加藤登紀子、嵐の中を生き抜く人々に
想いを馳せて～『singsジブリ』コン
サート出演者インタビュー〈Vol.5〉

2023年7月17日（月・祝）東京国際フォーラム ホールAにて、ジブリの楽曲を極上の歌とピアノで届ける『sings ジブリ』コンサートが開催される。昨年2022年に初開催された本公演はオムニバス形式のコンサートで、ピアニスト角野隼斗、菊池亮太両名のアレンジがふんだんに盛り込まれた”大人の”ジブリコンサートとして、7都市7会場を巡り、10,000人以上を魅了した。

2回目の開催となる今年は、前回に引き続き、『風の谷のナウシカ』ナウシカ役、『ルパン三世 カリオストロの城』クラリスをはじめジブリ作品に数多く参加する声優の島本須美、演奏には角野隼斗、菊池亮太が参加。加えて、『となりのトトロ』主題歌や「君をのせて」（『天空の城ラピュタ』）を歌った歌手の井上あずみが初参加、さらに『紅の豚』ジーナ役を務めたシンガーソングライターの加藤登紀子がスペシャルゲストとして出演する。

SPICEでは、出演者５名に連続インタビューを敢行。ラストを飾るのは、スペシャルゲスト・加藤登紀子。出演への想いとジブリ作品への想いを聞いた。

――昨年初開催された『sings ジブリ』コンサート。今回はスペシャルゲストとしてご参加いただきますが、まずはオファーを受けた時のお気持ちから聞かせてください。

ジブリ作品に出演している一人として、『singsジブリ』コンサートにお声がけいただき、とっても嬉しいです。このような形で、いろんなアーティストが出会えるのは素晴らしいと思います。

――今回、島本須美さん、井上あずみさん、角野隼斗さん（ピアノ）、菊池亮太さん（ピアノ）が参加されます。各共演者の印象や楽しみにされていることを教えてください。

それぞれジブリの歌で聴いたり、さまざまなメディアで紹介された番組などで親しく聴かせていただいていますが、今回、伴奏していただくことになったピアニストの角野隼斗さんは、NHKの番組に出られたのを見ることができ、自由自在にアドリブ演奏をされる姿に目を見張っていたので、今回すごく楽しみにしています。菊池亮太さんは今回ステージでは初めての共演で、それがワクワクです。

――映画『紅の豚』で、マダム・ジーナの声を演じ、主人公ポルコ・ロッソたちのマドンナ役として出演した加藤さん。作品から「時には昔の話を」をタイトルに据えたコンサートも開催されています。加藤さんにとって、ジブリ音楽とは？

『紅の豚』のマダム・ジーナ役で出演できたことで、なんだか私自身が100年前にこんな風に生きていたような気持ちになってしまいます。ジーナの歌っている「さくらんぼの実る頃」は1871年のパリ・コミューンのことを偲んで歌われてきたフランスの歌。
50年経ったこの映画のシーンの中で、「こんな夢の時代もあったのよ」と歌って聞かせています。
歴史はいつも過酷。それでも「戦争でズタズタになった時代にも、人々は素晴らしく生きようとしていた」という宮崎駿さんのことばを、ラストテーマ「時には昔の話を」にこめて歌っています。

――ジブリ作品の思い出を聞かせてください。

どの作品も人間がこの自然の中で、どう生きてきたのか、どんな風に苦しんできたのか、嵐の中を生き抜く人の生き生きとした姿を通して描いています。私の子供たちも宮崎さんのアニメで、それを受け止めて育ってくれたと、何処かで安心しています。ジブリ作品を子守唄に育った娘たちだけではなく、私の夫も大好きでした。『千と千尋の神隠し』ロードショーの翌年に他界しましたので「いつも何度でも」を繰り返し聴いていた姿が思い出されます。

――すでに公開されているプログラムに「さくらんぼの実る頃」「時には昔の話を」がラインナップされており、楽しみにされている方も多いと思います。お客様に向けてメッセージをお願いします。

「さくらんぼの実る頃」は、150年前のフランスの歌。パリコミューンをさくらんぼの実に例えて歌ったこの歌をジーナは、50年後に歌っています。その間に第一次世界大戦があったんですね。遠い時代の愛に燃えた歴史を忘れないように、とね。そして「時には昔の話を」は私の作詞作曲。この歌も同じように、大切な私自身の歴史を謳っています。あなたにとっての二度とない「あの日」を思いながら聴いてください。