「沼は人生を豊かにする」ポッドキャ
スト『NUmile』休止前の特別編ーー番
組MC ジョージ・ウィリアムズにイン
タビュー、ラジオDJとして大切にして
きたこと

毎週ゲストがハマっている沼についてトークする、SPICEオリジナルポッドキャスト番組『NUmile』が、7月6日(木)をもってMCジョージ・ウィリアムズとお届けしてきたレギュラー配信が休止に。そこで休止前の最終回は、番組スタートから1年10ヶ月にわたってさまざまなゲストと沼トークを繰り広げてきた、MCジョージにインタビュー! 35年のキャリアを振り返りながら、DJとして心がけていることや人生を豊かにする「沼」について2週にわたってトーク。特別編ということでジョージの自宅からお届け!  聞き手に、関西のライター・インタビュアーでラジオパーソナリティ(ABCラジオ『真夜中のカルチャーBOY』『ミュータマ』)の鈴木淳史氏を迎えて、じっくりと掘り下げていく。ポッドキャストはSpotifyで無料配信中。SPICEでは、ふたりのトークを文字でも楽しめるように記事にして公開する。番組の感想はハッシュタグ「#ヌマイル」でツイートを! 休止後もアーカイブは残るので、ぜひ気になるエピソードをチェックしてみてほしい。
真剣に、親身になって話を訊く「ジョージイズム」
ジョージ:鈴木さん、今日はよろしくお願いします。ライター・インタビュアーで、ラジオもされてるんですね。どこでパーソナリティをされてるんですか?
ーー関西のABCラジオで、来年で10年になります。
ジョージ:どういう番組なんですか?
ーー普段は雑誌ライター・インタビュアーなので、普段やっているインタビューと同じように台本やフォーマットなしで、フリートークで60分ぐらいのインタビューを録ってほとんどノーカットで流すという番組をやっています。
ジョージ:フリートーク? 台本なし? けっこうレアだね!
ーーそうですね。普段、雑誌やSPICEではインタビューでやっていることなので違和感がないんですけど、ゲストで来られたミュージシャンの方々は面白がってくださりますね。
ジョージ:あはは。だけど本当は台本無しでみんなできるはずなんだよね! だって、友達と飲みに行く時って台本無しで会話するじゃないですか。それがめちゃくちゃ面白かったり楽しかったりする。だから台本いらないんですよ! 
ーーそうですよね!
ライター・インタビュアー 鈴木淳史
ジョージ:ちなみに僕たち、実は初めましてじゃないんだよね。何年前だっけ?
ーー22年前、2001年の夏に野外レイヴイベント『METAMORPHOSE』という静岡の朝霧高原で開催されていたんですけれども……あの時に「ジョージでいいよ」と言ってくれたので、今日もジョージと呼ばせていただきますね。あの日、ジョージが日本テレビの音楽番組の取材で来られていて。僕は観客にインタビューするという企画でインタビューしていただいて、ずっと『Viewsic』(現在の『MUSIC ON! TV』)だったりで観たり聞いていますとお話をさせていただきました。その頃の僕は社会人1年目ぐらいの本格的にライターになりたいなと思っていた時期で、ジョージのフリートークで楽しい、だけど芯を食ったインタビューに影響を受けていたので、収録の後に「これからどうしたらいいか」と相談をさせてもらったんですよね。するとジョージがビールをご馳走してくれて、朝霧高原の丘の上で1時間ぐらい話を聞いてくださったんですよ。
ジョージ:俺も覚えてるんだよね。それから10年後ぐらいに、ライブハウスで「あの時に僕を励ましてくれたのは、ジョージさんでした」と話してくれてね。
ーーそうですね、大阪の梅田シャングリラで、KINGBROTHERSのメンバーがやっていた、N'夙川BOYSのライブがあって。そこにジョージさんが来られていて、お話をさせていただきました。そのあとに、よくインタビューしているSCOOBIE DOがジョージの番組に出たときに、「関西のライター鈴木さんが、2001年にジョージとお世話になったと聞いているよ」という話をしてくれていたりで。
ジョージ:あの日の朝霧高原でお話しした鈴木さんが、こうしてライターをされていることを僕も誇りに思う! もちろん、僕のおかげではないけどね。だけど、励ましができたことが本当によかったなと思ってる。
ーーおこがましいですけど、「ジョージイズム」が僕の大きな部分を形成してくれたひとつのルーツなんです。なので、先ほどの「台本なんてなくていい!」というのも当時の僕が観ていたテレビのジョージのまんまだなと。本当にインタビューがすごかったんですよ! ガレージを模したところで、台本もない感じでフリートークからはじまって、ちょっとしたミニコントもありつつゲストの方をお呼びする……それがすごくて、ただ楽しいだけじゃなくて。いわゆるラジオDJさんのインタビューではないというのがすごく衝撃でした。
ジョージ:台本、あったけどね(笑)。
ーーあはは。
ジョージ:でもこの『NUmile』も一応台本があったけど、話したいことや展開は自分の頭の中で何となくあって、スタッフとも話をして決めているんだけど、脱線したほうが面白いと思ったら脱線したりするよね。ちなみにジョージイズムと言ってくれたけど、この業界にジョージイズムを受け継いでいる人はほとんどいないからね。だから嬉しい!
ーーこれもあの時に朝霧でも聞いたと思うんですけど、台本にとらわれずに脱線しながら楽しく人と話して、芯を食っていく、そのトークの技術というのはどこにルーツがあるんですか?
ジョージ:たぶん、ずっと音楽を真剣に聞いていたからだと思うんだよね。娯楽で聴く音楽もあると思うんだけど、僕にとって音楽は娯楽じゃなくて。十代の頃から、このアーティストは何を伝えようとしているのか、何を打ち出しているのかって知ろうと真剣に音楽を聴いてきたの。だからインタビューする時も同じ姿勢で、この人は何を伝えたいのか、それを理解するために何が必要かと人の話を聞くことが大事だよね。だから、いいインタビュアーの条件はそんなに難しいことではなくて、人の話をしっかり聞けばいいインタビュアーになれると思うんです。僕は音楽も人の話も真面目に、真剣に聞いてるつもり。相手に興味を持って、どうしてこういう発想になったのか、時にはリスナーの聞きたいことも聞いたりするけど、基本的には自分が聞きたいことを聞いている。それから質問に対する相手の答えが遠回りだったりすると、言いたいけど言えない、もしくは言えないことなのかも気になるから、リアクションで全てがわかる。そうじゃない?
ーーそうですね。
ジョージ:お酒の席もそうじゃない? 友達と飲みに行って、話を全く聞かない友達とかもいるじゃん。もうつまんないよね。会派は一方通行じゃないから。だから人の話を聞くことが大事、それは音楽に教えてもらったと思う。
ーーラジオもテレビも、初めて会った朝霧高原でもこの『NUmile』でも、ジョージイズムというのはまさに親身になって話を聞いてくれるところだと思うんですよね。単なるプロモーショントークになっていなくて、例えばバンドが活動休止になった後だったり、レコーディングが大変な時でも本当に一生懸命、話を聞いていて。だから、みんなが心を開いて、いい意味で居酒屋で友達と話している時みたいに、ぽろっとすごい本音を言っちゃうようなこともあって。
ジョージ:すごく嬉しいこと言ってくれるね! 僕が20歳の時だったかな。カナダのプロのDJで、僕が尊敬しているラジオの先生に「いいラジオDJはどんな人かわかる?」と聞かれたことがあって。その時は分からなくて、声がいいとか知識がいっぱいあるからかなと思ったんだけど、違うと。「聞いていて、こいつと飲みに行きたいと思ったら、いいDJなんだよ」と教えてくれたんだよね。それは飲みに行ったら肩を組んでくれたり守ってくれるとかそういうことではなくて、ラジオから「人」を感じられるかどうかが大事なんだって。これは上から目線に聞こえるかもしれないけど、たしかに聞いていて喋りがうまかったり、なんのトゲもなくて聞きやすいDJさんと飲みに行きたいかといえば、僕はそう思わない。相談したら綺麗事を言われたりするのかなと思ったりする。だから、僕は決して流れ作業で話を聞いたりしたくないんだよね。もちろんこうして話していて、番組として話さないといけないこともあるんだけど、それ以上のことをやりたいんだよね。
ーー親身でいうと、特に印象に残っているのが怒髪天の増子さんとジョージさんのお話で。ジョージさんが担当していた番組が最終回という時に、当時はコロナ禍だからゲストの増子さんも電話出演しかできなくて。でも、増子さんはジョージとの想いがあるから、コロナなんかにジョージとの関係性を壊されたくないと、電話で「ジョージ、外を見てくれ。俺いるから」と言うから外を見ると、スタジオの近くにある川のほとりのぎりぎりのところまで来ていて、スタッフと「ジョージありがとな」という横断幕を掲げていたんですよね。あれを見た時に、はたして自分はここまでの関係性をミュージシャンと築けているのかと考えさせられて。もちろんそのつもりでやってはいるんですけど、ジョージさんはこんだけ愛されているんだなと、自分はもっと頑張らないとと思ったんです。本当にすごかったです。
ジョージ:あれはすごかったね! めっちゃ感動したよ。
ーーコロナ渦で、家にいるしかなかった時期なのでボロボロ泣きましたし、なんでこんなにいい番組が終わるんだと僕もファン目線になって。それぐらいミュージシャンにも視聴者にも続くべきだと思わせるような番組をつくってこられたんだなと。なので、今回の『NUmile』の休止前というこのタイミングでインタビューさせていただくことになった時、ジョージさんと増子さんとの最終回を見ているので、光栄でもあるんですけども荷が重いところもあって。だけど選ばれたからには、本当にいい最終回にしないといけないと。
ジョージ:最終回だからまたこうして会えたわけだし、それはそれでよかったんだよ!
ーー番組の冒頭でも「始まりがあれば終わりがある」とおっしゃっていましたけど、35年のキャリアの歴史の中では、番組が終わることもあって。いろいろな思いがあるはずなのにタフに乗り越えて次に向かってこられた、その強さは昔からずっとあったのですか? それともキャリアを重ねるごとに強くなったのか。
ジョージ:最初は不安だったね。19歳、20歳の頃、FM横浜でも半年に1回はクビになるんじゃないかと恐れてた。でも、あるアメリカのラジオ局のお偉いさんと会う機会があって、いつも心配なんだよねという話をしたら「それは不公平だよ」と言われたの。どういうことか聞いたら、「この業界に入った時には、1週間後にクビになってもいいという気持ちで始めたでしょ? 数ヶ月先のことじゃなくて、とりあえず今日マイクロフォンの前に座って話せることに満足してたでしょ? その初期の気持ちを忘れちゃいけない。だから、先のことを恐れるんじゃなくて、今、目の前にあるものを全力でやるべきだよ」と言ってくれて。それで少し柔らかくなったり、やっていくうちに少人数でつくっていたこともあって、インディースピリットでいい番組を作れるんだという自信もついて。何かが終わるということは、何か新しいことが始まるということだと思うから、僕はsの道を歩むことにしてる。あとは、このラジオ局で自分は一番いいDJで、一番いい番組をつくってると思えば、実際にそう思えるようにもなったし、それに共感する人たちも周りにいるからそれが次につながると思う。
レコードのコレクション
ーーちなみに、時代も変わってきてテレビやラジオとは違う、このポッドキャストというメディアは、ジョージの中では今までやってきたことは違いがありますか?
ジョージ:喋りという意味ではラジオと近いね。だけど、ラジオとは違ってハートが感じられるような喋りができないと、ポッドキャストは難しいと思うんですよ。テレビはショーで、ラジオはもう少しこじんまりとしているけどショーっぽいところもある。ポッドキャストはもっとこじんまりとしたものだと思うから、もっとゆるく、時にはもっと激しく制限なく話せるなと思いますね。
ーーこの『NUmile』もそういったエキサイティングな魅力が?
ジョージ:『NUmile』ではインタビュアーで、ゲストにハマっていて沼のことや何が人生を豊かにしているのかを聞いてきたからハチャメチャな感じはないけれど、相手の情熱は番組を通してリスナーのみなさんにも間違いなく伝わっていたと思う。少なくとも現場にいる僕には伝わっていたから! 改めて、沼っていいなと思ったね。僕の沼は、17歳の頃からずっと変わらない、音楽と喋りなんですよね。自分が好きなものがあるということは、自分の人生を豊かにしている。インタビューしていてもみんなの目の輝きが違っていたんだ。自分が好きなものについては、人間なら誰でも話せると思うんです。だって好きだもん、それはすごいエネルギーですよ。好きだと、苦ではないんですよね。
ーー改めて、めちゃくちゃいいテーマですよね。来週は、そんなジョージさんの沼を掘り下げてさせていただきます!
インタビュアー:鈴木淳史
文:SPICE編集部(大西健斗) 撮影:SPICE編集部(川井美波)

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