6月25日@恵比寿 The Garden Hall

6月25日@恵比寿 The Garden Hall

moonriders、岡田徹を悼む
トリビュートライブを開催

moonriders(ムーンライダーズ)が6月25日、東京・恵比寿 The Garden Hallにてライブを開催した。この日は2月14日に亡くなったメンバーの岡田徹を偲び、ロビーには岡田徹の写真やゆかりの楽器などを展示。生前岡田が愛用していたアコーディオンは、開演後ステージに持ち込まれ7曲目の「ぼくは幸せだった」でキーボードの佐藤優介が演奏しファンを沸かせている。また入場時には「Ciao」と題された岡田徹メモリアルブックも配布された。

開演時間が近づくと客席は暗転となり、スクリーンには在りし日の岡田徹が映し出される。やがて会場にはキーボードの音が流れ、メンバーが下手より入場。スクリーンにはYAMAHA製のショルダー・キーボードでインプロビゼーション演奏をする岡田徹の映像が映る。これに合わせてメンバーも各々の楽器で演奏を始める。かつて岡田がいたステージ最下手位置には鈴木慶一が立つ。

岡田とメンバーの時空を超えたインプロビゼーション共演は7分弱にも及び、映像が終わると1曲目「涙は悲しさだけで、出来ているんじゃない」に入る。1991年に発表したアルバム「最後の晩餐」に収められた岡田作曲のナンバーで、この夜のライブはスタートする。続く「いとこ同士」も岡田楽曲。鈴木慶一は歌詞の一言一言を噛み締めるように歌う。ここで鈴木慶一から、オーディエンスに向けて来場への感謝を告げ“今日は声出せるから、次の曲は皆さんも手伝ってください”と「HAPPY/BLUE '95」へ。澤部渡と鈴木慶一が美しいユニゾンを聴かせる。
6月25日@恵比寿 The Garden Hall

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ムーンライダーズは3月15日に全編インプロビゼーションで構成されたアルバム『Happenings Nine Months Time Ago in June 2022』をリリースした。この夜は、各楽曲のイントロやアウトロ、もしくは間奏で即興演奏(インプロビゼーション)を披露。ギターの澤部渡にキーボードの佐藤優介という盤石なサポートを得て、はちみつぱい時代の「月夜のドライヴ(1973)」や、「My Name Is Jack(1978)」「天罰の雨(2001)」で自由奔放なインプロビゼーションを聴かせる。懐かしいナンバーが2023年の現在と完全にシンクロし、新しい曲を聴いているように思わせるのがムーンライダーズの魔力。彼らの老練さここに極まり!といった趣きだ。
“かしぶち哲郎が亡くなって10年になります”と切り出した鈴木慶一は、8月19日にかしぶちの名盤『リラのホテル』40周年を記念したライブの開催を発表。“ここからはかしぶち君の曲やります!”と、「Beep Beep Be オーライ(1977)」を演奏。続く「Frou Frou(1985)」は、ムーンライダーズ・ライブではお馴染みのナンバー。この辺りから静かに聴いていた客席も熱を帯び始め、「駅は今、朝の中」や「駄々こね桜、覚醒」とアップ・チューンナンバーをたたみ込み、盛り上がりも最高潮に。慶一からの“これ、みんな一緒に歌えるよ!”を合図に始まったのは再びの岡田徹曲「ダイナマイトとクールガイ」。照明も灼熱の南国を彷彿させる「真っ赤」に統一。サビの“♩ダイナマイトとクールガイ僕たち〜愛を試す季節じゃない〜”では、メンバーとオーディエンスが一緒に大合唱し、ステージと客席が一体となって岡田徹を明るく偲んだ。
6月25日@恵比寿 The Garden Hall

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“今日最後の曲です。最初で最後のゲストです!”と鈴木慶一が呼び込んだのは岡田紫苑。岡田徹の娘でもあり、ユニットlittlle moaで活動するミュージシャンだ。このサプライズゲストに客席も大いに沸き、温かい拍手で迎える。ムーンライダーズと共に歌ったのはアルバム『月面讃歌(1998)』に収められた原田知世作詞、岡田徹作曲の「幸せの場所」。かつて岡田のソロアルバムにlittlle moaとして参加した紫苑にとっても思い出深い楽曲だ。静謐さの中に、ほのかな熱を感じさせる彼女の歌声に客席も、じっと聴き入る。歌い終えると、深々とお辞儀をしてメンバーと一緒にステージを降りた。
6月25日@恵比寿 The Garden Hall

6月25日@恵比寿 The Garden Hall

アンコール1曲目は「Days of OPUS」。岡田徹と白井良明、武川雅寛は立教大学の音楽サークル「OPUS」出身で、このサークル時代に書かれた曲でライブ初披露となる。このOPUSからはちみつぱいを経てムーンライダーズに発展する。いわば彼らの原点だ。ブギ調の豪快なロックンロールナンバーで再び客席を熱くさせる。

“我々は演奏しますので、皆さんで歌って下さい”とラストは『イスタンブール・マンボ(1977)』収録の岡田曲「さよならは夜明けの夢に」。スクリーンには歌詞が映し出され、オーディエンスはムーンライダーズの演奏に合わせ歌う。客席からはすすり泣く声も。曲が終わると鈴木慶一がメンバー紹介。最後に“岡田徹!”と紹介するとスクリーンには岡田の写真が映し出されメンバーは15秒間の黙祷を捧げる。会場に流れたのは2011年の活動休止宣言の際に配信のみで発表された「Last Serenade」。最後、スクリーンに“Ciao=さよなら”と映し出され2時間10分超に及んだ岡田徹を悼むライブは終了した。

Text by 石角隆行
6月25日@恵比寿 The Garden Hall

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【セットリスト】
※作詞作曲/初出アルバム
01.涙は悲しさだけで、出来ているんじゃない
作詞:鈴木慶一/作曲:岡田徹/最後の晩餐(1991)
02.いとこ同士  
作詞:鈴木博文/作曲:岡田徹/ヌーベル・バーグ(1978)
03.HAPPY / BLUE '95
作詞:鈴木慶一/作曲:白井良明/ムーンライダーズの夜(1995)
04.S.A.D
作詞:鈴木慶一/作曲:武川雅寛・夏秋文尚・佐藤優介/It's the moooonriders(2022)
05.天罰の雨
作詞:鈴木博文/作曲:岡田徹・白井良明/Dire Morons TRIBUNE(2001)
06.無防備都市
作詞:鈴木博文/作曲:鈴木博文 /カメラ=万年筆(1980)
07.ぼくは幸せだった
作詞・作曲:鈴木博文 /月面讃歌(1998)
08.霧の10㎡
作詞・作曲:鈴木博文/青空百景(1982)
09.月夜のドライヴ
作詞:山本浩美・補作詞:鈴木慶一,作曲:山本浩美・補作曲:鈴木博文/センチメンタル通り(はちみつぱい/1973)
10.My Name Is Jack
作詞・訳詞:鈴木慶一/作曲:John Simon/ヌーベル・バーグ(1978)
11.Beep Beep Be オーライ
作詞・作曲:橿渕哲郎/イスタンブール・マンボ(1977)
12.Frou Frou
作詞・作曲:かしぶち哲郎/ANIMAL INDEX(1985)
13.駅は今、朝の中
作詞・作曲:鈴木博文/ANIMAL INDEX(1985)
14.駄々こね桜、覚醒
作詞・作曲:白井良明/It's the moooonriders(2022)
15.ダイナマイトとクールガイ
作詞:鈴木慶一/作曲:岡田徹 /A.O.R.(1992)
16.幸せの場所 with 岡田紫苑(littlle moa)
作詞:原田知世/作曲:岡田徹/月面讃歌(1998)
<アンコール>
17.Days of OPUS
作詞:白井良明、武川雅寛/作曲:岡田徹、白井良明/架空映画音楽集II―erehwonの麓で(2012)
18.さよならは夜明けの夢に
作詞:鈴木博文/作曲:岡田徹 /イスタンブール・マンボ(1977)

<メンバー>
moonriders(鈴木慶一/武川雅寛/鈴木博文/白井良明/夏秋文尚)
澤部渡(Skirt)/佐藤優介
6月25日@恵比寿 The Garden Hall
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OKMusic編集部

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