの強いイベントを一言で説明するのは難しいので詳細はオフィシャルホームページで。
「3年と43日ぶりにあのシステムを復活させます。15人カモン!」(アイキッド)
声出し解禁はコロナ禍をはさんで3年と43日ぶり。フィナーレを飾るのは、ステージに呼び込まれたBAN BAN BANの鮫島の仕切りで、先着順に観客の15人をステージに上げてぶちあがる。曲は「キミはマザーファッカー」。歌詞がヤバすぎてここではとても書けないが、ライブだと意味を超えて異様に盛り上がるキラーチューン。ステージ上の15人は、いやフロアの全員は、サビの合唱も振付のタイミングもばっちり。この3年間、みんなザ・リーサルウェポンズを聴き込んだんだろう。愛と幸せしか感じない素敵な大団円。
ザ・リーサルウェポンズ
「みなさん本当に、ポンザーがいないならこのバンド絶対できないから、本当にありがたいよ。感謝します。ウィーアーザリーサルウェポンズ!」(ジョー)
全18曲を1時間半弱で駆け抜ける、ロックでダンスでコミカルでノスタルジックでカラオケな時間。入口はキャッチーで入りやすいが実は奥が深い、アイキッド先生が真心とユーモアを込めて練り上げた楽曲と、サイボーグジョーの熱血パフォーマンス、そして歌いっぱなしの観客のハイテンションが生み出すスーパーライブ。それがザ・リーサルウェポンズ。11月11日、両国国技館ではきっと新たな伝説が生まれる。見に行ったほうがいい。

取材・文=宮本英夫 撮影=片岡光正、kimi
ザ・リーサルウェポンズ

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